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Cr2-12



あの件以来、マグリヤ城下町を散策することは

止められていた。


しかし、精霊たちの異常察知もなく。

旅の必需品を揃える必要があった為、

許可を得ることができた。



混乱を避ける為、二人とも布で

身を包んでいるが、気づく者はいた。


だが、騒ぎ立てず。

温かく見守るという形を取るのが、

暗黙の了解というように。

話しかけることはせずに、微笑ましく見守る。


その配慮からしても、二人が

愛されているのが分かる。





久しぶりに味わう賑わいと空気に、

シェライアは心が弾んでいた。



「ねぇ、トウマ。

 ポルフ(根菜類の一種)揚げが

 食べたいわ。行きましょう。」



本来の目的を忘れたように

浮き立っている彼女に、彼は呆れて笑う。



「お前は、いつもそれだな。」


「だって、ずっと食べれなかったのよ。

 あのお店のものが、

 一番美味しいんだもの。」



お城の食卓でも、出ることはあるけど。

あの絶妙なとろけ具合と香ばしさは、

味わえない。


旅立つ前に、堪能しておかないと。



「俺は、トルモル(野鳥)の一本焼きだな。」


「あなたも、そればかりね。」




笑って、羽根を伸ばすように仰ぐ。



昼下がりの青空が。

城で見上げるよりも、綺麗に映る。




「美味しい保存食が、見つかるといいわね。」


「荷物は必要最小限にしたいからな。

 味に限らず、嵩張らない物を選ぶぞ。」


「嵩張らず、美味しい物ね。」


「······前から疑問だったのだが、

 食料は生み出せないのか?」


「生命に繫がるものは、難しいわ。

 不可能ではないと思うけど。」




私も同じ疑問を持って、

お母さまに聞いたことがある。


試すことはできないから、

受け売りでしかないけど。




「できるかもしれない、ということか。

 では、非常事態になったら頼むぞ。」


「······非常事態って、何よ。」


「食料が底をつく事態になったら、

 ということだ。そうならないように、

 念入りに準備をしておくが。」



食べ物が、ない。


それは、避けなければならないわね。



「あなた、大食いだものね。」


「まぁ、水があれば何とかなるのだが······」



旅での不自由さは、勿論あるけど。



「自然のものがあるわ。非常事態になったら、

 それに頼りましょう。」



それが、醍醐味なのでは。




彼女の発言に、彼は綻ぶ。



「······気楽だな。」


「食べられる植物の知識は、あるわ。」


「肉は、狩って得ろということか。」


「それは、あなたが頑張ってね。」


「捌き方を、書籍室で調べておこう。」




食の好みは、互いに違う。



唯一同じなのは、毎朝食卓に出る

焼きたてのパンくらいだろうか。


あれは無条件に、美味しい。





行き交う人々を縫い、二人は

城下町の商店街を散策する。




この時間だけは。


色んなしがらみから解放され、

身も心も軽くなっていた。


互いに燻るものも、忘れて。




ただ、飾らない一時を。


純粋に、楽しみながら。








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