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第4話:黄金のリンゴが招く修羅場

バシュッ!

バシュ、バシュッ!


テニスボール大の水球が、木板を繋ぎ合わせた盾に次々と叩きつけられ、俺の腕を痺れさせる。

「武神のちまき」のおかげで、今の俺の身体能力は恐ろしいほど高い。スマッシュの連打にも等しいこの攻勢を、なんとか耐え抜くことができている。

だが、簡単に退くわけにはいかない。これは苦労してようやく見つけた新種――「砲台ロブスター」なのだから。


俺は慎重に盾を構え、じりじりと間詰めをする。

水面から姿を現したのは、深紅に青が混じった体色をした、小型犬ほどのサイズのロブスターだ。その強靭な二つのハサミをこちらに向け、強力な水球の砲弾を撃ち続けてくる。


「くそっ、なんてしぶといんだ!」


あらかじめ「武神のちまき」で身体を強化していなければ、今頃腕の骨が折れていただろう。

速戦即決だ!

俺は左手で盾を支えながら、右手をジャケットのポケットに突っ込み、赤いプルタブの缶を取り出した。

親指で勢いよく開けると、それを砲台ロブスターめがけて放り投げる。


ドカンッ!


ロブスターが空高く吹き飛んだ。

滞空し、踏ん張りのきかない隙を見逃さず、俺は右腕を突き出し叫んだ。

「キャプチャー!」


右腕から放たれた半透明の触手が、ロブスターをがっちりと捕獲する。


[捕獲:砲台ロブスター×1、350ポイント獲得]


「ナイス!」


目当ての獲物を手に入れた今、これ以上戦う理由はない。俺は急いで川を離れ、岸辺へと上がった。

この異世界に来てから七日が過ぎた。俺は毎日森を探索し、野生の魔獣を見つけてはポイントに変える日々を送っている。


それにしても……さすがは異世界だ。

野生の魔獣が溢れかえり、至る所で奇妙な種を目にする。

縄張りを休みなく巡回する、小型のティラノサウルスのごとき「クレイジー・フェザント」。

口から強力な水鉄砲を放って鳥を撃ち落とし、丸呑みにする「アーチャーバス」。

漆黒の毛並みを持ち、臆病だが雷光のごとき速さで駆ける「雷紋兎らいもんうさぎ」。


森には多種多様な魔獣が存在するが、基本的にはこの三種で八割を占めている。他は個体数が少なすぎるか、気配を察した瞬間に逃げ去ってしまうものばかりだ。

どの魔獣も、地球の生物とは比較にならないほど強力で、中には先ほどのロブスターのように魔法のような攻撃を仕掛けてくるものもいる。


幸い、俺には冷蔵庫システムの力がある。様々な特殊アイテムを駆使することで、致命傷を負うこともなく着実にポイントを稼ぐことができた。

たとえ怪我をしても、有料アイテムの「聖なるミネラルウォーター」を購入して飲むか、傷口に振りかければすぐに治る。


もちろん、ただ狩りをするだけでなく、合間を縫ってシステムの機能も検証してみた。

まず、高ランク商品の情報はアップグレードするまでロックされているが、すでに所持している商品は例外だ。例えば三星ランクの「武神のちまき」などだ。

全三星商品の中で、これだけはアイコンにモザイクがかかっておらず、タップすれば詳細な注釈が表示される。


次に、商品の取り出し方は二通りある。実体の冷蔵庫を召喚するか、パネルのバッグ欄から直接取り出すかだ。一度に一つずつしか出し入れできないのは共通だ。


唯一の難点は、宿泊環境だった。

冷蔵庫システムで買えるのは食品関連だけで、テントや寝袋といったキャンプ用品は売っていない。最もそれに近い商品は「冷凍庫作業着」だった。

これは二星ランクにならなければ解放されない商品だが、今はまだ手が届かない。


だが、運の良いことに、先日の「ビギナーズ大礼包」で引き当てた十点の商品の中に、この「冷凍庫作業着」が一着含まれていたのだ。

ポリエステルと綿で作られた鮮やかなオレンジ色のそれは、軽くて非常に保温性に優れている。

これのおかげで、木の枝で作った簡易シェルターの中でも、快適な眠りにつくことができている。


ちなみに、あの時引き当てた内訳は以下の通りだ。

・爆破缶詰×3(一星)

・聖なるミネラルウォーター×2(一星)

・冷凍庫作業着×1(二星)

・万能餐刀×1(二星)

・蛸ゼリー×1(二星)

・真・黒糖水×1(一星)

・武神のちまき×1(三星)


毎日の食料や水、戦闘補助用の有料アイテム代を差し引いた現在の残高は、20,360ポイント。

冷蔵庫を二星へアップグレードするには、10万ポイントが必要だ。


「あと8万か……。まあ、のんびり行くか。時間制限があるわけじゃないしな」


俺はパネルを閉じ、川の上流へと目を向けた。

あちらの空に、以前黒い煙のようなものが上がっているのが見えた。きっと人が住んでいるはずだ。

ポイントも十分に貯まった。そろそろ、街を目指すとしよう!



俺は川に沿って進み、二時間ほど歩いてようやく目的地に到着した。そこは巨大な湖だった。


「綺麗だな! 一っ風呂浴びるとするか!」


透き通った湖水を見て、俺は即座に決断した。

しかし、時はまだ夜明け。林には薄霧が立ち込めており、俺は湖底をよぎった一筋の影に気づいていなかった……。


この湖は巨大だった。一般的な室内プールなど比較にならないほど広く、水の色はガラス細工のような淡い緑色をしている。水面は鏡のように穏やかで、早朝の雲を映し出していた。


バシャバシャ!


俺は深く考えず、すぐに服を脱ぎ捨てて湖へと飛び込んだ。

男の行水は早い。おまけにボディソープのような化学製品もないので、わずか三分で洗い終えた。


その時、突然システムパネルが跳ね上がり、次のような文字が表示された。


[告知:ユーザーがシステムを起動してから七日が経過しました。メインシステムは『デイリーログイン』機能を解放します。この世界で長く生き延びるほど、報酬は豪華になります。励みなさい、システムユーザーよ!]

[初日ログイン報酬:禁忌の黄金林檎(四星)]

[追記:そのまま食べても、ジュースにしても美味。ただし、耐えきれることが前提である!]


「……?」


注釈を十秒間眺めたが、意味がさっぱり分からない。

考えるのをやめ、受け取りボタンをタップした。

次の瞬間、俺の手の平に一個のリンゴが忽然と現れた。


サイズは普通のリンゴより二回りほど大きく、全身から柔らかな金色の光を放っている。純金で作られた工芸品のようだが、触れてみると確かな果肉の弾力があり、言い表しようのない芳醇で甘い香りが漂ってきた。

匂いを嗅いだだけで、口の中に唾液が溢れてくる。


「ちょうどいい朝飯だ!」


俺はリンゴを掲げ、かぶりつこうとした。

その時――。


水面が突如として爆ぜ、一匹の巨蛇が躍り出た。

大きく開かれた口は洗面器ほどもあり、鱗は朝光を浴びて燃える炭火のように赤く、体長は少なくとも十メートルはある。


ガブッ!


蛇は俺の手から黄金のリンゴを直接ひったくると、身を翻して湖の中心部へと泳ぎ去った。

あまりに一瞬、三秒にも満たない出来事だった。


「……うわっ、クソッ!」


巨蛇が遠ざかってから、ようやく俺は獲物を奪われたことに気づき、声を上げた。

だが、異変はそれで終わらなかった。


ドカンッ!


赤蛇が水面上に跳ね飛ばされた……いや、叩き出されたのだ!

あの黄金色の物体は……尻尾だ!

次の瞬間、赤蛇に平手打ち(尾撃)を喰らわせた張本人が水面から飛び出した。それは、赤蛇にも引けを取らない巨躯を誇る、巨大な黄金のパイソンだった。


鱗はしっとりとした光沢を湛え、赤蛇よりはわずかに細身だが、長さは互角だ。

黄金のパイソンは水面に躍り出るやいなや、赤蛇の口からこぼれ落ちた黄金のリンゴへと一直線に向かう。

しかし、リンゴに触れようとした瞬間、今度は赤蛇が黄金のパイソンの尻尾に噛みついた。鋭い牙が深く肉に食い込む。


「ギャアアアアアア!!!」


黄金のパイソンは涙を流しながら、天を仰いで悲鳴を上げた(ように見えた)。

黄金のリンゴは再び宙を舞い、水しぶきを上げて落ちる。


大乱闘の幕開けだ。

二匹の蛇は、まるでおもちゃを奪い合う子供のように交互にリンゴへ食らいつこうとするが、どちらも飲み込むまでには至らない。

実力が拮抗した、泥沼の膠着状態。

俺は三メートルほど離れた岸辺に立ち、呆然とした表情でその光景を見守るしかなかった。


「…………ダメだ! 何とかしなきゃ!」


あれは超希少な四星アイテムだ。あんな蛇どもに渡してなるものか!

俺は奥歯を噛み締め、冷蔵庫システムを開いて手持ちの物資を確認した。


今、役に立ちそうなのは……。

……小規模な爆発を起こせる「爆破缶詰」。

……傷を癒やすことができる「聖なるミネラルウォーター」。

……そして、あらゆる調理器具に変形する「万能餐刀ばんのうさんとう」、これだ!!!


俺はパネルを操作し、一本の銀色のディナーナイフを取り出した。


「ええと……1000ポイント支払いで『パルス波モード』を一分間起動、ダンクルオステウスを切り裂くことが可能。5000ポイント支払いで『金のハサミモード』を三十秒間起動、龍の鱗を切り裂くことが可能……?」


ツッコミどころ満載だが、今は構っていられない!


「金のハサミモード、起動!」


叫ぶと同時に、ナイフが眩いエメラルドグリーンの光を放った。

次の瞬間、鋭利な黄金のハサミが俺の手に現れた。


「いけえええっ!」


俺は渾身の力でそれを投げつけた。

金のハサミは一条の金光と化し、争い合う二匹の巨蛇――その両者が同時に黄金のリンゴに噛みついた、その瞬間を狙って一直線に突き進んだ。

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