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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 2

炎上神のヤラセ配信 vs 株式会社・九条清掃のコンプライアンス

第2話:悪役が不在バグ!? 炎上神、魔王軍の平和すぎる日常に絶望する

 神界セレスティアの一角にある、ワイズ専用の豪奢なプライベートオフィス。

 無数のホログラムモニターが浮かぶ空間で、炎上神ワイズは本革のオフィスチェアに深く腰掛け、専用のノートPC(※エンジェルすまーとふぉんの上位互換・無限予算機能付き)のキーボードをカタカタと弾いていた。

「さてと。あの無能な老害オリンたちが会議でダラダラしている間に、俺はスマートに数字(PV)を稼ぐとしますか」

 傍らに置いたマイタンブラーから、オーガニック豆の特製カプチーノを一口啜る。

「ゴッドチューブのアルゴリズムにおいて、最も効率よく再生数とスパチャ(信仰心)を稼げるのは『復讐・ざまぁ系』だ。理不尽にすべてを奪われた主人公が、圧倒的なチート能力で悪を惨殺する。……このカタルシスこそが、バカな視聴者(人間)どもを熱狂させる最強のコンテンツ(スキーム)だからね」

 ワイズはニヤリと悪辣な笑みを浮かべた。

「そのためには、まず残酷で救いようのない『悪役』が必要だ。平和な村を嬉々として焼き払い、主人公に絶望を植え付けるヘイトタンクがね。……となれば、適任はやはり『アバロン魔皇国』の魔族ども一択でしょ」

 ワイズはPCの画面をフリックし、アバロン魔皇国のトップ層の監視カメラ(ステータス画面)を一斉に展開した。

 残虐非道な魔王軍。血湧き肉躍る殺戮の光景を期待してモニターを見たワイズだったが。

「……ん?」

 数秒後。

 ワイズは、PCの画面に顔を擦り付けるようにしてフリーズした。

「は……? なんだこれ」

 まず、魔皇国の頂点に立つ絶対的な恐怖の象徴、魔王ラスティア。

 彼女の現在地は、あろうことか『地球・日本の福岡県』。それも、巨大なライブハウスの最前列で、手作りの推しうちわとペンライトを振り乱しながら絶叫していた。

『キャアアアアッ! 月人くぅぅぅん! こっち向いてぇぇぇ! あああっ、尊い! 国庫の予算(十億円)を横領して遠征してきた甲斐があったわァァァ!』

「…………福岡!? なんで異世界の魔王が、地球のアイドル(朝倉月人)のオタ活してんの!? 次元超えて何やってんだあのババァ!」

 ワイズの完璧なビジネススマイルがピクッと引きつった。

 気を取り直し、別のモニターを開く。魔王がダメなら、残虐な魔将軍たちがいるはずだ。

 魔族穏健派の貴公子、ルーベンス。

『あーっ! クソッ、ルナミス帝国第4レース、大穴のジオ・リザードがコケやがった! 俺の金貨がぁぁっ! おいオヤジ、イモッカ(芋酒)のおかわりと、焼き餃子追加だ!』

「競馬場で赤ペン耳に挟んで管巻いてる!? ただの休日のギャンブルおじさんじゃねえか!」

 ならば、炎魔将軍グレンはどうだ。炎を自在に操る、熱血の放火魔!

『ふぅ……。本日の経費精算書類、すべてハンコを押し終えました。やはり事務仕事は心が落ち着く。平和が一番ですな』

「なんでデスクワークしてんだよ! 村を焼けよ! お前の肩書き『炎魔』だろうが!」

 冷酷無比な元氷魔将軍スアイ! 彼女こそ、絶対零度の吹雪で村人を氷漬けにする残虐な……。

『はいはーい、ポポロ村スキー場へようこそ! タローマン製のオーバーオール、動きやすくて最高ですわね! あ、そこのドワーフさん! サウナの薪割り終わったら、おでん食べましょう!』

「だからなんだよこのスローライフは!! ビキニアーマーはどうした!? なんでガチキャンパー農業女子にジョブチェンジしてんだよ!!」

 ワイズはキーボードを叩き割らんばかりの勢いで、次々とウィンドウを切り替えた。

 最後に表示されたのは、見慣れぬ巨漢の相撲取りだった。

『ごっつぁんドス! 今日の塩ちゃんこ鍋は、ピラダイの出汁が効いてて最高ドスよ〜!』

「誰だよダストンって!? 土魔将軍ドスンと雷魔将軍サンダはどこ行った!? なんで合体してちゃんこ屋開いてんだよ!!」

 バンッ!!

 ワイズは思わず、特注のデスクを両手で叩きつけた。

 モニターの中のアバロン魔皇国は、誰一人として「邪悪な侵略行為」など行っていなかった。オタ活、競馬、事務仕事、スキー場経営、ちゃんこ鍋。

 彼らはただ、それぞれの趣味を謳歌し、アナステシア世界の経済をブン回しているだけの「超・優良市民」と化していたのだ。

「ふざけんな……! これじゃあ、俺の描いた『ざまぁスキーム』が根底から崩壊するじゃないか!」

 ワイズは伊達メガネを外し、頭を抱えた。

 悪役がいなければ、悲劇は生まれない。悲劇が生まれなければ、復讐のカタルシス(PV)は稼げない。

 カグヤの「物語のないざまぁなど三流」という言葉が、脳裏をよぎって腹を立てる。

「……いいだろう。既存のリソース(魔王軍)が使えないなら……俺が『新規プロジェクト』として、イチから悪役ヘイト創造プロデュースしてやる!」

 ワイズは再びキーボードに向かい、無限の予算ブラックカードをゴッドチューブの裏アカウントに接続した。

「金と名誉に目が眩んだ『クズの偽勇者パーティ』を雇い……暴走させた『はぐれ魔獣群』をけしかける。ターゲットは……そうだな。三国の中立地帯で、防衛力が手薄そうな『ポポロ村』。あそこを血の海に沈めて、最高の悲劇ヤラセを配信してやるよ……!」

 PVの亡者となった炎上神の魔の手が、平和なスローライフ村(※最強の軍事要塞)であるポポロ村へと、静かに伸びようとしていた。

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