第2話 復讐の準備は入念にwww 媚びて、揉んで、バラす準備完了したったwww
ダンジョンから生還した俺、五味楠人を待っていたのは、相変わらずの罵倒と嘲笑だった。
幸いにも骨折は免れたが、包帯を巻いた左腕が怪我の影響を物語る。
けど今の俺は以前の俺じゃない。
脳内に響いたあの禍々しい声と、手に入れた最強のチートスキル【アイテム解体】。
とはいえ、こいつを最大限に活かすためには仕込みを始める必要があった。
「おい、ゴミクズ! 生きてたのかよ。配信のネタにもならねーし、マジでしぶてえなw」
数日後、S駅近くの溜まり場で俺を見つけた山本阿久魔が鼻で笑いながら言ってきた。
横には相変わらず露出度の高い服を着た井上茶子と、槍を手にした崎山次郎がヘラヘラ立っている。
「……サタン! いや、さん付けで呼ばせてください! あの時は本当にありがとうございました! おかげで俺、死ぬ気で逃げ切れて、ちょっとだけ運良く素材を拾えたんです!」
俺は自分でも驚くほど卑屈な笑みを浮かべ、サタンの足元に擦り寄った。
こいつらは単純なバカだ。
グレた瞬間から世間には腫れ物扱いで、そのわりにプライドだけはエベレストより高いから、持ち上げてやりゃあ簡単に隙を見せる。
「は、感謝? お前、見捨てられたのに頭湧いてんのか?」
「いえいえ! あの厳しさのおかげで覚醒……いや、目が覚めたんです! これからも皆さんの足手まといでいいんで、雑用として置いてください! なんでもしますから!」
俺が深々と頭を下げると、サタンは満足げに鼻を鳴らした。
「……ま、そこまで言うなら許してやるわw 茶子も、こいつがいた方が荷物持ちがいなくて楽だろ?」
「えー? ま、新作のいちごミルク奢ってくれるならいいよ。ゴミクズくん、パシリ頑張ってねw」
「あざっす! 茶子さんマジ天使ですね!」
俺は心の中で
「この雌豚が」
と毒づきながら、さらに深く頭を下げた。
口角が吊り上がるのを必死に隠したいがために。
それからの数日間、俺は完璧な奴隷を演じた。
3人がルームシェアしている拠点でサタンの肩を揉み、次郎の靴を磨き、茶子のわがままに付き合ってやった。
そして従順に振る舞って再度、豚異人の森林に訪れた際、1番の目的である装備のメンテナンスを申し出た。
「サタンさん、魔物と戦って少し刃がこぼれてませんか? ちょっとだけ研いでおきますよ。自分の武器の手入れに慣れて表面だけ整える技術を覚えたんです」
「あ? おう、やっとけ。壊したら殺すからな」
サタンから受け取ったのは、迷宮ならばどこでもドロップするという、ランクE相当の大剣。
俺は手慣れた手つきでメンテナンスを装い、スキル【アイテム解体】を極小出力で発動させた。
(……よし、抽出完了w)
普通の鑑定士が見ても気づかない。
俺はサタンの剣の『耐久性』を抜き取って軽く触れると、そこいらの棒切れのようにしなった。
質量や見た目は変わらないがいざ実戦で魔物を斬れば、確実にポッキリと壊れる仕様だ。
ついでに茶子の防具や次郎の槍の汚れを落とす名目で預かると、キャンプ内で戦利品として傍らに置かれたレアドロップである深紅の刀身が目を惹く剣、呪の槌の性質を利用してやると決めた。
デメリットは全て押しつけ、メリットを俺だけが享受する。
敵には攻撃1つ通らず、かすり傷一つで悶絶することになるだろう。
マジで楽しみw
[配信画面]
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[チャット]
匿名:え、なんか怪しくね?
?がらくた:こいつマジで奴隷根性染み付いてて草
鈴木 大基:いや、ニヤニヤが隠せてないんだがwww
匿名:これ、仕込んでるだろ。絶対ヤバいことしてる
「おいゴミクズ、何ニヤついてんだよ。気持ち悪いな」
次郎が俺を蹴り飛ばそうとする。
俺はわざとらしく転がって、床を舐める勢いで謝った。
「す、すみません! サタンさんの装備がカッコよすぎて、つい……!」
「ギャハハ! マジでこいつ、救えねえゴミだな!」
自分に都合のいい奴隷が働く姿に高笑いする3人のクズ。
俺は床に這いつくばったまま、暗い悦びに浸っていた。
この瞬間だけは屈辱を堪え忍んでやる。
だがキャンプから出た先で生きていけると思うなよ。
俺を嘲笑ったようにおまえらの絶望に染まる顔を全世界に晒して、確実に地獄に堕とす。
絶対に、絶対に許さねぇぞ……!




