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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 10

清掃完了。缶コーヒーで乾杯するVIPたち。「これが……平和か」

「いやー、すっかり綺麗になったな!」

 三丁目のはずれにあった、SSS級魔境(ゴミ屋敷)。

 ドロドロのヘドロ(スライム)や不気味な白骨(勇者の遺骸)、そして洋館そのものもすべて「粗大ゴミ」として完全解体・回収されたその場所は、今や見晴らしの良い、チリ一つない更地へと生まれ変わっていた。

 時刻はちょうどお昼前。

 高く昇った太陽が、気持ちのいい日差しを空き地に降り注いでいる。

「みんな、今日は朝から本当にご苦労だったねぇ! はい、これ、町内会からの労い(おごり)だよ。遠慮なく飲んどくれ!」

 タエさん(町内会長)が、近所の自動販売機で買ってきたビニール袋いっぱいの『缶コーヒー(微糖・120円)』を、軍手姿の男たちに次々と配って回った。

「サンキュー、マダム・タエ! 頂くデース!」

 ドロドロの最高級スーツの上に蛍光グリーンのビブスを着たアメリカ大統領が、両手でうやうやしく缶コーヒーを受け取った。

 その隣では、イギリス首相やフランス大統領、そして下着にビブス一丁の元・Sランク勇者たちが、疲労困憊といった様子で土の上に直接座り込んでいる。

「ふぅ……。疲れた後の冷たいコーヒーは最高だな。ほら、みんなも乾杯しようぜ」

 俺が缶コーヒーのプルタブを「プシュッ」と開けて空高く掲げると。

「「「カンパーイ!!」」」

 世界のトップエリートたちが、一斉にプルタブを開け、缶コーヒーを喉に流し込んだ。

 ゴクリ、ゴクリ。

 ……そして。

「…………ッ!!!」

 大統領の目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

「お、美味しい……。なんだこの、五臓六腑に染み渡るような、神々しいまでの深い味わいは……ッ!」

「信じられない……。私がホワイトハウスで毎朝飲んでいる、一杯1000ドルの最高級ブルーマウンテンよりも、この『120円の黒い水』の方が、何万倍も美味しいデース……!」

 大統領が、涙で顔をくしゃくしゃにしながら缶コーヒーを抱きしめた。

 イギリス首相も、フランス大統領も、鼻をすすりながら深く頷いている。

「ああ……。己の手で生ゴミと不燃ゴミを分別し、タエ・マダムの厳しいチェックを潜り抜け、指定袋の口を『十字縛り』にする……。あの極限のプレッシャー(労働)を乗り越えたからこそ、この缶コーヒーは『至高の一滴』へと昇華されたのだ……」

「そうさ。権力も、財産も、Sランクの肩書きも、町内会のゴミ出しルールの前では無意味だった。俺たちは今日、ただの一人の『善良な市民』として汗を流したんだ……!」

 下着姿の元勇者たちも「俺、明日から真面目に資源ゴミのラベル剥がします!」と泣きながらコーヒーを飲んでいる。

「なんだいこの外国人さんたちは。缶コーヒー1本でそんなに泣いて……よっぽど普段の仕事が大変なんだねぇ」

 タエさんが呆れたように笑いながら、俺の隣で腰をトントンと叩いた。

「でも、ホントに助かったよ。これでお向かいの山田さんも、臭いに悩まされずに洗濯物が干せるってもんだ」

「ええ。やっぱり町内が綺麗になるのは気持ちいいですよね」

 俺は冷たい缶コーヒーを一口飲み、キラキラと輝く更地を見渡した。

 世界を腐敗させる堕神も、地獄の番犬ケルベロスも、今はもう市営焼却炉でただの白い灰になっている。

「……Boss」

 後ろから、ジャックとジャン、そして合流したカレンとアーニャが歩み寄ってきた。

「見ろよ、ジャン。あの世界を牛耳るタヌキ親父(VIP)どもが、土の上に座り込んで、120円の缶コーヒーで肩を組んで笑ってやがる」

「フッ……。王(Boss)の清掃ボランティアの前では、国家の壁すらも無意味ということか。なんという平和な光景だ」

 SP軍団が、優しい眼差しで世界首脳たちの団欒を見つめている。

「オゥ! ミスター・クジョウ! マダム・タエ!」

 大統領が、空になった缶コーヒーを手に、満面の笑みで立ち上がった。

「今日は素晴らしい体験をさせていただき、感謝しマース! 我が国に帰ったら、すぐにこの『十字縛り』と『資源ゴミの分別』を、国家の最高法規として憲法に追加しマース!!」

「えっ、大統領さん、そこまで偉い人だったの?」

 俺が目を丸くすると、大統領はサムズアップで応えた。

「イエス! そして来週は、ホワイトハウスの大掃除ボランティアを予定していマース! ぜひミスター・クジョウにも来ていただきたい!」

「おっ、いいですね。交通費が出るなら行きますよ!」

 こうして、世界を揺るがすはずだったSSS級の特級魔境は、最強の清掃員と最強の町内会長、そしてポンコツ化した世界のトップたちの手によって、平和な空き地へと還った。

 缶コーヒーの空き缶を、俺と大統領が「これは資源ゴミだな!」と笑い合いながら青い袋に入れる姿を、春の穏やかな日差しが優しく照らしていた。


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