EP 5
新たな『ざまぁ』の形。イキる勇者パーティー、ゴミ出しのルール違反で社会的に死ぬ
「いいかい!? 袋の口は十字にしっかり縛るんだよ! カラスに荒らされたらアンタの国ごと燃えないゴミに出すからね!」
「イ、イエッサー! マダム・タエ! 十字デース! 完璧な十字縛りデース!」
特級魔境(ゴミ屋敷)の庭先。
ケルベロスだったモノ(生ゴミと不燃物の山)を、アメリカ大統領やイギリス首相が泣きながら指定ゴミ袋に詰め込み、タエさんの厳しい指導のもとで必死に口を縛っていた。
俺は首のタオルで汗を拭いながら、その順調な清掃作業を満足げに眺めていた。
「よしよし、だいぶ庭が綺麗になってきたな。あとは屋敷の中の……」
俺が洋館の入り口に目を向けた、その時だった。
「――おいおい。奈落の封印が解けたって聞いて来てみれば、なんだこのダサいお遊戯会は?」
空き地の入り口から、チャラチャラとした足音と、人を小馬鹿にしたような声が響いた。
現れたのは、ピカピカの黄金の鎧を着た金髪の美青年と、露出度の高い魔法使いの女、そして巨大な盾を持った戦士の三人組だった。
胸には、日本トップクラスのSランク探索者であることを示す、輝かしいエンブレムが刻まれている。
「な、なんだ君たちは! 関係者以外立ち入り禁止デース!」
「ハッ! ただのゴミ拾いのおっさんが、偉そうに仕切ってんじゃねえぞ」
大統領の制止を鼻で笑い、勇者気取りのリーダーの男がズカズカと庭に入ってきた。
彼は、大統領や世界のトップエリートたち(※全員、泥だらけの最高級スーツに蛍光グリーンのビブス姿)を、ただの「底辺の清掃ボランティアのおっさん」だと完全に勘違いしているらしい。
「俺たちはSランク勇者パーティー『ライトニング・ファング』だ! お前らみたいなFランクのゴミ清掃員が、こんな魔境でウロチョロしてると死ぬぜ?」
「そうだぞ。俺たちがこの奈落の『宝』を全部回収してやるから、お前らは引っ込んでろ」
彼らはそう言って、俺たちの前でドヤ顔でポーズを決めた。
「あの、お兄さんたち。ここは今、町内会でボランティア清掃中なんだけど。遊びに来たなら帰ってくれないか?」
俺が呆れて声をかけると、勇者は「チッ」と舌打ちをした。
「うるせぇな、底辺が。……おい、ちょっと喉渇いたな」
勇者は懐から『最上級回復ポーション(ビン入り)』を取り出し、グビグビと飲み干した。
そして。
ポイッ。
空になったポーションのガラス瓶を、俺の足元に乱暴に投げ捨てたのだ。
「清掃員なんだろ? 俺のポーションの空き瓶、ついでに拾っとけよ。ギャハハハハッ!!」
勇者パーティーが下劣な笑い声を上げる。
「「「…………アッ」」」
その瞬間。
大統領たち世界のVIP、そして監視カメラ越しに見ていたSP軍団の顔から、サーッと血の気が引いた。
彼らは知っている。この男が今、この世界で『絶対にやってはいけない大罪』を犯したということを。
「……おい」
俺は、足元に転がったポーションの空き瓶をじっと見つめた。
そして、隣に立つタエさんも、般若のような顔でワナワナと肩を震わせている。
「お兄さん。……その空き瓶、なんだ?」
「あァ? 見りゃわかんだろ、空き瓶だよ。ゴミ拾いのお前に仕事を与えてやったんだ、感謝しろ――」
「ラベルが剥がしてない!! キャップが外されてない!! 中が水でゆすがれてないだろうがァァァァッ!!!」
俺とタエさんの、鼓膜を破るような激怒のデュエットが、魔境の空に木霊した。
「ヒィィッ!?」
あまりの剣幕に、勇者がビクッと肩を跳ねさせる。
「資源ゴミの基本中の基本だろ! ラベルは剥がしてプラごみ! キャップも外す! そして中を軽くゆすいでから『資源ゴミ』に出す!!」
「そうだそうだ!! そんな常識も知らないで、何が勇者だい!! アンタなんか、この社会を生きる資格のない『底辺以下の非常識人間』だよ!!」
俺のオカン的説教に、タエさんの町内会長としての容赦ない罵倒が重なる。
「な、なんだと!? たかが空き瓶の捨て方で、Sランクの俺に向かって――」
「たかが空き瓶だとぉぉぉっ!!!」
俺の怒りは頂点に達した。
こんな分別もできない不良品が、黄金の鎧なんて着てイキっているのが許せない。
「お前みたいな非常識な粗大ゴミは! 俺が丸ごと『回収(社会的な死)』してやる!!」
俺はホウキを構え、勇者に向かって一閃した。
対象:資源ゴミのルールを守れない『高慢な非常識人間』の虚飾。
処理:対象を覆う過剰な包装(武具やプライド)を剥がし、本来の無価値な姿へと解体する。
「資源ゴミは! 丸裸にしてから出せェェェッ!! ――『解体』!!」
シュバァァァァァァァンッ!!
俺のホウキの風圧が勇者パーティーを包み込んだ瞬間。
彼らが身につけていた数億円の価値がある『黄金の鎧』や『伝説の魔法杖』が、「過剰包装のゴミ」としてパラパラと分解され、文字通り一瞬で『消滅』してしまったのだ。
「えっ……? お、俺の国宝級の鎧が……!?」
「私の杖が……! キャアアアッ! 服まで!?」
数秒後。
そこには、武器も防具も失い、みすぼらしい下着姿(※ルール違反のラベルを剥がされた状態)になってガクガクと震える、ただの若者三人が立っていた。
「さあ! 反省したなら、今すぐそこのビブスを着て、大統領さんの手伝いをしな!!」
タエさんが、容赦なく三着のダサい蛍光グリーンビブスを彼らの顔面に投げつけた。
「「「ひ、ヒィィィィィィッ!! すいませんでしたァァァッ!!」」」
圧倒的な暴力と、それ以上の「ルールの暴力」の前に、Sランク勇者たちの心は完全にへし折れた。
彼らは泣きながらビブスを被り、大統領(※彼らはただのおっさんだと思っている)の元へと這いずっていった。
「ヘイ、ユー達! 赤い袋の口は『十字縛り』デース! マダム・タエに怒られないように、しっかり縛るのデース!!」
「ハ、ハイィィィッ! おっちゃん、縛り方教えてくださいィィッ!」
アメリカ大統領が、かつての日本のSランク勇者たちを『新人の下っ端』としてアゴで使い始めるという、もはや何が何だか分からないカオスな光景が展開されていた。
こうして、マナー違反のイキり勇者は、町内会の絶対ルールの前に社会的に抹殺され、立派なゴミ拾いボランティアへと更生させられたのであった。




