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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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202/224

EP 3

炭水化物とアルコールの罠! 女神撃沈

 タロキンのVIP席。

 配膳ロボットによって運ばれてきたのは、黄金の泡をたたえた生ビール特大ジョッキと、ドロリとした褐色のルーがたっぷりとかかった『特製タロキンカレー(ご飯大盛り)』であった。

「しゃあぁぁっ! まずはこれで乾杯ですわね!」

 カグヤが目を輝かせて生ビールジョッキを掴む。

「やっぱりタロキンに来たら、このカレーを食わないと始まらないわよねー!」

 ルチアナがスプーンを構え、カレーライスに狙いを定めた。

 その様子を、配膳トレイの影から見守るトンデモナイトは、心の中で強く拳を握りしめた。

(いけっ、アルコール部隊! 炭水化物部隊! 奴らの満腹中枢を破壊しろ!)

 ジョッキの中で、ビール部隊の隊長が泡を弾けさせて叫ぶ。

『おうっ! 任せな、トンデモナイト殿! 俺のアルコール度数と炭酸の暴力で、あのポンコツ女神の脳をフワフワにしてやるぜ!』

 カレーライス部隊の隊長も、ルーの中からスパイスの香りを漂わせて答える。

『フフッ……バイキングに来て、肉を焼く前にカレーを食う……。それは素人が最も陥りやすい『死のデストラップ』だ。俺のジャガイモとご飯の重みで、奴らの胃袋を物理的に埋め立ててやる!』

 彼らは知っている。

 焼肉食べ放題という戦場において、最初に炭水化物と炭酸を摂取することがどれほどの致命傷になるかを。胃袋のキャパシティは有限。そこに、重たくて消化の遅いカレーと、胃を膨らませるビールを大量に流し込めば、後半の肉戦において圧倒的に不利になるのだ。

「とりあえず生!!」

 カグヤがジョッキを掲げ、ゴクゴクと一気に喉へ流し込んだ。

『うおおおっ! 今だ野郎ども、胃壁に張り付け! 炭酸ガスを放出爆発させろォォッ!』

 ビール部隊が決死の覚悟でカグヤの胃袋へダイブし、凄まじい勢いで炭酸ガス(ゲップの素)を発生させる。

「ぷはぁぁぁぁっ!! 美味しいぃぃっ! 労働の後(※ただ座ってただけ)のビールは最高ですわぁっ!」

 カグヤの顔が一瞬にして赤く染まり、目はトロンととろけ始めた。

「カグヤ様! 最初から飛ばしすぎると後でお肉が入りませんわよ!」

 リーザが警告するが、すでにアルコール部隊の奇襲を受けたカグヤの耳には届いていない。

「んん〜っ! このカレー、スパイシーでお肉もゴロゴロ入ってて最高ね! バクバクいけちゃうわ!」

 ルチアナもまた、特製タロキンカレー(大盛り)をスプーンで豪快に掬い、口へと運んでいた。

『よし! 俺たちも続くぞ! ジャガイモ部隊、ルーの粘度を利用して胃袋の底に沈殿しろ! ご飯部隊、水分を吸って膨張するんだ!』

 カレーライス部隊が、ルチアナの胃袋の中で一斉に陣形を組み、物理的な重さ(質量)となって彼女の消化器官を圧迫していく。

「あー、カレー美味しい。もう一杯おかわりいっちゃおうかしら!」

 ルチアナがタッチパネルに手を伸ばそうとする。

「おい、お前ら」

 その時、キャロット(人参)をチビチビと齧っていた湊が、呆れ果てた顔で口を開いた。

「焼肉屋に来て、なんで最初にカレー大盛り食って、ビールがぶ飲みしてんだ。……バカなのか?」

「はぁ? 何言ってんのよ湊! バイキングなんだから、好きなものを好きな順番で食べるのが醍醐味でしょーが!」

 ルチアナがカレーのついたスプーンを振り回して反論する。

「そうですわ! わたくしは月の女神! お肉が焼けるのを待つ間くらい、優雅にビールとサイドメニューを嗜むのがセレブの余裕というものですの!」

 カグヤも、すでに呂律が怪しくなりながらふんぞり返った。

「……フン。素人が」

 龍魔呂が、黄金のトングを回しながら鼻で笑った。

「バイキングってのはな、限られた時間(九十分)と胃袋の容量で、いかに効率よく『高価なタンパク質(肉)』を回収するかという、冷酷な戦場ミッションだ。最初にそんな重てェもんを腹に入れたら、肝心のメインディッシュが来る前に戦線離脱だぜ」

「うっさいわね! 私の胃袋はブラックホールなのよ! これくらい、ペロリと……ペロリと……」

 ルチアナが、二口目のカレーを口に運ぼうとした、その瞬間だった。

 ピタッ、と。

 ルチアナのスプーンを持つ手が止まった。

『今だ! 炭水化物連隊、一斉に膨張ビルドアップしろォォッ!!』

 ルチアナの胃袋の中で、カレーライス部隊が最後の力を振り絞り、限界まで水分を吸って巨大化した。

「……あれ? なんか……急にお腹が……」

 ルチアナの顔から、スーッと血の気が引いていく。

「はっはっは! だらしないですわねルチアナ! わたくしを見なさい、まだまだ余裕で……うぇっぷ」

 カグヤも、ジョッキを置いた途端、急激な満腹感とアルコールの回りに襲われ、顔を青くして口元を押さえた。

『よしっ! 奴らの満腹中枢を完全に制圧したぞ! ビール部隊、任務完了ミッション・コンプリートだ!』

『カレー部隊も、敵の胃袋の90%を埋め立てました! 我らの勝利です!』

 彼ら食材たちの自己犠牲(特攻)は、見事に実を結んだ。

 開始わずか十五分。

 バイキングのセオリーを無視し、目の前の誘惑に負けた二柱の女神は――。

「……うぅ。ごめんなさい……私、もうお肉……無理かも……」

 ルチアナが、白目を剥いてテーブルに突っ伏した。

「わたくし……もう、お水しか……入りませんわ……」

 カグヤも、完全にダウンし、ソファーにへたり込んでしまった。

「「「「お、おおおおぉぉぉっ!!」」」」

 冷蔵ショーケース内、そして配膳トレイの上で、トンデモナイトたち食材軍が歓喜の雄叫びを上げた。

「やった! やったぞ! あの恐るべき女神どもを、肉を一枚も食わせることなく沈めたぞ!」

「炭水化物とアルコール部隊の英雄的な働きだ! 彼らの犠牲は無駄にはしない!」

 ハラミ姫も、トンデモナイトの背中の後ろで、安堵の涙を流していた。

「トンデモナイト……! これで、少しは希望が見えてきましたね!」

「ああ、姫よ。だが、喜ぶのはまだ早い」

 トンデモナイトは、爪楊枝の剣を固く握り直し、残る敵の主力を睨みつけた。

「奴らはまだ五人も残っている。しかも、一番厄介な『オカン清掃員』と『伝説の暗殺者』、そして『強欲アイドル』は、まだ一切のダメージを受けていないのだからな……!」

 トンデモナイトの言う通りであった。

 テーブルの反対側では、女神たちの自滅を冷ややかに見つめるプロの捕食者たちが、静かに闘気を研ぎ澄ませていた。

「ハァ……。だから言ったんだ。焼肉屋で最初にカレー食う奴はアホだってな」

 湊が、キャロットを綺麗に完食し、いよいよ箸を構えた。

「これで邪魔者は消えましたわね。さぁ、私たちだけで、この店の高級肉を根こそぎ平らげてやりますわよ!」

 リーザが、純金バケツを叩きながら目を血走らせる。

「……そろそろ、鉄網の温度も最高の状態コンディションだ。俺の出番だな」

 龍魔呂が、極低温の殺気と共に、黄金のトングをシャキィィン!と鳴らした。

 食材軍の巧妙な遅延戦術により、二人の女神を沈めることには成功した。

 しかし、ここからが本当の地獄。

 いよいよ、タロキンの誇る『精鋭肉部隊』と、無慈悲なる焼き奉行・龍魔呂との、血で血を洗う(肉汁で肉汁を洗う)死闘が始まろうとしていたのである。

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます!

第3話、ビールとカレーライス部隊による決死の特攻でした!(笑)

バイキングあるあるの「最初にカレーとビールでお腹いっぱいになっちゃう現象」を、食材側の熱いドラマ(自己犠牲)として描いてみました。

ルチアナとカグヤは相変わらずのポンコツっぷりを発揮して見事に撃沈。これで強敵は減りましたが……残っているのは、最強の胃袋を持つガチ勢ばかりです。

いよいよ次話から、肉部隊が網の上へ!

待ち構えるのは、伝説の暗殺剣をトングに持ち替えた「無慈悲なる焼き奉行」龍魔呂!

【読者の皆様へのお願い!】

「カレー部隊の特攻熱すぎw」「女神たち素人すぎるだろww」「次からが本番か!」と少しでもお楽しみいただけましたら……

ぜひ、ページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、大変励みになります!

また、【ブックマークに追加】もしていただけますと、次回の更新をいち早くチェックできます!

皆様のポチッという一手間が、作者の胃袋(執筆意欲)を満たす最高の焼肉です!

次回、第4話『無慈悲なる焼き奉行! 龍魔呂の黄金トング』。どうぞお楽しみに!

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