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寵姫の秘密  作者: はぎわら 歓


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27/30

27出産

 腹が大きく膨れてくると、乳房から乳がにじみ出て着物が濡れるようになってきた。曹貴人は上目遣いで私と乳房を交互に舐めるように見る。


「気になる?」

「ん、少し。いいなあ、皇后さまのお子は。あたしはお乳を飲んだことないと思うもの」


 曹貴人を産んだ母親は早くに亡くなったのだった。太后の愛情を受けていたとはいえ、それまでの幼児期の扱われ方は獣のようだった。


「あ、あの、飲んでみる?」


 私は曹貴人の幼いころに同情する半面、私の乳房を含んでもらいたい、後ろ暗い欲望がある。


「いいの!? あ、でもお子に悪いわね」

「まだ生まれていないのだし」


 目を輝かせて頬を紅潮させる曹貴人に胸元を見られながら、私はドキドキしながら着物を開け両乳房を出す。


「わあ! なんだかおおきくてふわふわ! あ、お乳がもれてきているわ!」


 曹貴人がちゅうっと乳首に吸い付く。


「う、ふっ」

「あ、ごめんなさい。痛かった?」

「うんん、全然そんなことないわ」


 甘い疼きを感じて、思わずうめいてしまった。曹貴人は赤子のように無垢な心で私の乳を吸っているというのに、私は恥ずかしい欲望にまみれている。意識的か無意識か、曹貴人は片方の乳に優しく舐めながら吸い付き、もう片方の乳房を揉みしだいている。

 声を押さえながら、その様子を見ているとだんだんと欲望よりも、彼女への愛しさが募る。私は目を閉じて彼女の髪をなでながらこの一時を楽しんだ。


「おいしかった。お乳の味ってこんななのね」

「もう、いいの? また後で飲んでもいいのよ?」

「もういいの。満足したから」


 明るく曹貴人は屈託なく笑う。少し残念な気持ちがしてしまったが、彼女の笑顔を見るとまあいいかという気にもなった。


 穏やかに優しい時間が流れ、極楽のような日々を過ごす。私が曹貴人に書を読み聞かせると、その話を彼女は絵にかいたりした。


「まあ! 絵を見ただけで話の内容がわかるわ!」

「ふふふ。これは生まれてくるお子に贈る絵本なの」

「きっと喜ぶわね」


 私たちをばあやさんは目を細めて遠くから見ている。永遠に続いてほしい時間だった。しかしそろそろ出産だろうと日が近づいてきたころ、曹貴人の様子がおかしくなってきた。嬉しそうにそわそわしていた彼女は、怪訝そうに腹と私を交互に見つめ、不安そうな表情を見せる。


「どうしたの? そんなに落ち着かないで」

「ん、ううん……」


 会話もあまり交わさず、黙ってそばにいる。もしかしたら、赤子に嫉妬しているのだろうか。


「あの、子が生まれても何も変わらないから心配しないで?」


 そう伝えると曹貴人は首を横に振るばかりだった。


 強烈な痛みを腹に感じ、出産が間近に迫った。ばあやさんはすぐさま産婆を呼んで、大量の湯を沸かし始める。


「ぐぅっ!」

「皇后さま! 皇后さま! 死なないで!!」

「小麗っ! だ、いじょ、うぶ! あなたを残して、ぜったい、死なない!」

「くうううぅっう!」


 私たちはずっと強く手を握り合っていた。どれぐらいの間、何がどうなっているのかわからないが、最高潮の痛みの後、破裂音のような赤子の声が室内に響き渡る。


「元気な男の子ですじゃ」


 赤いくしゃくしゃの赤子を胸にそっと置かれる。生まれたばかりなのに髪が豊かで彫の深そうな顔立ちに見えた。


「ああっ! う、生まれた!」


 曹貴人が赤子を見て目を大きく見開き、私の顔をじっと見つめる。


「皇后さま……?」

「小麗?」


 なぜか困惑している曹貴人は何度も私と赤子を見比べたのち、寝台の上に気を失うように伏せ、眠り始めた。

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