EP 7
将軍の強制除染。玄関マット(ただの雑巾)で宇宙の誇りを削り落とされる
「……おい、動くんじゃねぇ」
ボロアパート『ひまわり荘』の廊下。
俺の放ったオカン的激怒のオーラに圧され、銀河帝国の将軍ゾルギウスが、泥だらけのブーツを廊下に踏み込んだまま固まっていた。
その顔は漆黒のヘルメットに覆われて見えないが、微かに装甲がカタカタと震えているのがわかる。宇宙を統べる将軍が、今、人生で初めての『本能的な恐怖』を感じていた。
「人がせっかく雑巾がけした廊下を汚しやがって……。その汚い靴裏、俺が綺麗に『解体(お掃除)』してやる!」
俺は、手に持っていた『粗品の玄関マット(イボイボ付きの硬いやつ)』を、まるで武器のように構えた。
『……ハ? な、何を……貴様、その布切れで我の足元を……?』
「問答無用!! 靴の泥は! 玄関マットで落とすのが常識だろうがァァァッ!!」
俺は屈み込むと、ゾルギウスが踏み出していた右足を掴み上げ、その靴裏に玄関マットのイボイボ面を、ものすごい力で叩きつけた。
対象:日本の家屋に土足で踏み込んだ『悪質な不法投棄ゴミ(装甲ブーツ)』および『こびりついた泥汚れ』。
処理:マットの摩擦力と魔力を融合させ、対象の表面にある『不純物(泥と超硬度装甲)』を限界まで削り落とし、清浄な状態へと解体する。
「――『解体』!!」
ガリガリガリガリガリガリガリガリッ!!!
廊下に、建物を解体する時のような凄まじい轟音が響き渡った。
『ギ、ギ、ギィィィィヤアアアアアッ!?!? な、何ダコノ、身ヲ削ラルヨウナ痛みハァァッ!?』
ゾルギウスが、将軍の威厳などチリ一つ残らない悲鳴を上げた。
俺が玄関マットで靴裏をゴシゴシと擦るたびに。
ブーツに付着していた泥汚れだけでなく。
核兵器すら無傷で耐えるはずの銀河帝国の超硬度特殊合金が、まるで硬いカサブタでも剥がされるかのように、あるいは大量のスチールウールでこすり落とされるかのように、ガリガリと白い粉末になって削り落とされていったのだ。
『バ、バカな……! 我ガ最強ノ装甲ガ……ただの布切れで……! 我ガ誇リガ……宇宙ノ覇者ノ誇リガ、ゴミのように削り取られていくゥゥッ!!』
「うるせぇ! ガンコな汚れは、腰を入れてこすり落とすんだよォォッ!!」
俺はさらに力を込め、マットをピストンさせた。
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリッ!!!
シュバァァァァァンッ!!
「……ふぅ。これで右足は綺麗になったな」
俺が手を止め、マットを放り投げると。
そこには、驚愕の光景が広がっていた。
『……ア、ア……?』
つい先程まで、漆黒の重厚な装甲に包まれていたゾルギウスの右足。
しかし今、俺の手によって「お掃除」されたその足は。
ブーツも、脛当ても、腿の装甲も、すべてガリガリに削り落とされ。
中から現れたのは、パツパツの、真っ白い『全身タイツ(帝国のインナー)』を履いた、なんとも情けない生身の脚だった。
「よし、次は左足だ! ちゃんと揃えて綺麗にしないとな!」
「「「…………!!!」」」
その様子を衛星モニターで見ていたホワイトハウスの大統領、そして庭の隅のジャックたちは、もはや言葉を失い、涙を流しながらその「神の除染(解体)」を見届けていた。
「ジーザス……。宇宙最強の装甲が……ただの粗品の玄関マットで、水垢のように削り落とされたデース……」
「しかも、中のインナーは一切傷つけず、装甲(汚れ)だけを剥ぎ取るという、あの神がかったハサミ捌き……いや、マット捌き……! Bossの掃除技術は、神の領域すら凌駕している……!」
「「「ヒィィィッ!! すいませんでしたァァァッ!!」」」
後ろに控えていた下着姿(ラベル剥がし済み)の元・Sランク勇者たちも、あまりの恐怖に再び抱き合って泡を吹いた。
「さあ! お前も丸ごと『除染(全裸)』して、タエさんに怒られないように、綺麗な体にしてやるからなァァッ!!」
『あ、アアアァァァッ!! 我、我ノ将軍ノ誇リガァァァッ……!!』
かくして、銀河帝国将軍ゾルギウスは。
世界滅亡の野望も、宇宙の覇者としてのプライドも、すべて一人のオカンの「粗品の玄関マット」によってガリガリと削り落とされ。
ひまわり荘の廊下にて、パツパツの白タイツ姿へと、無惨にも「除染(解体)」されようとしていたのであった。




