Cr1-7
「これは、我々だけの
極秘事項にしていたのだが······」
「シェライア様の誕生日を
是非祝いたいという申し出の書状が、
毎年様々な他国から届いていた。」
二人は、顔を見合わせる。
「その度断りの返書を送っていたのだが······
中でもランドーラという国は、
欠かさず申し出が続いていた。」
「なので今回も、何も気には留めず
断りの返書を送った。」
初めて知ったという驚きよりも。
誕生日を祝いたいという申し出が
届いていて。
それを、親たちが極秘で
頑なに交流を避けていたという、徹底ぶりに。
得られていた平穏は、閉鎖によって
作られたものだったと。
自覚せざるを得ない。
「だが、更に書状が届いて。
“せめて、面白いものを御覧入れましょう”
という内容だった。」
「不可解だった故に、
返書を送らなかったのだが······」
“面白いものを御覧入れましょう。”
それは確かに、不可解である。
「あの男の所業が、その内容と
一致するものだとしたら。
会議が長引いたのも、
確証を得る為の情報を集めていたからだ。」
「······父上。」
厳しい表情で、トウマは口を開く。
「これは、宣戦布告だと捉えます。」
静かに告げられた言葉に。
シェライアは、凍りつく。
「シェライアの話が事実なら、これは
由々しき事態だ。」
「我々も、そう捉える。」
「あの男と繫がるかどうかの確証は、
得られていないにしても。
得る為に、動く必要があります。」
宣戦布告という言葉だけで、
身動きもできない。
同じ時間、同じ空間。
共に過ごしてきたというのに。
彼は、どうして。こんなにも、強いのか。
「こちらに招き入れるのではなく。
私たちから、出向くのです。」
「出向く、とは。」
「シェライア様と私が、
ランドーラ国へ行きます。」
その意見に、ざわついた。
モルドワイルとクラマは。
真摯に告げた彼を、凝視する。
シェライアも、その表明に。
息を呑んだ。
「攫うなど、できないと。
逃げも隠れもしないと、強い意思表示を。
あの男の所業は、脅威ではないと。
示さなければなりません。」
「し、しかし······」
「危険すぎる。現に、あの男を
逃がしておるのだ。」
「シェライア様のお顔は、
ランドーラ国の面々は知りません。
あの男と繋がりがあれば、
何らかの反応が得られるはず。」
「こんな事は、初めてだ。
『エル・ラド』から出るなんて事は······」
「モルドワイル様。
あの男が示した力は、不可解です。
詳細を調べる事は、今後の
『エ・ルミィス』の安寧にも繋がります。」
ざわつく一同に向けて、クラマは
片腕を上げる。
すると、しんと静まり返った。
「······吟味する必要がある。」
「あまり時間は、残されていません。
早い決断を。」
「全く、突拍子もないことを
意見するとは。」
そう紡ぎながらも。
険しかった眉間が、
少し和らいだように見えた。
「明日、会議を再開する。
モルドワイル様。宜しいでしょうか?」
「······心得た。」




