Cr1-11
集落の憩いの場として、
腰を掛けるに丁度いい石が
円陣を作るように置かれている。
昼間は、母親たちの語り場と
子どもたちの格好の遊び場になっているが。
今は、しんと静まり返っている。
その石の一つずつに、
シェライアとトイアールは並んで座った。
「······何があったのか、
聞かせてもらえるかな。」
余程のことがない限り、自分たちは
ここへ訪れたりはしない。
それを重々承知している彼は、
神妙な面持ちで尋ねる。
“授与の儀”で起こった事から、話すべきね。
彼女は、なるべく簡潔に順を追って
語り出した。
耳を傾ける彼の表情は、聞き入れる度に
曇っていく。
一族にとって、隣人の精霊が自由を奪われ
縛り付けられることは。
心臓が抉られるほどに、辛い事だ。
それが、日常茶飯時続くとしたら。
前代未聞である。
語り終えた彼女は、一息つくと
俯いて黙り込む彼を見据えた。
紡ぐ言葉を待っていると、徐ろに顔を上げ
双眸が向けられる。
その眼差しは。
今まで目にしたことがない色を帯びている。
「······とにかく、無事でよかった。
君が攫われてしまったら······僕は、
ここから飛び出していたよ。」
その色に。染められそうな感覚があって
思わず、目を逸らす。
「······トウマには、とても感謝しているわ。」
この名前を紡ぐと、
帯びていた色が変化する。
表情も。今までにない影を帯びる。
「彼が、羨ましいよ。
ずっと、君の側にいられて。」
浮かべる感情の意味を、
彼女は知る由もない。
「護られてばかりで、申し訳ないくらいよ。」
「会ってみたいな。彼に。」
この樹海から、一度も出たことがない彼は。
外界に触れる事を、
夢見ているのかもしれない。
それは、私よりも。
過酷なのかもしれないわ。
逸らしていた視線を彼に戻し、
シェライアは紡ぐ。
「私ね、一族の在り方を変えたいの。
もっと、自由に。平穏に。
『エ・ルミィス』を意識せず、
外を出歩けるように。
護られなければ生きられないなんて······
そんな世界を、変えたい。」
その為には、一歩踏み出す必要がある。
「歪んだ力で制するなんて、させないわ。
だから、見守っていて。トイアール。
みんなが、限りなく
自然法の恩恵に触れられる時を。」
いつ実現するか、見通しはつかない。
でも。真っ直ぐに見据えて。進みたい。
「······シェライア······」
紡ぐ名に潜める、想いは。
届く気配がない。
彼女の瞳に宿る光を、眩しそうに逸らし。
トイアールは、右腕を水平に上げる。
印を結ぶ右手から、纏うように
光の粒が生まれた。
彼が、何を生み出したのか。
シェライアは、光り輝く中から
それを見届ける。
「僕に、できることは······
これくらいしかないけど······」
そっと、彼の両手が。
彼女の左手首を取る。
付けられたのは、金色のブレスレット。
小さな光の粒が、繫がっているように。
控えめに輝いている。
「御守りだよ。君を、護ってくれる。」




