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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 5

帝国軍の徴税部隊、襲来。そして「ポイ捨て」という大罪

 ポポロ村に滞在して数日。

 俺は朝から、村の広場を竹箒で掃き清めていた。

「サッサッ……サッサッ……」

 落ち葉を集め、風通しを良くする。空気が綺麗だと、呼吸するだけで気持ちがいい。

 広場の隅では、リリスが「九条さんが作った竹箒、神の神器より使いやすいですぅ!」と不器用な手つきで落ち葉を集め、リーザは「ポイントカード……スタンプ押してほしいですわ……」と寝言を言いながら日向ぼっこをしている。

 平和だ。この村の住人(獣人やエルフたち)はみんな礼儀正しく、ゴミの分別ルールも俺が教えた通りにしっかり守ってくれている。

 最高の清掃環境――そう思っていた、その時だった。

 ――ドドドドドドドォォォォォォッ!!

 突然、村の静寂を切り裂くような重低音が響き渡り、土煙を上げて巨大な金属の塊が広場に乗り込んできた。

 鉄の装甲で覆われた、不気味な六輪の魔導車両。

 そこから降りてきたのは、緑色の魔導戦闘服に身を包み、物騒な『九九式魔導ライフル』を肩に担いだ、数十人の屈強な男たちだった。

「ひぃっ!? ル、ルナミス帝国軍……!」

 村の住人たちが悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように家の中へ隠れていく。

 俺の横で、キャルルがウサ耳をピーンと立てて、険しい表情で前へ出た。

「……なんの用ですか、帝国軍の皆様。ここは緩衝地帯、あなたたちが武装して入り込んでいい場所ではありません!」

 キャルルの言葉を遮るように、部隊の隊長と思しき男が、下劣な笑みを浮かべながら歩み出た。

「おいおい、硬いこと言うなよ村長サン。俺たちは『特別徴税』の通達に来てやったんだ。今月から、ポポロ村の保護税みかじめりょうは金貨百枚に引き上げられた。払えないなら……この村の娘たちを『労働力』として帝都に連行するまでだ」

 典型的な、絵に描いたような悪徳役人のセリフだった。

 キャルルはギリッと歯を食いしばり、腰のトンファーに手を伸ばしかける。だが、相手は最新鋭の魔導兵器で武装した正規軍。ここで事を構えれば、村が戦火に包まれる。村長としての責任感が、彼女の身動きを縛っていた。

 一方、俺は竹箒を持ったまま、隊長の言葉など一切聞いていなかった。

(……なんだ、この猛烈に臭いニオイは?)

 俺の嗅覚オカンセンサーが、異常な悪臭を捉えていたのだ。

 視線を向けると、隊長の後ろに控えている帝国兵たちが、下品な笑い声を上げながら『オリーブドラブ色の小さな缶詰』を開けていた。

「へへっ、田舎の村で食う『L缶』は格別だな!」

「ああ、やっぱり前線は『豚神ぶたがみ風アブラ飯』に限るぜ! ニンニクマシマシだ!」

 缶詰を開けた瞬間、広場の清浄な空気が、強烈なニンニクと酸化した背脂のニオイで完全に汚染された。

 帝国軍名物・一〇〇式戦闘糧食。兵士たちはそれをスプーンでガツガツとかき込み、ゲップを吐き散らしている。

「……おいおい」

 俺の額に、ピキリと青筋が浮かんだ。

 人が朝から掃き清めた広場で、強烈なニンニク臭を撒き散らしながらの買い食い。この時点でマナー違反のイエローカードだ。

 だが、問題はその後だった。

「ぷはぁ、食った食った! やっぱアブラ飯は最高だぜ!」

 食事を終えた兵士の一人が、ゲラゲラ笑いながら、手に持っていた空き缶(L缶)を。

 こともあろうか、俺がさっき綺麗に落ち葉を片付けたばかりの広場のド真ん中に。

 ――ポイッ。カランカランッ。

 無造作に、投げ捨てたのだ。

 さらに別の兵士が、食後のポポロシガー(葉巻)をふかし、その吸い殻を地面にペッと吐き捨て、泥のついた軍靴で踏みにじった。

「「「…………アッ」」」

 その瞬間。

 俺の後ろにいたリリスとリーザの顔から、スッと血の気が引いた。

「あ、あの兵士さん……やっちゃいけないことを……」

「おわりましたわ……。広場が、ルナミス帝国が……全ておわりましたわ……」

 隊長はキャルルに銃口を突きつけながら、傲慢に笑っていた。

「さあ、どうするウサ耳村長? 逆らうなら、この村を火の海に――」

「…………てめぇら」

 地を這うような、ドス黒い声が広場に響いた。

「あン? なんだてめぇは。村の便所掃除のオッサンか?」

 隊長が俺を鼻で笑う。

 俺は竹箒をポトリと落とし、両手で100均の『ハンディモップ』と『重曹水スプレー』を握り直した。

 俺の全身から、これまでのどんな魔物(死蟲機)に対した時よりも恐ろしい、ドス黒い『オカン的激怒のオーラ』が立ち上り始めていた。

「税金がどうとか、村を燃やすとか、そんな寝言はどうでもいい……」

 俺は、地面に転がった『油まみれの空き缶』と『タバコの吸い殻』を指差した。

「人が……朝から綺麗に掃き清めた広場に……」

「ハッ、狂ったか? 撃ち殺せ」

 隊長の合図で、数十人の兵士が一斉に魔導ライフルの安全装置を外す。

 チャキッ、と無機質な金属音が鳴る。

「燃えないゴミと吸い殻を!! ポイ捨てしてんじゃねぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 俺のオカンの逆鱗が、完全にリミットブレイクした。

 ルナミス帝国が誇る最新鋭の武装部隊を相手に、たった一人の清掃員が、ハンディモップを構えて静かに歩み寄り始めていた。

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