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強化倍率∞ ~最弱足軽、《道具超強化》だけで天下を獲った男~  作者: 伝説の男前
第二部 火器転用編

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第十二話「峠の決戦」

#### 一


決戦の日、峠道には夜明け前から霧が立ち込めていた。


「配置につけ! 零丸の報せ通りなら、先鋒はもうすぐ峠に差し掛かる」


練の号令に、里の男たちが両脇の斜面に散っていく。強化された竹束の柵は峠道の狭い一点に据えられ、その後方には、練が丹精込めて仕上げた大筒が、静かにその出番を待っていた。


『……来ました。先鋒、約五百』


見張りに出ていた零丸が舞い降り、緊張した声で報告する。峠の入り口に、蛇柳勢の先鋒隊が姿を現し始めた。


「ゴンザさん、頼みます」


「任せとけ。派手にやってやるさ」


軽口とともに、ゴンザが単騎、峠道の入り口へと躍り出た。


「おうおう、蛇柳のもんども! この先には、桜庭様の精鋭が控えておるぞ! 命が惜しくば、引き返せ!」


挑発的な啖呵を切りながら、ゴンザは峠道の奥へと後退していく。予想通り、先鋒隊はまんまと挑発に乗り、隊列を崩したまま峠道へと突入してきた。


「今だ!」


練の合図で、両脇の斜面に隠れていた伏兵が、一斉に矢と鉄砲を浴びせかけた。


---


#### 二


強化された火縄銃の弾幕が、狭い峠道に殺到する先鋒隊を的確に打ち抜いていく。


「な、なんだこの精度は……!」


「怯むな、数はこちらが上だ! 押し通れ!」


先鋒の指揮官が声を張り上げるが、狭隘な地形では、大軍の勢いを活かすことができない。次々と倒れていく味方を前に、先鋒隊の足並みは乱れ始めた。


「大筒、構え!」


練の号令とともに、又兵衛と共に仕上げた大筒が火を噴いた。轟音とともに放たれた砲弾は、峠道の中程に殺到していた敵兵の一角を、まとめて吹き飛ばす。


「化け物か……!」


戦意を喪失した先鋒隊が、算を乱して後退を始めた。だが、それを見た本隊が、より本格的な攻勢に転じるまでに、時間はかからなかった。


「小癪な小細工を……! 本隊、前へ!」


蛇柳影虎自らの号令とともに、後方に控えていた本隊の一部が動き出す。数にして千を超える兵が、峠道へとなだれ込んでくる。


「くっ……さすがに、この数は……」


柵の内側で、練は思わず息を呑んだ。先鋒を退けたとはいえ、本隊の圧力は、これまでの比ではなかった。


---


####三


その時だった。峠道の脇の崖の上から、一つの人影が飛び降りてきた。


「――待たせたな」


見知らぬ若い男だった。鎧を纏わず、着流しに大太刀を一振り差しただけの軽装。だが、その佇まいには、練が今まで見たどの武人よりも研ぎ澄まされた気配があった。


「何者だ、貴様は!」


敵の武者が誰何する間もなく、男の大太刀が一閃した。それだけで、数人の敵兵が一瞬にして斬り伏せられる。


「――なっ……!」


「ゴンザの旦那に世話になった、流れの剣客よ。……借りは返す、そういう主義でな」


飄々と告げながら、男は次々と敵兵を打ち払っていく。その剣技は、練の強化した道具に頼らずとも、十分すぎるほどの脅威だった。


「あの人……」


「――鷹村迅牙(たかむら じんが)、いう名だ」


いつの間にか駆け寄っていたゴンザが、感心したように呟いた。


「以前、堺への道中で世話になった食い詰め浪人でな。膂力も剣才も一流、なのに定まった主も持たず、渡り歩いておる変わり者よ」


鷹村の乱入によって、峠道の均衡は一気に崩れ始めた。強化された道具の力と、鷹村の圧倒的な武芸が組み合わさり、敵の本隊はじりじりと押し戻されていく。


---


#### 四


戦況が決定的に傾き始めた頃、練は震える手で、最後の切り札となる大筒に、渾身の集中を注ぎ込んだ。


――理解しろ。この一撃に懸けるすべてを。


これまで積み重ねてきた知識、又兵衛の教え、里の者たちの想い――そのすべてが、練の中で一つの理解へと結晶していく。


```

理解度:91%

追加強化完了

威力:さらなる限界突破

```


「峠道の敵、まとめて頂きます」


震える声とともに放たれた砲弾は、峠道の中央に集結していた敵の主力を、轟音とともに薙ぎ払った。


「ば、馬鹿な……!」


指揮官の悲鳴とともに、蛇柳勢の陣形が完全に崩壊する。生き残った兵たちは、算を乱して峠道の外へと逃げ惑い始めた。


「勝った……のか?」


呆然と呟く練の肩を、鷹村が気安く叩いてきた。


「ああ、勝ったな。にしても、お前さん、面白い力を持ってるじゃないか」


「あ、いえ、俺は本当に、道具に手を加えただけで……」


「その謙遜はいいから、名を教えろよ。俺は鷹村迅牙。お前は?」


「……常磐練、です」


「トキワ、ね。悪くない、この乱世でしばらく、お前の周りを見物させてもらおうか」


飄々とした態度に、練は戸惑いながらも、どこか安心感を覚えた。峠道に転がる骸を横目に、里の者たちの間から、堪えきれない歓声が上がり始めていた。


だが練の胸には、勝利の喜びとともに、拭いきれない重みも残っていた。


――蛇柳影虎自身は、まだ討ち取れていない。


峠の霧が晴れていく先に、まだ見ぬ乱世の広がりが、練を待ち受けていた。


(第十三話「新たな仲間」へ続く)


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