第1話 俺を蔑んだ連中を壊す力を天が与えてくれたったwww
度重なる再開発でぐちゃぐちゃになったT都S駅。
その複雑な構造のせいでダンジョンと冗談めかして呼ばれてたが、いつからかそれは嘘から出た実になった。
旧ヤンバルビルの跡地にある、S駅の目が迷宮の出入口。
そこには今日も、一攫千金を夢見るバカが樹液に群がるムシケラのように集まっていた。
木々が生い茂る豚異人の森林と呼ばれるエリアで俺、五味楠人は半月の間同行していた連中からゴミ扱いされていた。
「おい、ゴミクズ。おまえ、いつまでそこに突っ立ってんだ?」
声をかけてきたのは革鎧に身を包む、剣を携えたチャラついた金髪の探索者の山本阿久魔。
同じ配信ランクEの底辺のくせに、俺よりマシな装備を持ってるだけでイキり散らす、DQNネームのカスだ。
「なんだと……おまえらだってランクEの癖に偉そうに」
「あ? ゴミクズは黙ってろよ。まともに戦えねー奴は、お似合いのゴミ掃除でもしてろってんだわ」
パーティーから追放、よくある話だ。
どうやら現世ではマナ濃度不足で使えない異能、俗にいうスキルを異界に訪れた人間は生来何かしら覚えているらしい。
俺が所持していたスキルは【アイテム解体】。
魔物の死体をバラして素材にするだけの、地味でまともに金にならないゴミスキル。
戦闘力はゼロで文字通り俺はこいつらにとって、お荷物のゴミだった。
「じゃあな。死んでも配信のネタにはしてやるよw」
山本に同調するように
「えー、サタン可哀想じゃ~ん。でも事実だし、仕方ないかw」
「まぁ、もういらねぇからさっさと死ねや」
スリットの入った胸元の空いた黒のドレスを着て、毛先をピンクに染めた魔女帽子を被るのは頭の軽い女・井上茶子が俺を小馬鹿にした。
そして金属製の鎧を装備して、ナイト気取りの茶髪の崎山次郎がニヤリと笑うと、並びの悪い歯を覗かせた。
嗤いながら奥へ消えていき、上空ではダンジョンGo TVの運営から借りた、中国で量産された安いが耐久性は確かなドローンが俺の醜態を垂れ流す。
その時、背後の茂みが揺れた。
現れたのは1匹のゴブリン。
あいつらがいれば軽々と蹴散らせた雑魚に、俺は震える手で安物の剣を構える。
配信用ディスプレイが内臓されたコンタクトレンズを通して見る世界の左端には、数人のリスナーが書き込む嘲笑のコメントが流れていた。
[配信画面]
現在の同時視聴者数:6人
[チャット]
匿名:まだ生きてんのwwwしぶとっ
ID090:乙。早く食われろw
ゴミ掃除係:配信切っていいぞー。画質汚ねえしw
「クソが……どいつもこいつも……!」
「ギギッ!」
「う、うわああああああ!」
左腕を噛まれると血が噴き出し、勢いよく飛び散って、視界が真っ赤に染まる。
死ぬ? 俺が? こんなゴミみたいな場所で?
嫌だ、憎い。
小学校、中学校で無邪気にゴミクズと呼んだヤツらを。
俺をバカにした金髪とその腰巾着を。
借金まみれの俺を愚弄した身内も。
そして画面の向こうで笑ってる連中も―――全員壊してやりたい!!!
苛立ち混じりにどこにゴブリンがいるかもわからぬまま、力任せに腰のナイフを振るう。
見えないが、ここにいるのか?
おら、さっさとくたばれ!
前腕のあたりを鋭利なそれで突き刺すと、魔物が汚い呻き声を上げた。
目を拭くと同時に
「破壊は創造の根源……」
脳内に聞いたこともない禍々しい声が響き、背筋に冷たいものが走る。
迷宮庁の正式な探索者に配られた前腕に装着する薄型のガントレットの液晶には、ステータスにヘルプが追加されていて……それに軽く目を通したとき、俺は高笑いしていた。
【アイテム解体】、その真価に気がついたゴミクズと呼ばれた俺のやりたい放題な復讐劇が幕を開ける。
五味楠人/三田ツズル
黒髪の中肉中背で特に取り柄もなく、かといって善良でもなく、自分以外のすべてを見下すクズ男。
大金を得て、女に囲まれ、さらには際限ない承認欲求を満たすべくVtouberを目指すが上手くいかず、周囲からは借金をしまくって悪びれもしないせいで当然邪険に扱われている。
同行メンバーにも戦闘に向かないスキル【アイテム解体】と何よりも生来のクズさが原因で追放され、スキルの真価を見出だしてからは彼らを逆恨みして復讐心を燃やす。
ダンジョン配信する際は三田ツズルと名乗って格好つけていて、キャラになりきれずにすぐに素を出してしまうが、そこも愛嬌として大目に見られている。
初見リスナーはズル、ズルさんと呼び、古参やアンチにはクズル、ズル野郎を蔑まれる。
熱狂的な信者は楠人のクズ行為をズル様の簒奪だ! という文言でチャット欄を埋め尽くし、称賛と共にスパチャを送るなど、人によって極端に評価が分かれる嫌われ者。




