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第6話:異世界人を驚愕させるケチャップ卵チャーハン

「あ、どうかお気になさらず。少々デリケートな案件でございますので、もしよろしければ、私どもの方で内密に処理させていただければ幸いです。店としても非常に助かりますので」


ローランは俺の目にある警戒の色を察したのだろう。

右手を胸に当てて、深く一礼した。

ジャケットから手は抜かないままでいたが、俺の表情はいくぶん和らいだ。

さすがは大商会の職員だ。

客の心情のケアが実に上手い。


「いえ、こちらこそ唐突で失礼しました! ピエニン商会とは円滑に取引をさせていただきたいと思っております。ローランさん、どうか気を悪くなさらないでください」


俺も慌てて立ち上がり、軽く頭を下げた。

だが、依然として視線は相手の影を捉えている。影の動きに少しでも不審な点があれば、すぐに手持ちの「爆破缶詰」をすべて投げつけるつもりだ。


「とんでもございません!」


ローランはもう一度低頭して敬意を示すと、手を差し伸べて俺を着席へと促した。

二人が再びソファに腰を下ろすと、本題へと戻った。


「それで……差し支えなければ、この蛇肉の入手経路についてお聞かせいただけますでしょうか?」


ローランが恐る恐る尋ねてくる。

その慎重な態度に、俺は逆に緊張を覚えた。


「先に伺いたいのですが、あいつらは……その、聖獣とか、神聖にして侵すべからざる存在というわけではないですよね?」


ローランは俺の口ぶりに宿る懸念に気づき、ようやく表情を緩めて笑った。

「あの二匹の魔蛇は、『伐木鎮(きこりの町)』の南東にある、日月湖にちげつこと呼ばれる巨大な湖に生息しております」


「湖の左側は三日月の形をしており、そこには黄金魔蛇が棲んでいます。地元では『黄月の蛇』と呼ばれております」

「そして湖の右側には砂浜が広がり、まるで日輪のようです。そこが赤色魔蛇の生息地で、地元では『赤日の蛇』と呼ばれています」

「巨木の森から現れる強力な魔獣たちも、あの湖に水を飲みに来たところを、あの二匹によく捕食されていました。ですから、私どものような地元の人間からすれば、確かに非常に畏怖され、敬われてきた存在ではあります」


「……」


終わった。

これは通報されて、そのまま裁判所に引っ張られる流れじゃないか?!


俺の額にじんわりと冷や汗が滲むのを見て、ローランは慌てて言葉を補足した。

「ですが、ここ数年は魔獣たちの間にもある種の黙契もくけいが生まれたのか、彼らは湖へは行かず、川辺で水を飲むようになりました」

「そのため、飢えた魔蛇たちは近隣で飼育されている牛や羊を襲うようになり、酒場では牧民たちの不満の声が絶えません。お客様……」


「ゲンタクと呼んでくれ」


「分かりました、ゲンタク様。過度にご心配なさる必要はありません。少なくともこの町において、あの二匹の蛇に敵意を抱いている者は少なくないのです。それどころか、冒険者ギルドに懸賞金を掲示し、討伐隊を組んで狩り尽くそうという提案さえ出されていたほどですから」


ローランの言葉を聞いて、張り詰めていた俺の心はようやくほぐれた。

ふう、と息を吐き出し、俺は続けて尋ねた。

「その懸賞金は、いくらだったんだ?」


「一匹につき金貨100枚。合わせて『グテス金貨』200枚でございます」


「に、二百枚?!」


俺は衝撃のあまり顎が外れそうになった。

街に入る前に少し小耳に挟んだが、この世界では金貨1枚が銅貨1000枚に相当する。そして、あのじいさんと取引した塩一袋がわずか銅貨20枚。

ということは……俺は黄金林檎を失っただけでなく、銅貨200,000枚相当のチャンスまでフイにしたっていうのか?!


深呼吸をして動揺を抑え、何でもないような風を装って尋ねた。

「その討伐隊とやらは……みんな失敗したのか?」


よく考えれば当然だ。もし冒険者たちが成功していれば、俺があの二匹の蛇に遭遇するはずもない。


ローランは気まずそうに言った。

「勝てるかどうかという以前に、そもそも見つけることができないのです」


「何だって?」


「あの魔蛇たちは一度食事をすると、湖の深くに潜って休眠に入ります。その期間は定まっていません。岸辺で待ち伏せを試みた者たちもいましたが、一ヶ月が過ぎても影一つ拝めず、結局みんな諦めてしまいました」


「なるほどな……」


そういえば、地球のテレビ番組で見たことがある。爬虫類は一度の食事で数ヶ月、長ければ一年近くも絶食できる種類がいる。

あの巨蛇たちなら、数年間眠り続けることだってあり得るかもしれない……。

俺は顎に手を当て、心の中でそう合点がいった。


「かつて王都の学者が調査に訪れた際、岸辺で拾った鱗から極めて高い魔力耐性が検出されましてね。そのため、あの巨蛇は龍族の末裔、いわゆる亜龍ワイバーンの類ではないかと推測されているのです」

「そんな話を聞かされては、冒険者たちもますます足がすくむというもの。牧場周辺の魔狼ウルフを駆除したり、山裾の魔熊ベアを狩ったりする方がよほど楽ですし、町民からの好感度も稼げます。そのせいが、あの懸賞令は今でも冒険者ギルドの掲示板に張り出されたままなのです」


ローランは解説を終えると、俺と自分の分の紅茶を淹れてくれた。


「これほどの蛇肉をお持ちなのですから、冒険者ギルドへ行って賞金を受け取ることをお勧めしますよ。そのお召し物から察するに、お客様はよそから来られた方、あるいは異国の方とお見受けしますが?」


俺が頷くのを見て、ローランは話を続けた。


「もし冒険者ギルドの登録者でない者が懸賞金を受け取る場合、三十パーセントの手数料が差し引かれてしまいます。ですが、もし当商会に処理をお任せいただけるのでしたら、私の方で手数料を二十パーセント以下に調整するよう掛け合いましょう。ぜひ、前向きにご検討ください!」


「二十パーセント以下、か……」


相手の言葉に嘘が混ざっているかは分からないが、現地の間に合わせのプロに任せるのが最良の選択であることは間違いない。しかし……。


「念のために聞いておくんだが、ほんの少しの肉だけでも大丈夫なのか?」

「?」


ローランの表情がフリーズした。


「あの二匹の蛇を狩られたのではないのですか? 通常の魔獣であれば、耳や足といった部位の持ち帰りで事足りますが、あの魔蛇は商業的価値が極めて高いのです。鱗、肉、骨、眼球、血液に至るまで、すべてが優れた魔法道具や武器の素材になります。そのため懸賞令には『死体が五体満足であること。さもなくば賞金は大幅に減額する』と特別に注記されているのですよ」


「なら、諦めるしかないな。厳密に言えば、俺はあいつらを仕留めたわけじゃなく、痛手を負わせただけなんだ。だから懸賞金の件は忘れてくれ」


俺は仕方なそうに言った。

何しろ、あの二匹の蛇の頭はすでに消失しているし、残りの肉や骨はすべてポイントに変換してしまった。

それに「冷蔵庫システム」は俺の切り札だ。絶対に情報を漏らすわけにはいかない。


「左様ですか……。ですが、このお肉だけでもぜひ我が商会にお譲りください。この道八年の営業の信誉にかけて、必ずや良いお値段を提示することをお約束いたします!」


蛇の丸ごとの死体がないと知り、ローランはひどく落胆した様子だった。

だが、彼はすぐに感情を切り替えると、残された蛇肉の買い取り権を勝ち取ろうと積極的にアプローチしてきた。


「ローランさん、あんたは商会の買い取りに関して最終決定権を持っているのか?」

「もちろんです。私もここではそれなりの古参ですので、仮に今あなたが巨蛇の死体を目の前に引っ張り出してこられたとしても、私が提示する価格が当商会の最終的な査定額となります」

「それじゃあ、査定の前にちょっとした実演デモンストレーションをさせてもらえないか? 厨房を少し借りたいんだ」


手持ちの商品を売りさばくため、俺はローランに厨房を借り、アイテムの使い方を実演することにした。

そのまま相手に売り払うこともできるが、それでは商品の価値が大きく買い叩かれてしまう。

そうなると、次回同じ商品を売る時に適正な価格まで引き戻すのが難しくなる。

だから、実際のパフォーマンスを見せることが、今の俺にとって利益を最大化する最善の手だった。


「まず、これらの材料が必要だ」


俺はシステムパネルを開き、中から様々な食材や調味料を一つずつ取り出して、脇のテーブルに並べていった。

当然、カモフラージュの動作を交えながらだ。

傍から見れば、俺がジャケットの内ポケットに手を突っ込むたびに、次から次へと物品が飛び出してくるように見える。

案の定、ローランの目はドアノブほどに丸くなっていた。


「よく見ててくれよ。まず鍋に油を引いて、溶き卵を流し込む。細かく砕きながら炒めて、八分ほど火が通ったら一度皿に上げておく」

「次に、細切れにした人参、玉ねぎ、コーン、ハムを投入し、塩と胡椒を少し振って炒めるんだ」

「一分ほど炒めたら白飯を加え、強火で一気に煽る。途中でさっきの卵を戻し入れ、ケチャップを回しかけたら、仕上げにまた塩胡椒で味を調えて、さらに一分ほど炒めれば完成だ」


俺はチャーハンをお椀に詰め、それを皿の上へひっくり返した。

こうして「ケチャップ卵チャーハン」が出来上がった。


振り返ると、ローランが呆然と口を開けてこちらを見つめていた。


「こ、これは……まるで芸術品です! これほど美しく、色、香り、味の三拍子が揃った料理は見たことがありません! もしや貴方は、どこぞの国の王室御用達の料理人シェフなのでは!?」


彼の興奮ぶりを見ながら、俺は心の中で静かにつぶやいた。

――いや、ただのチャーハンなんだけどな。

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