Cr2-5
なぜ、そんなに。
壊そうとするのよ。
段々腹が立ってきたシェライアは、
平然と茶を飲み干すトウマを睨む。
「そ、そうなのですね······
ご無事を、お祈りいたします。」
小さい身を、更に小さくして。
ファーランは、両手でティーカップを持つと
申し訳なさそうに口を付ける。
「トウマ。少しでもいいから、
ファーランと過ごしなさい。いいわね?」
半ば強制的に告げた、レイラの表情は。
非難の色に染まっていた。
「シェライア様の身を、
護らなくてはなりません。片時も、
離れることは難しいです。」
「それでは、シェライア様も御一緒ならば
良いということなのね?」
そう持ちかけられるとは思わなかった。
「······シェライア様が、宜しければ。」
ちょっと。
私は、あなたの保護者じゃないのよ?
「申し訳ありません、シェライア様。
無骨な倅の為に、
聞き入れてはもらえませんか?」
レイラは、
引くに引けなくなっている様子だ。
ファーランは戸惑うばかりで、
行方を窺っている。
ため息を、漏らさずにはいられない。
「······別に、構いませんが。」
「ありがとうございます。」
どうにか繋げられて、母親としては
安心したのだろう。
感謝を告げる表情は、明るい。
「シェライア様。午後からの会議について、
少し打ち合わせたい事柄があります。
宜しいでしょうか?」
それも、束の間。
用が済んだと言わんばかりに、
トウマは立ち上がる。
レイラとファーランは、目を見開いた。
「今、茶会を始めたばかりでしょう?
すぐに席を立つのは失礼よ。」
流石に抑えきれず、シェライアは嗜める。
「国の重要問題なので。」
一言、放ち。
彼は、省みず去っていく。
“国の重要問題”と、告げられて。
口答えできないのは、言うまでもない。
まだ、お茶飲んでないのだけどっ。
「······す、すみません。失礼します。」
「いえ、大丈夫です······」
「もうっ、あの子ったらっ!
本当に申し訳ないわ、ファーラン。
あのような、失礼な態度を······」
「いえいえっ、お忙しい中でしたのに
······お顔を拝見して、
名乗れただけでも、嬉しいです。
本当に、ありがとうございました。」
申し訳なさそうに、ふわふわと笑う。
ティーカップに注がれた茶を、彼女は
一気に飲み干し、コルアを口に含むと。
立ち上がって会釈し、後を追う。
麗らかな庭園に残された、可憐な花は。
綻んでいるが、少し寂しそうだった。
これには、胸が痛むところがある。
言ってやらねば、気が済まない。
意にそぐわないとしても。
相手は、この日を待ち望んでいたのに。
もう少し、態度を改められなかったのか。
無性に苛々しながら、彼女は。
庭園を抜けた渡り廊下に立つ
彼の元へ、歩いていく。




