Create 1 亀裂
城下町では、
シェライアとトウマの誕生日を祝う祭が
最高潮を迎えていた頃。
城内は、異様な静けさが漂っていた。
モルドワイルとダナント卿たちが、
緊急会議を開くことになり。
アーレシアとレイラの奥方たち、
そしてシェライアは、
部屋で待機という命が下された。
トウマは、再び
不測の事態が起きてはという警戒から
彼女と同じ空間にいる。
部屋に入ってから、二人は
一言も紡いでいない。
彼女は、特製チェアに腰を下ろし。
彼も、定位置にいる。
表情には、何も浮かべていない。
それを彼女は、時折視界に入れながら。
話しかけようとして、何度も躊躇う。
“授与の儀”で起こったのは。
一体、何だったのか。
皆が驚愕する状況で、彼だけが
冷静に対処できたのは。
尋ねれば、答えてくれるだろうか。
聞けずにいるのは。
呪縛を解く剣を願い、生み出したから。
罰が下されたのか。
神が怒ったから、とか。
根も葉もないことを
悶々と、考えてしまう。
その剣は、今。
父が授けたものと替わり、
彼の腰元に装備されている。
「······良い剣をもらった。ありがとう。」
視線を向けていた事に気づいたのか、
低い声が響く。
彼女は、首を小さく横に振った。
「······良く、ないわ。」
生み出した、早々に。
人を傷つけてしまうなんて。
「······儀式では丸腰だったからな。
振り遅れていたら、お前は攫われていた。」
確かに、父の剣を外していたけれど。
あなたが咄嗟に、躊躇いなく
剣を振るうとは思わなかった。
それに心を痛めながら、紡ぐ。
「······
急に現れたあの人って、
何者なのかしら。」
私を攫おうとしたのは。
『エ・ルミィス』だから、なのだろうけど。
「他国の者には間違いない。」
「······どうやって······」
他国の者が、このマグリヤに入る為には。
波止場へ入る為の厳しい検問と、
身柄を明らかにする必要がある。
そして、私たち『エ・ルミィス』には。
精霊という、目に見えない隣人がいて。
彼らが察知して、教えてくれる。
怪しい者がいれば、弾かれるはず。
「それが分かれば、苦労はないな。」
最もな意見を告げる彼に、彼女は
踏ん切りをつけて問う。
「トウマ。あなた、驚きもしなかったわ。
どうして、冷静でいられたの?」
涼し気な目が、彼女の視線を捉える。
その眼差しは、強く。
直接、心臓を掴むような感覚に囚われた。
「常に、万が一に備えているからだ。」
純粋に。
真っ直ぐな答えだった。
「······それ、だけ?」
「ああ。」
他に答えようがない。そんな風に。
彼は、言ってのけた。
「今回で自覚しただろう?」
『エ・ルミィス』であること。
ただ、それだけで。
狙われるということを。
「象徴として置くには、
危険が隣り合わせだ。手に届くからな。」
その為に。あなたは。
日々、鍛錬して。
私を護っていたというのか。
「······本当に······」
すごいわ。トウマ。
「ありがとう······」
私は、気ままに出歩いて。
ただ、島の外へ行く事を願って。
自分のことばかり、考えていたのに。




