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Cr1-15


一族の巫女。


その宿命は、優雅ではない。

より先を常に見渡し、皆を導くという

重大で過酷な立場である。


それ故に、発言力は

生死を分ける程に強い。




「······シェライア。何が起ころうとも、私は

 あなたの力になります。

 その目に映すもの、全て。

 だから、振り向かず前に進みなさい。」




なので、滅多な言葉を口にしないが。


こんなに、力強く告げられるのは

初めてである。




「······ありがとうございます。お母さま。」




母親として、巫女として。


尊敬しかない。



いずれ、私も。その立場になる時には、

こうでありたいと。心から思う。




「心配なのは、無鉄砲なところね。

 いつもトウマを困らせて。」


「······なるべく、控えます。」


「そうだわ。気になったのだけど

 そのブレスレットは、どうしたの?」


「あぁ、これは、

 トイアールからもらったの。」


「あら、そうなの。ふふっ。きれいね。」


「御守りよ。」


「御守り、ねぇ。」



意味ありげに言葉を止められ、

彼女は怪訝な顔をする。



「誕生日の贈り物として、もらっただけよ。」


「それだけかしらねぇ。」


「彼は、良き友人だから。」



それ以上追求せずに、母親は

笑うばかりである。



「婚約なんて、考えられない。」


「はっきり言うのね。」


「やるべき事が、たくさんあるの。」


「まぁ、いいでしょう。

 あなたが臍を曲げると、大変だわ。」




結い上げた髪を解き、アーレシアは

鏡台の前に腰を下ろす。



「水入らずで過ごすのは、久しぶりねぇ。」



嬉しそうに櫛を入れる姿を見るのも。


いつぶりだろうか。



「朝を迎えるまで、一旦忘れましょう。

 ······とても、貴重な時間よ。」




その一声で、急に脱力する。




確かに、そうね。


お城に戻れば、息つく暇もなくなる。




「お母さま。櫛を。」


「まぁ。ありがとう。」




彼女は櫛を受け取り、背後に立つと。

ゆっくり、丁寧に入れていく。




長くて、きめ細かい。


この手触りが、とても大好きで。


幼い頃、メイドたちを押しのけて

よく梳かせてもらっていた。




「ふふっ。懐かしいわねぇ。」




母も、思い出したのだろうか。




「本当に、子の成長は早いわ。」




綻んだ顔と、優しい口調。



それは、いつもと変わらない。


しかし。なぜか、格別に思える。




「あまり、成長してないと思う。」


「そうねぇ。メイドたちを困らせているのは、

 変わらないものねぇ。」


「それは、だって······」


「彼女たちには信念があるのよ。

 それに応じることも、大切な時があるわ。」


「······はい。気をつけます。」


「外の景色を窺うのなら。

 順応していくことが必須。

 これから、あなたに必要なものよ。

 色々な人間に出会う事になるわ。

 拒絶することは簡単だけど、

 本質を見極める機会を失う。

 常に、広い心を持つこと。いいわね?」




その助言を、素直に染み込ませる。



かけがえのない人が。


私と並んで、見渡してくれている。


それが有難くて、心強い。




「心得ました。お母さま。」








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