Cr1-17
何気なく零した彼女の言葉に、
彼は目を見開く。
「······そこまで、頼られても困るが。」
「ふふっ。」
そう。喜んでばかりも、いられない。
彼の言う通り、実現するにはまだ遠い。
でも、単純に外へ行ける可能性を
噛み締めたかった。
「昨晩、何か動きはあった?」
「いや、城下町はお祭り騒ぎだったという
ことだけだ。動きはない。」
白馬の精霊を従えている。
姿を見せずに、再び襲ってくるかもしれない。
しかし、それがないというのは。
相手が慎重なのか、別の理由があるのか。
「推測の域を超えないが······」
「話して。」
「恐らく、お前が生み出した剣。
これを警戒している。
物理的な剣として存在するのであれば、
再び起こり得るかもしれないが。」
「······なる程。そうね。」
「何かの力を、帯びているとしたら。」
その見解は、当たっているかもしれないわ。
「あと、あなたの存在かしら。」
「さっきから、過大評価しすぎていないか?」
「私ね、“呪縛を解く”剣を願ったの。」
「呪縛を、解く?」
それが、反映されているとしたら。
一筋の光なのでは。
「どういう意味だ?」
「······とにかく、それが有効だとしたら。
精霊に課された呪縛を、その剣で
断ち切れるのかもしれないわ。」
そう。それは、願ってもない力。
そして、彼の腕前がなければ成立しない。
「あの人、言っていたのよ。
“君が創った剣、大したものだ。
お陰で、切られてしまったよ。”って。」
「······」
「物理的な意味ではなく、
精霊への呪縛を指すとしたら。」
単純に、“切られた”という意味が生きる。
「冴えてるな。その線は、
当たっているかもしれない。」
「偶然が重なりすぎているけど。
だとしたら、これは宿命だわ。」
あの人を止める。
それが、私たちの宿命。
「······トウマ。お願い。」
「······何だ。」
「今までも、私の為に
煩わしい思いをしているだろうけど
······あの人を止めるまで、傍にいて。」
この呪縛を解くのは、
難しいかもしれないけど。
せめて。その宿命を遂げるまでは。
「······何を願うのかと思ったら、
そんな事か。」
ため息と一緒に、降ってくる。
「お前と俺は、一蓮托生だ。
どうやっても、離れることはできん。」
それは。諦めなのか、覚悟なのか。
表情を読まなければ分からない。
彼女が窺おうと振り返ろうとしたら、
頭を抑えられてしまう。
「この宿命を、嫌だと思ったことはない。
一度も、だ。それを心に留めておけ。」
なぜ、振り返らせてもらえないのか。
もがいていると、綻びの息が漏れる。
「お前の猪突猛進を、誰が止める?
俺以外、いないだろうが。」
「ちょっと、頭離してよっ」
「弱っちいのに。変に気が強くて。」
「もうっ!」
「お前といると、命が幾つあっても足りんぞ。
それなりの代償を、一生かけて
払ってもらわんとな。」
言葉遣いが悪い。
こういう時の彼は、茶化している証拠だ。
「······分かっているわよ。一生かけて、
償うつもりよ。」
私という存在のせいで、動けないあなたの。
呪縛を、解くまで。




