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Cr2-14


「今から鍛えるのか?」



彼には、戯言に聞こえたかもしれない。



「あなたの鍛え方は、真似できないわ。

 私に出来るところを、

 伸ばすという意味よ。」




向けられる眼差しに応えて、合わせる。




「この、最初で最後になるかもしれない

 旅で······色んなことを学びたい。」



知識だけでは得られない、経験を積んで。



「あなたは、しっかりと

 マグリヤを統治する後継者として、

 見据えているはずだから。」



あなたの支えになれたら。

それが、私にとって最上級だ。




本音は眼差しに籠めて、告げようとした。




「少しでも、支えに······」


「いてくれるだけでいい。」




それを、彼は遮るように被せる。




「飾らない、お前のままで。

 それだけで、俺は進むことができる。」




灯る炎。それには。

私という鎖が、繋がっている。




「変わらないままでは、生きられないわ。」


「分かっている。だからこそ、だ。」




その鎖を、断ち切らず。


変わらないままで、いられるというのか。




「無理難題ね。」


「単純明快だろうが。」




睨むように、見つめ合った後。


二人は、急に頬を緩める。




同じだと思っていた、鏡のような存在は。



あの件以来、対極にあるのだと

思い知っていく。



その度に、胸の奥が苦しくなるが。



それが、不快ではない。




「これ以上巨漢になったら、

 ファーランどころか

 誰も寄り付かなくなるわよ。」


「お前こそ、お転婆が過ぎると

 婚約者に愛想尽かされるぞ。」



再び、睨み合う。


だが、それも。一興として捉えている。



「港町へ行く前に、命を落とさないよう

 気をつけないとね。」


「最短は、例の巣穴を通る道だが。」




そう。あなたを変える

きっかけになった、あの場所だ。




「時間は掛かるけど、避けて通るのが

 最善だと思うわ。」


「近状報告では、個体が増えているらしい。

 今まで、人に害が及ぶ事態は

 立ち入らない限り発生していないが······

 いずれは、被害が及ぶ可能性がある。

 調査も兼ねて通りたい。」




好奇心に煽られるまま、そこへ行き。


領域に踏み込んでしまって、襲われた。


それが、あの頃の私たちだ。




「仕返しとか、考えなくていいからね。

 無謀すぎるから。」


「そこまで過信するに至っていない。」




トウマの長けた剣術を持ってしても。

“あれ”を相手にするのは、命知らずだ。


危険察知能力は、あの時

身を持って植え付けられている。




“カフ・ドランドー”



我々が想像するに近い姿は、“龍”。


ただ、ここでは神獣というよりも

自然に存在する生物である。



鱗に覆われた、強靭な身体。

背中に生えた、大きな翼。

全てを薙ぎ払う、大きな爪。

岩をも噛み砕く、大きな牙。

全てが、規格外。


生半可な武器では、傷付けることは難しい。



慣れ親しんだ絵本で登場する

“カフ・ドランドー”は、幼いシェライアにとって

非常に興味深く映り。


一目見たい、という出来心で

幼いトウマとともに城を抜け出した。



当時、今程精霊の見張りは徹底しておらず。

これが元で強化したと言っても、

過言ではない。



逃げ惑う二人を、捜索していた

マグリヤの騎士たちが保護して

大事に至らずに済んだが。


逃げる際に付いた傷痕と、

思い出せば震えがくるほどの恐怖心が。

今でも、残っている。





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