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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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第二十一章 焼肉バイキング・タロキンの攻防~トンデモナイトの死闘と90分の黙示録~

決戦の地、タロキン! 迫り来る90分の絶望

 ルナミス帝国とレオンハート獣人王国の緩衝地帯に位置する、のどかなポポロ村。

 この村のメインストリートに、突如として巨大な看板が掲げられた。

 赤と黄色の大文字でド派手に書かれたその文字は――『焼肉バイキング・タロキン! 全品食べ放題90分コース!』。

 かつてルナミス帝国を築き上げた転生勇者・佐藤太郎の『100円ショップの概念』から派生し、庶民の胃袋を支えるために生み出された伝説のチェーン店が、ついにポポロ村にも新規オープンを果たしたのである。

「しゃあぁぁぁっ! 焼肉! 焼肉ですわぁぁっ!!」

 タロキンの真新しい店内。一番奥の広々としたVIP用ボックス席で、エンジ色の芋ジャージを着た人魚姫(地下アイドル)のリーザが、純金バケツを打ち鳴らしながら歓喜の雄叫びを上げていた。

「落ち着きなさい、リーザちゃん。今日は村の財政が黒字化したお祝いなんですから、優雅にいただきましょうね♡」

 ウサギ耳の村長・キャルルが、ニコニコと微笑みながらおしぼりで手を拭いている。

「ふふふっ! 神界の経費ツケでは食べられなかった高級肉、今日こそは限界までお腹に詰め込んでやりますわ!」

「カグヤ、アンタまだ三十万の借金返し終わってないのに、よくそんな堂々とタダ飯食えるわね……ま、私も食べるけど!」

 ハイブランドの私服(今回はちゃんと自腹で買った古着)に身を包んだ月の女神カグヤと、相変わらずジャージ姿の世界神ルチアナが、早くもタッチパネル式のメニューを巡って小競り合いを始めている。

「はいっ! 全世界のリスナーの皆さん、キュララだよー☆ 今日はポポロ村に新しくできた『タロキン』で、限界大食い焼肉配信をスタートしまーすっ! スパチャよろしくねっ!」

 ピンク色のフリフリ衣装を着た天使・キュララが、魔導カメラに向かってウインクを飛ばし。

「あの……お肉もいいですけど、新鮮なお野菜もたくさんありますのよ? 私が今ここで、世界樹の魔法で最高のサンチュを育てて差し上げますわ〜!」

 天然エルフのルナが、店内の観葉植物に向けて杖を構えようとしている。

「おいルナ、店の中で植物を巨大化させるな。出禁になるだろ」

 緑色のエプロンを着た九条湊が、URデッキブラシの柄でルナの杖をペチッと叩き落とした。

 今日は、オカン清掃員・湊が主催する、ポポロ村フルメンバーでの『タロキン90分一本勝負おごり』の宴である。

「……フン。大衆向けのバイキングとはいえ、肉の管理状態は悪くねェな。鉄網の温度も均一だ。……俺の黄金トング(マイ・トング)が火を噴くぜ」

 テーブルの端では、伝説の暗殺者にして天才料理人の龍魔呂が、極低温の殺気を放ちながら、持参した黄金のトングをシャキィィン!と鳴らしていた。

 和気藹々(?)と、注文の品が届くのを待ちわびる湊たち。

 ……しかし。

 彼らは知らなかった。この『タロキン』の厨房の奥深く、巨大な冷蔵ショーケースの中で、今まさに【世界の終わり】を迎えようとしている者たちの存在を。

 ◇ ◇ ◇

「……姫様。どうか、私の後ろへ」

 タロキン厨房、マイナス二度のチルド室(冷蔵庫)。

 霜が降り積もる白銀の空間で、一人の『騎士』が悲痛な決意を込めて前に進み出た。

 彼の名は、トンデモナイト。

 タロキンの魔力によって自我を与えられた『食材王国』が誇る、分厚く切り出された豚バラ肉の騎士である。

「おお、トンデモナイト……っ! 私たちは、私たちはどうなってしまうのですか……!?」

 彼の背後で、美しく見事なサシ(霜降り)が入った、輝くような赤身の王女――ハラミ姫が、恐怖に身を震わせていた。

「恐れることはありません、ハラミ姫。この身が炭火で焦げ付こうとも、決してあの外道ども(客)の胃袋へは行かせませぬ」

 トンデモナイトは、己の脂身アーマーを震わせ、爪楊枝の剣を固く握りしめた。

 冷蔵ショーケースの透明なガラス越しに、彼ら食材たちには見えていた。

 VIP席に陣取る、恐るべき『捕食者ジャイアント』たちの姿が。

「……見ろ。あのエンジ色のジャージを着た女……。王都のバイキングをたった一人で食い尽くし、食材を絶滅に追いやったという伝説の『強欲の悪魔リーザ』だ」

「その隣のウサギ耳の女もヤバいぜ……。以前、人参農家を一日で壊滅させたって噂だ……」

「奥にいる男(龍魔呂)を見てみろよ……! あの黄金のトング……一瞬の瞬きの中で、俺たちを完璧なミディアムレアに焼き上げる『死神の鎌』だ……っ!」

 ショーケース内の食材たち――タンシオ、カルビ、ホルモン、そしてサイドメニューの飲茶やご飯たちが、次々と絶望の声を上げる。

 彼ら食材王国にとって、タロキンの『90分食べ放題』とは、90分間ひたすらに続く大虐殺サバイバル・ホラーを意味していた。

「案ずるな、同胞たちよ!」

 トンデモナイトが、ショーケースの中で力強く声を張り上げた。

「奴らの目的は、我らが愛するハラミ姫だ! だが、忘れるな。奴らに与えられた制限時間は『90分』! この90分の間、我々が奴らの胃袋を満たし、時間切れまで耐え抜くことができれば……我々の勝利だ!」

「「「おおおおぉぉぉっ!!」」」

 トンデモナイトの演説に、食材たちが士気を取り戻し、決死の覚悟で立ち上がる。

 ビール、カレーライス、デザート類も、それぞれの戦場(胃袋)へと赴く準備を整えた。

「ハラミ姫。私が戻らなかった時は……」

「トンデモナイト……! 死んではなりませんよ、絶対に……!」

 涙を流すハラミ姫に背を向け、トンデモナイトは配膳用ロボットのトレイの上へと自ら飛び乗った。

 食材たちの、文字通り身を削る『90分の黙示録(防衛戦)』が、今まさに幕を開けようとしていたのである。

 ◇ ◇ ◇

「おっ、第一陣の肉が来たな」

 テーブルの中央で、ボォォォォッ!!と激しい音を立ててガスロースターの火が点火された。

 真っ赤に熱された鉄網。食材たちからすれば、そこは業火が渦巻く灼熱の処刑台ギロチンである。

「ふはははっ! さぁ、どんどん焼きますわよ! まずは豚バラから血祭りにあげてやりますわ!」

 リーザが、目を血走らせながら箸を構える。

 配膳トレイの上で、トンデモナイトは恐怖に震える仲間カルビやタンシオを庇うように、最前線に立っていた。

(……来るか、悪魔ども! 私の脂で、貴様らの胃袋を重くしてやる!)

 トンデモナイトが覚悟を決めた、その時。

「……おい」

 ひときわ低く、冷たく、そして絶対的な『王』の威圧感を放つ声が響いた。

 緑色のエプロンを着た男――九条湊である。

 彼は腕を組み、不機嫌そうにタッチパネルを睨みつけていた。

「俺が最初に頼んだアレが、まだ届いてねェな」

 湊の放つプレッシャーに、テーブルの上の空気がピーンと張り詰める。

 トンデモナイトも、思わず息を呑んで(息はないが)その男を凝視した。

 あの男こそが、この悪魔たちを束ねる絶対的なリーダー。彼が欲している『最上級の生贄』とは、一体何なのか。

 湊は、テーブルの上の配膳トレイを冷ややかに見下ろし、そして、地獄の底から響くような声で言い放った。

「キャロット(人参)はまだか? 3時間……は待たないぞ?」

「「「「…………」」」」

 あまりにも有名な、どこぞの戦闘民族の王子がライバルを待つ時の発言。

 しかし、その顔は一切の冗談を許さない、本気の『ベジタブル(野菜)要求』であった。

「ま、湊さん! 私のために、そんなに人参を……っ♡」

 隣で聞いていたキャルルが、顔を真っ赤にしてウサギ耳を激しく揺らしている。

「いや、お前のためじゃねェよ。焼肉の時は、最初に野菜食って血糖値の上昇を抑えねェと、後で胃もたれするだろうが。オカンの常識だろ」

 湊は至って真面目に健康を気にしているだけであった。

 しかし、その言葉を聞いた食材王国トンデモナイトたちの受け取り方は、全く違った。

(な、なんという残酷な男だ……! 我々『肉』を前にして、あえて『野菜キャロット』から血祭りに上げるというのか……! 我々を、ただの血糖値コントロールのダシに使うつもりか!)

 トンデモナイトは、湊の底知れぬ恐ろしさに戦慄した。

 このままでは、ハラミ姫どころか、食材王国そのものが90分を待たずに食い尽くされてしまう。

「……行くぞ、同胞たちよ! 奴らが野菜を待っているこの一瞬の隙に、我々から打って出る!」

 トンデモナイトが、爪楊枝の剣を天に掲げた。

「炭水化物とアルコール部隊、前へ! まずはあの無防備な女神どもを、満腹の海に沈めるのだ!」

 ポポロ村の焼肉バイキング『タロキン』。

 制限時間90分。

 無限の食欲を誇る九条湊たちと、愛する者を守るために散っていく食材たちの、宇宙で最も熱く、最もバカバカしい聖戦ディナーの火蓋が、今ここに切って落とされたのである。

ここまで『焼肉バイキング・タロキンの攻防』の第1話をお読みいただき、本当にありがとうございます!

新章は、ポポロ村にオープンした「タロキン」を舞台にした、食材たちとの熱き(?)群像劇ギャグです!

湊の「キャロットはまだか?」のセリフ、どうしても言わせたかった作者の趣味が爆発しております(笑)。命懸けでハラミ姫を守ろうとするトンデモナイト達の過酷な防衛戦、そして全く意に介さず蹂躙していく湊たちの恐るべき胃袋!

果たして、90分後に生き残っているのはどちらなのか!?

【読者の皆様へ、大切なお願い!】

もし「トンデモナイト頑張れ!」「キャロットのくだりで吹いたw」「次話の攻防が気になる!」と少しでも楽しんでいただけましたら……

ページの一番下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、作者の執筆速度と湊の食欲が爆上がりします!

そして、【ブックマークに追加】を押していただければ、次回の更新をいち早くお知らせできます!

皆様からの「評価ポイント」と「ブックマーク」が、この作品を書き続けるための最高の『エネルギー(焼肉)』です!

たった数秒の操作で完了しますので、どうかポチッと応援のほど、よろしくお願いいたします!

次話、炭水化物部隊の猛攻! 女神たちが罠に堕ちる!? お楽しみに!

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