表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/185

EP 2

上空を覆う巨大な影。銀河帝国艦隊の飛来と、乾かないバスタオル

『――き、緊急特別番組です! 現在、世界各国の主要都市上空に、巨大な未確認飛行物体の群れが……! ああっ! 空が、空が完全に真っ黒に覆い尽くされていきます!!』

 部屋の中から、未緒が見ているテレビの悲痛なアナウンサーの声が聞こえてくる。

 だが、庭で高圧洗浄機のノズルを握りしめている俺の耳には、そんなニュースは一切入っていなかった。

「……おいおい、マジかよ」

 俺は、ベランダの物干し竿に吊るされた何枚もの『バスタオル』を指で触り、絶望的な声を出した。

「冷たっ……。さっきまでいい感じに乾きかけてたのに、日差しがなくなったせいで、完全に湿気り始めてるじゃないか!」

 冬の洗濯物は、ただでさえ乾きにくい。太陽の光が命なのだ。

 それなのに、空を見上げれば、見渡す限りの真っ黒な巨大な鉄の塊(※俺の目には悪趣味な黒い飛行船のバルーンか何かに見えている)が、太陽を完全にブロックしている。

「どこのイベント会社の飛行船か知らないけど、よりによって大晦日の大掃除の日に、人のアパートの上空でホバリングすんじゃねぇ!! これじゃあ一番恐ろしい『生乾きの匂い』が発生しちまうだろうが!!」

 俺が天を仰いでブチギレていた、まさにその頃。

 ◇

「ジ、ジーザス……! なんてことデース!!」

 アメリカ・ホワイトハウスの地下深くにある緊急防衛司令室シチュエーションルーム

 アメリカ大統領(※前章でゴミ袋を十字縛りした男)は、巨大なモニターに映し出された地球の危機……ではなく、SPのジャックから送られてきた『ひまわり荘の庭の映像』を見て、頭を抱えて絶叫していた。

『大統領! 緊急事態です! 上空の未確認飛行物体群(UFO)のせいで……Bossのバスタオルが、乾かなくなっています!!』

 通信機越しに、ジャックの悲痛な声が響く。

「やはりか! おお、なんという愚かなエイリアンどもデースか! 地球を侵略するのは百歩譲って許すとしても……よりによって、あのミスター・クジョウの『日照権』を奪うなど……!!」

 大統領の隣にいた国防長官が、血相を変えて立ち上がった。

「だ、大統領! このままでは、宇宙艦隊からのプラズマ攻撃でワシントンが火の海に――」

「黙りたまえ!! ワシントンが燃えるより、ミスター・クジョウのバスタオルが『生乾き』になる方が、人類にとって何億倍も重大な危機なのデース!!」

 大統領の怒声に、司令室の政府高官たちがピシッと直立不動になった。

 彼らは前回の「町内会ゴミ拾い」の一件で、湊という存在が『神話の魔獣すらゴミとして処理する絶対的なオカン』であることを、骨の髄まで叩き込まれている。

 もし、その神が「洗濯物が乾かない」という理由で本気で怒り狂えば、エイリアンどころか、地球という星そのものが『不衛生なゴミ』として大掃除(消滅)されかねないのだ。

「早急に、あの忌々しい宇宙船どもを空からどかさなければ! でなければ、我々もミスターの怒りの巻き添えを食うデース!!」

 大統領は司令室のデスクをバンッと叩き、各国の首脳(イギリス首相、フランス大統領など)との極秘ホットラインをオンにした。

「世界連合軍に告ぐ! これより我々は、ミスター・クジョウの『窓拭き』および『洗濯物の乾燥』を全力でサポートする!! NASAの軍事衛星網をすべてミスターの自宅(ひまわり荘)上空へ回せ!」

『イエッサー! 神の洗濯物をお守りしろォォッ!!』

 かくして、人類の最高叡智と防衛システムは、宇宙人との戦争を完全に放棄し、「一人の清掃員の大掃除の手伝い」へと全振りされることとなった。

 ◇

『フハハハ……! どうした地球人ども。我らの巨大な影に怯え、反撃すらできぬか!』

 そんな人類の(ズレた)事情など知る由もない銀河帝国の将軍ゾルギウスは、母船のモニターを見下ろして高笑いしていた。

『よかろう。まずはあの極東の島国(日本)から、灰に変えて――』

「おーい!! そこのデカい鉄くず!!」

 ――ビクゥッ!?

 将軍ゾルギウスの耳に、通信回路を強制的にハッキングしたかのような、信じられないほどクリアな『下からの怒鳴り声』が届いた。

 モニターを拡大すると、極東の小さなボロアパートの庭で、黄色と黒の奇妙な管(高圧洗浄機)を持った人間(湊)が、上空に向かって激怒している姿が映し出された。

「どこの飛行船か知らねえが、人の家の真上で日差しを遮ってんじゃねぇ!! このままだと17時の『特大エビ天付き年越しそば』のタイムセールに間に合わなくなるだろうが!! さっさとどけェェェッ!!」

『な、何者だあの原始人は……!? 我らの艦隊に向かって、エビ天がどうとか喚いておるぞ……!?』

 将軍ゾルギウスが困惑する中。

 湊は、ブチギレた顔で、家庭用高圧洗浄機のノズルを真っ直ぐ上空(銀河帝国の母船)へと突きつけた。

「どかないなら……大掃除の『ついで』に、お前らみたいな空飛ぶ粗大ゴミも、綺麗に洗い流してやる!!」

 オカンの堪忍袋の緒が切れた。

 地球の空を覆う数万の絶望(UFO)に対し、1万9800円の高圧洗浄機が、今まさに火を(水を)噴こうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ