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Cr1-8


「一同に告げる。あの男の深い追跡は、

 命取りに成りかねん。

 不穏な動きがあれば、直ちに報告せよ。

 見極めつつ、警戒にあたれ。」


「仰せのままに。」



頭を下げて立ち去る臣下たちを、

4人は静かに見送る。



しばらく沈黙が続いた後、

モルドワイルが口を開いた。



「ダナント卿。近年大陸では、

 自然法を強制的に捻じ曲げ、精霊を従える

 術式を編み出したという噂が

 広がっていたらしい。

 真実か疑わしい内容だったので、

 気に留めていなかったのだが······

 精霊たちが感知出来なかった事も、

 その者が突然現れた事も、恐らく

 何らか関与しているのでは、と。」


「······そんな、事が······」



あってはならない、と。

クラマは、表情を曇らせる。



「私たちは今夜、樹海へ身を置く。

 聖域ならば、如何なる術式も

 寄せ付けぬはず。身を案ずることはない。

 ······この事を、一族に伝えなければ。」


「······承知しました。」


「念の為、私を側に置かせてください。」



胸に手を当て、頭を垂れるトウマ。

そんな彼に、優しい眼差しが向けられる。



「気持ちだけ受け取ろう。トウマ。

 申し訳ないが、

 一族だけで話がしたい。」


「では、せめて。

 樹海までお送りいたします。」


「······うむ。」




シェライアは、只々見守るだけで。

何も、言葉を紡げなかった。



臆さず意見し、毅然と立ち向かう彼に対して。


私は、何も。できない。






















夜が更けているにも関わらず、城下町は

わいわいと賑わっている。



揺れる灯りと、歌い演奏する音色。


それを、微かに聞き入れながら。



布を深く被り身を包んだ一行は、

先導するモルドワイルの片手に在る

ランプの光を頼りに、夜道を歩いていく。



それに寄り添うように、アーレシアは

すぐ後ろに付いて。


両親の背中を見据えながら、

シェライアは歩を進める。



三人の背後を護るように。

トウマは、周囲に目を凝らしていた。





こんな誕生日は、初めてだわ。


数多の星々を、外で見上げるなんて。



本来なら、今頃。


書籍室で、読み漁っていただろう。




心地好い風が撫でる度に、胸が痛くなる。




ぽん、と。軽い感触が、頭上に置かれた。


何だろう、と行方を窺うと、一瞬

彼の大きな手が映る。



ぼんやり照らされる彼の顔は、綻んでいる。



それに応えることができず、彼女は

逸らして前を向いた。




“元気出せ”



そう、励しているのか。



あなたに、護られっぱなしで。


ただ私は、籠の中にいる。




これでいいわけがない。



踏み出すならば。しっかりと。


自らの足で立たなくては。




シェライアは、噛み締める。




あの人、今度って言ったわ。


今度会う時は。あの子を、解放してもらう。



精霊を縛り付けるなんて、許さない。




戦争なんて、させない。



私たちを、支配することも。



絶対に。あってはならないわ。













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