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Cr1-18


彼の大きな手が、頭から離れる。


不意に解放され、その流れで振り返ると。

普段浮かべる微笑みが映った。



「災難だな。」



他人事のように告げられ、可笑しくなった。



「あなたもね。」


「そういえば、

 珍しいブレスレットしているな。」


「······これは······」



トイアールから。

そう紡ごうとした言葉を、飲み込む。



「誕生日のお祝いに、もらったの。」


「そうか。普通は、そうだな。

 今まで俺から、何も贈っていなかったな。」


「同じ誕生日だから、別にいいじゃない。

 今まで、そうだったでしょう?」


「剣をもらった。」


「それは、儀式として、だから。」


「······」



なぜか、徐ろに彼は

腰に装備していた剣を抜く。


何をするのかと思ったら、

ヒュン、と一振りした。



ふわりと、手元に乗ったものを。

すっと、差し出される。



「他に、思いつかなかった。

 とりあえず、受け取れ。」




それは、小さな花弁が丸く集まる一輪。

薄紫色で、可愛らしい。


この地帯で、一年中咲いている

珍しくない植物だ。




「······えっ?」


「来年は、何か用意しておく。」



きょとんとする彼女へ、

押し付けるように手渡す。



「立ち止まるな。進め。」


「え、ええ······」




両手で支え、まじまじと注いだ。



彼が、こんな事をするのは珍しい。


しかも、花を。




思わず、天を仰ぐ。



今は晴れているけど。

大雨が、降るかもしれないわ。



「柄にも、ないことを······」


「言うな。分かっている。」




再び、まじまじと注ぐ。



珍しくない、花だ。


だけど。手渡されたものになると。



少し、意味を考えては。

首を振る。



「ねぇ、これ、思いつきよね?」


「当然だ。」



そうよ。彼が、この花を贈る習わしを。

知るわけがない。



「無闇に、草木を切っちゃ駄目よ。

 命あるものなんだから。」


「まぁ、そう言うと思ったんだが。」


「······でも、ありがとう。」




心に、閉まっておこう。




「大切に、飾るわ。」




“無償の愛を誓う”




意味なく渡されたとしても。


妙な気分だわ。




「すぐに枯れるだろうけどな。」


「······枯れないわ。」




心には、咲き続ける。




「精霊を使って、長持ちさせるのか?」


「······もう。本当に、あなたって

 情緒も何もないわね。」




綻ぶ。ずっと、これからも。




「腹が減った。明ける前に城を出たから、

 まだ何も口にしていない。」


「ええ。私も。お城に着いたら、

 朝食の準備をしてもらいましょう。」




あなたが在るなら。


どんな宿命さえも。綻ぶことができる。
















陽気が漂う空気。


涼やかに吹き抜けていく風。



全てが、彼女たちの門出を祝うように。



そして。


大きな試練に向かう、前触れとして。



穏やかに流れていた。






『エ・ルミィス』と呼ばれる一族の、

在り方は。



彼女たちの行く末で、左右される事になる。

















Create1終わりです。

ここまで読んでくださり、

心より深く感謝いたしますm(_ _)m。・゜・・゜・。∞

マイペースになりますが、次話も

お時間の許す限りよろしくお願いします。

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