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Cr2-1



“自然の恩恵に感謝しつつ

精霊たちに寄り添い、大陸を渡り歩いていた”




この時代から、なぜ

今に至るようになったのか。




“神器を創造する力を手に入れようと、

一族を隔離する国が現れた。

天罰が下ると人々は恐れたが、その行いを

咎める者はおらず。自由を奪い、束縛した。


創造する力を乱用させ、生み出した神器は

国同士の争奪となり。戦争に発展する”




······


束縛される宿命は、前から変わらないのか。

落胆しながらも、読み進めた。




“当時、辺境の島『エル・ラド』に住んでいた

ダナント公爵は、その状況に心を痛め

発起する。大陸から容易に手が届かない

この土地ならば、護ることができると。

虐げられ疲弊していた一族は、この申し出を

心より受け入れた。”




この『エル・ラド』は元々、

ダナント卿の血族が治める土地だったのか。


その事実は、知らなかった。




“一族を象徴として一国を築き、

迫害を遠のけた彼らに、深い敬意を示す”




ここからの記述は、よく知るところだ。



······


私が、『エル・ラド』の外に出たいという

気持ちは。無謀なのだろうか。



でも。


このままでは、また同じ事を

繰り返す道を辿るのでは。その危惧が窺える。



匿われるだけではなく。

私たち自身も、強くならなければ。



創造する力が宿るのは。


欲望を満たすためのものではないと。



この力は、共存する為にあるものだと。


示さなくては。






決意を燃やす中、とある書籍が目に入った。




“混血による事象の記録”




気になり手に取ってみたが、

何も記されておらず、白紙だった。


古ぼけていて、色褪せている。



「この書籍室は、古いからな。

 記されていた文字が、

 消えたのかもしれない。」



いつの間にか、彼が背後に立ち

覗き込んでいた。



確かに、この部屋の造りは

城内の中で一番年季が入っている。


敢えて、書籍の為に残しているのか。

それとも。



彼女には、この書籍に佇む主の姿が

視界に映っていた。



闇のように黒い甲羅を背負う亀。


精霊である事には間違いない。




『青二才には、そう映るのだな。』



馬鹿にしている口調だが、

声の重量感が不思議と帳消しにする。



「ということは、文字は残っているの?」



彼女の問いかけは、彼にとって

急に独り言を呟いたとしか思えない。



『その通り。呼び起こすには、

 著者の意思を解かねばならない。』



謎掛けのような答えだった。



「······私に、解けるかしら?」



亀は、くつくつと喉を鳴らした。



『お主ならば、いつか解けるかもしれぬ。』




喜んでいいのか、悪いのか。


分からないまま立ち上がり、その書籍を

本棚に戻した。




「······精霊がいるのか?」



彼女の呼びかけが、ようやく

それに向けられていることを理解して

彼が問う。



「······ええ。とても素敵な亀が、ね。」




どこか、年功を背負う紳士に見えるのは。


誰かの意思を宿しているのかもしれないと、

思えたからだ。








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