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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 4

炎上神のヤラセ配信 vs 株式会社・九条清掃のコンプライアンス

第4話:悲劇の村? いいえ、重武装要塞です。村長キャルルの笑顔と魔導対空砲の一斉掃射

「さぁ、ショーの始まりだ。泣け、叫べ、絶望しろ! 哀れなモブども!」

 神界セレスティア。ワイズのプライベートオフィス。

 モニターの向こう側で、強制狂化バフを付与された五百体を超える魔獣の群れが、ポポロ村に向かって猛スピードで突進していく。

 地を揺らすロックバイソンの群れ。森をなぎ倒すオークたち。そして空を覆うワイバーンの編隊。

 ワイズは優雅に足を組み、カプチーノを一口啜った。

「どんなに逃げ惑っても無駄だよ。結界を持たない農村なんて、このスタンピードの前じゃ紙切れ同然。家屋は踏み潰され、逃げ遅れた老人が空からワイバーンに攫われる。……うんうん、悲劇のプロットとしては百点満点だ。さあ、最高の悲鳴を聞かせてくれ!」

 ワイズがPCの音量ボリュームを最大に引き上げた、その時だった。

 ◇ ◇ ◇

「……ん? 村長。森の方から、えっらい土煙が上がってますわよ」

「あら本当。……自警団の皆さん、出番ですよー!」

 ポポロ村、中央広場。

 麦わら帽子を被った月兎族の美少女村長・キャルルが、突進してくる魔獣の群れを見つめながら、とんでもなく爽やかな笑顔で右手を高く掲げた。

「おーっ! みんな、作業中断だべ!」

「おう! 武器庫を開けろー!」

 畑仕事を作業着姿でしていた村の男たちが、クワやカマを放り投げ、畑のうねの間に隠された『カモフラージュ・スイッチ』を一斉に蹴り飛ばした。

 ――ガションッ、ガガガガガッ!!

「な……ッ!?」

 モニター越しに見ていたワイズの口から、カプチーノがプーッと吹き出した。

 のどかなポポロ村の畑が、突如として真っ二つに割れ始めたのだ。

 そして地下深くから、鈍い鋼鉄の輝きを放つ『最新鋭の魔導防衛システム』が、次々と地上へせり上がってくるではないか。

「ド、ドンガン地下帝国製の魔導対空砲!? なんでただの農村に、帝国軍の首都防衛クラスの兵器が配備されてんだよ!!」

 ワイズが絶叫する中、ポポロ村の自警団(農家のおじさんたち)が、慣れた手つきで重火器の砲座に座っていく。

「村長! 魔導誘導バズーカ、ロックバイソン群に照準完了!」

「対空魔砲、上空のワイバーンを捕捉したべ!」

 農家のおじさんたちとは思えない、恐るべき練度と弾着計算速度。

 それもそのはず、彼らは日常的にドンガン地下帝国の天才発明家キュルリンから「密輸した兵器のテスト稼働(という名の畑の害獣駆除)」を任されている、戦闘のプロフェッショナルなのだ。

「ふふっ。皆さん、準備はいいですか?」

 キャルル村長が、ふわりと白うさ耳を揺らしながら、狂暴な魔獣たちに向かってにっこりと微笑んだ。

 その瞳の奥には、恐怖など微塵もない。あるのは純粋な『主婦の計算』だけだ。

「最近、おでんの消費が激しくてお肉のストックが足りなかったんですよねぇ。あんなにたくさんのお肉(魔獣)が、向こうから新鮮な状態で走ってきてくれるなんて……神様に感謝ですわ!」

 ワイズはモニターの前で「俺はそんなもん送った覚えはねぇぇぇ!!」と頭を抱えたが、もう遅い。

「それじゃあ皆さん! 今日のおでんの具材、残さず収穫しますよー! ……魔導対空砲、一斉掃射ぁぁっ!!」

 ドォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

 ポポロ村の畑から、太陽すら霞むほどの極太の魔力レーザーと、無数の誘導弾が空へ向かって撃ち放たれた。

『ギ、ギャアアアアッ!?』

 空を覆っていたワイバーンの編隊が、悲鳴を上げる間もなく、対空魔砲の直撃を受けて次々と「綺麗なローストチキン」となって墜落していく。

「次は陸だべ! オークどもに自爆ドローンを突っ込ませろ!」

「ロックバイソンの足元に魔導地雷展開! 肉を傷つけないように足を狙うべ!」

 チュドォォォン! ズドガァァァァァン!!

 ワイズが「強制狂化バフ」をかけて暴走させたはずの恐るべき魔獣たちは、村の境界線に指一本触れることすらできず、圧倒的な弾幕の前に、文字通り「お肉のブロック」へと解体されていった。

「あーっ、おじさん! バズーカの火力高すぎですよ! お肉が焦げちゃったら、おでんの出汁が濁るじゃないですか!」

「わ、わりぃ村長! 次は冷凍弾頭(魔導)で締めるべ!」

 響き渡るのは、絶望の悲鳴ではない。

 大漁の喜びに沸く、農村ののどかな「収穫祭」の歓声であった。

 ◇ ◇ ◇

「ウソだろ……」

 天界のオフィス。

 ワイズは、完全に沈黙した魔獣の群れと、軽トラ(タローマン製)にワイバーンの肉をホクホク顔で積み込んでいる村人たちを、虚ろな目で見つめていた。

「俺の……俺の無限予算で強化した狂暴魔獣五百体が……わずか三分で……『今日のおでんの具』になっただと……?」

 被害者ゼロ。家屋の損壊ゼロ。

 むしろ、村の食料備蓄が潤い、村人たちは満面の笑みでハイタッチを交わしている。

「これじゃあ……悲劇でもなんでもない! ただの『村おこし』の密着ドキュメンタリーじゃないか!!」

 ワイズの完璧な「ざまぁスキーム」は、ポポロ村の常軌を逸した重武装の前に、開始わずか三分で完全に粉砕されたのであった。

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