Cr2-7
*
連日に渡る会議の末、
ランドーラ国へ宛てた書簡の内容は
次の通りである。
“貴国の毎年に渡る祝辞において、
『エ・ルミィス』より贈答品を賜っている。
これは、友好な関係を築く為の
歩み寄りである。
使者として、
トウマ・レゥ・ダナントが参る所存である。
貴国の土地と空気を満喫したい為、
二週間という滞在期間を設けたい。
それ以上、それ以下求めることはない。”
“面白いものを御覧に入れましょう”という
真意には、敢えて触れずに。
出方を待つ。
これの返答を待ちながら、
シェライアとトウマは
出向く為の支度を整えていった。
言わずとも旅は初めてなので、
岐路、土地柄も含めて知る必要がある。
情報が手に入りやすい書籍室に、
入り浸る日々が続いた。
二人にとって、この経過は
苦になるものではなく。
寧ろ、楽しめる時間だった。
『エル・ラド』から渡る船は、直接
ランドーラ国領域内の港町・
『タラン』に入る。
ここで検問が実施されている為、
どのように対応するのかで決まるが。
トウマが名を掲げている以上、恐らく
ランドーラ側から使者が来るだろうと
予測していた。
港町『タラン』から城下町へ向かう
最短の岐路は、
『デオルタール』という荒野を抜ける事だが。
本大陸には、『エル・ラド』では
見受けられない生物が存在する。
それは、『ロ・フヴァ(逸れしもの)』と
呼ばれているらしい。
『それら』が生まれた理由は
諸説あるが、有力とするのは。
歪んだ術式を、乱用している為だと
されている。
精霊と同様、
動物の姿形が元になっているらしいが。
記述によれば、似て非なるものだと
されている。
大きな相違点は、“目に見える”という事。
そして、誰彼問わず敵意を示す。
この『ロ・フヴァ』に対して、
狩ることを生業とする者たちが
存在するという。
『有害』とされている為、駆除すれば
国から多額の報酬が貰えるからだ。
荒野『デオルタール』には、
『ロ・フヴァ』が巣食っているらしい。
迂回する岐路を探してみるが、
国土領域を越えてしまう為
ランドーラ側の対応が気になる。
『デオルタール』を突っ切る以外、ない。
「狩人を雇う線が濃厚だろうが······
その必要はない。」
彼の言葉に、彼女は首を傾げる。
「どうして?」
「腕試しをするには、絶好の機会だ。
人相手じゃなく『有害』ならば、
文句はないだろう?」
言わんとする事が分かり、
呆れ気味で息をついた。
「私は、全力で逃げるわよ。」
「ああ。物陰にでも潜んでおけ。」
不敵な笑みを浮かべる様を捉えて、
思わず笑った。
「本来の目的を、忘れないでね。」
「分かっている。」
『ロ・フヴァ』の存在は。
人の業が、生み出したものだ。
それに引導を渡す事も。
宿命ではないかと思える。
『エル・ラド』が、平和を築けたのは。
自然法を重んじた結果だ。
これが、今後の主張に繋がればと。
考えずにはいられない。
欲望のままに奪い合うのは、破滅だと。
神が、私たちに危惧を示しているのだと。




