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P−1



一番遠くに見えるのは、水平線。

その境目から、白々と変わっていく明け色。


寄り添うように輝く星たちは、

その色が広がるとともに溶けていく。



その様子を、城の高い場所にある

額縁のような窓から、ぼんやり眺める

一人の美しい少女がいた。


背中まで真っ直ぐ伸び、

手入れが行き届いた見事な金髪。


景色を映す青緑色の瞳は、朱が差して

黒曜石のように輝く。


穢れを知らない鎖骨は、

滑らかな白い肌を強調するように

窪みを帯びていた。

その効果は、シンプルな寝間着を

無垢なドレスのように演出している。



夜明けとともに目覚めるのは、

今日に限りではないが。


彼女にとって、特別な日である事は

確かである。



この世界に生まれて、16年を迎える日。


誰もが彼女の誕生を、盛大に祝福した。

肉眼に触れることのない、精霊たちまで。


今映る、朝焼けの空模様と同じく。

全てのものが、迎え入れるように

優しく温かく包み込んだ。



歳月を重ねても、それは衰えず。


祝福を受けて美しく成長する彼女に、皆

笑顔を浮かべ、拝む者まで存在する。


『エ・ルミィス』の血を引くというだけで、

向けられる視線と境遇は。

稀有なものだと、認識された。



とある時まで、彼女は

それに気を留めず過ごしてきた。

その扱いが異常だと、感じ取れない程に。



初めて違和感を覚えたのは、約二年前。

成人するまで立ち入り禁止兼

門外不出の書庫に興味本位で忍び込み、

とある本を読んでからだった。


『エ・ルミィス』の歴史が記されたもの。


すぐに侵入したことがバレて、両親に

かなり怒られて。

全部に目を通す事は出来なかったが、

気になる記述があった。



『エ・ルミィス』は、この『エル・ラド』で

定住していたわけではなく。

世界中を旅していた一族であること。


皆と分け隔てなく、過ごしていたこと。



そんな過去があったなんて、と。

なぜ今の形になったのか、と。

疑問が増えていくにつれて、

この環境、境遇が窮屈なものに思えた。



目覚めとともに、いつもこの窓から

水平線を眺める度に。


島の外に行きたい。


願望が、膨れ上がった。



他の大陸を歩きたい。旅してみたい。


一度でいい。贅沢は言わない。


かつて、世界中を旅していた頃のように。

自由に歩き回りたい。




しかし。


膨れ上がると同時に、ため息が漏れた。




水平線を隔てる樹海。

それに護られる、マグリヤ国。


自身に流れる、

『エ・ルミィス』の血が。力が。


標的になっていて、

手に入れようとする者たちがいる。

それから守る為に、

今の環境と境遇があるのだと。

記述を目にして、知ってしまったから。


この状況がある限り、叶わない。



なぜ、こんな。へんてこな力を。

私たちの一族に、神は与えたのか。


同じ願望を燻ぶらせる

自分のような先人は、少なからずいたはずだ。

父様も、母様も。樹海に住む同族たちも。

一度は、思ったはず。

いや、私みたいな気持ちを

抱いているかも。


もし、そうじゃなかったら。


麻痺している。そうとしか考えられない。





成人を迎える、今日。


やっと、堂々と書庫に入れる。


あの本を、もう一度手にして。読破したい。




できるならば、一族の在り方を。


匿われるような生き方を、

変える事ができるなら。



変えたい。









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