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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 4

王都からの依頼(出張清掃)。報酬は『特売日の整理券』

「王都を救う……? どういうことだ?」

 俺はフロアワイパーを壁に立てかけ、白ブリーフ姿で正座しているアストル団長を見下ろした。

「はっ……。お恥ずかしい話ですが、現在、我がレオンハート王国の聖都の地下水道に、人々の悪意や穢れが凝縮した『巨大ヘドロスライム』が巣食っているのです」

 アストルが、真痛な面持ちで語り出した。

「我らの神聖魔法で浄化を試みたのですが……奴はあまりにも『物理的に』汚く、臭すぎました。聖騎士たちが近づくだけで悪臭で気絶し、剣を突き立てればドロドロのヘドロが顔に飛び散る。……清らかなる我々の聖属性は、あの圧倒的な『不衛生』の前に敗れ去ったのです」

「ただの泥汚れにビビって掃除(討伐)をサボっただけじゃないか。情けない騎士団だな」

「ぐっ……おっしゃる通りです……!」

 俺が呆れてため息をつくと、アストルはさらに深く頭を下げた。

「あの巨大ヘドロを放置すれば、いずれ地下水道から溢れ出し、王都全体が悪臭と病魔に飲み込まれてしまいます。どうか、聖者様のその比類なき『浄化(解体)の御力』で、あの汚物を一掃してはいただけないでしょうか!」

「ふむ……」

 俺は腕を組み、出張所のカレンダーをチラリと見た。

 王都までの出張清掃。巨大な地下水道のヘドロ除去となれば、かなりの重労働だ。それに、ポポロ村での粗大ゴミ回収(ルナミス帝国の兵器)で、当面の生活費(金貨)は十分に稼いでいる。

「悪いが、今は間に合ってる。そんな遠くまでタダ働きに行くほど、お人好しじゃないんでね」

「そ、そこを曲げてどうか! もちろん、報酬は王家の国庫から金貨一万枚でも十万枚でも――」

「金じゃないんだよ」

 俺はピシャリと言い放った。

「金貨を山ほど積まれたって、使い道がなきゃ意味がない。俺は日々、美味くて健康的なメシを作って、こいつら(従業員)に食わせるのが一番の喜びなんだ。ただの金じゃ、俺の心は動かないぜ」

「ああっ、なんという無欲なる聖者様……! 黄金の輝きすら、この方の前では石ころと同義だというのか!」

 アストルが勝手に感動して涙を流しているが、俺はただ「田舎の村だと高級食材が買えないから金を持て余している」だけである。

「くっ……黄金が通じぬとなれば、我々にはもう、聖者様にお渡しできるような価値のある物など……」

 アストルが絶望しかけた、その時だった。

「だ、団長! アレがあります! 出発前、国王陛下より直々に賜った、王族の証とも言える『究極の宝具チケット』が!」

「なっ……アレをか!? しかし、アレは王族や一部の大貴族にしか許されない、奇跡の恩恵だぞ!」

 後ろで縮こまっていた部下の言葉に、アストルはハッとし、脱ぎ捨てられた鎧のポケットから、一枚の『黄金に輝くカード』を震える手で取り出した。

「聖者様……。これこそが、我が王国が誇る最高の恩恵。王都の中心にそびえ立つ、王室御用達の超高級スーパーマーケット『ロイヤル・エデン』の……」

 アストルは、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「『特売日・全品半額優先整理券(VIPパス)』にございます!」

 ――ピキィィィィィィィンッ!!!!

 その言葉を聞いた瞬間。

 俺の脳内に、雷のような衝撃が走った。

「なっ……なんだと……!?」

「こ、この整理券があれば、特売日に並ぶ平民たちを飛び越え、最優先で店に入ることができます! 最高級の『霜降り飛竜肉』も、幻の『黄金キャベツ』も、すべて……すべて半額で買い占めることができるのです!!」

「半額……だと……!?」

 俺のオカン・センサーが、かつてないほどの激しいアラートを鳴らし始めた。

 超高級スーパーの、特売日。

 しかも、行列に並ばず、すべての高級食材を半額で手に入れられる優先券(VIPパス)!!

 主婦オカンにとって、これほど魅力的な響きが、この世のどこに存在するというのか!?

「しゃ、社長!? なんか社長から、ものすごい闘気オーラが噴き出してますわ!?」

「ひぃぃ! 目が! 九条さんの目が血走ってますぅ!」

 リーザとリリスが、俺から放たれる『買い物狂バーサーカー』のプレッシャーに怯えて抱き合っている。

「おい……白ブリーフの団長」

「は、ははっ!」

「その特売日ってのは……いつだ?」

 俺が地を這うような声で尋ねると、アストルは怯えながら答えた。

「本日の……夕刻、太陽が沈むタイムセールにございます。あと数時間後には……」

「なんだとォォォォォォッ!!??」

 俺の怒号が、出張所の窓ガラスをビリビリと震わせた。

「特売日が今日!? こんな所で油を売ってる場合じゃないだろうが!! あと数時間で売り切れるぞ!! 急ぐぞリリス、リーザ! エコバッグと保冷剤を持て! 王都の地下水道ヘドロを秒で終わらせて、スーパーに殴り込みをかけるぞォォォッ!!」

「「は、はいぃぃぃぃぃっ!!」」

 俺はエプロンをなびかせ、掃除道具一式が入ったバケツを引っ掴んだ。

「お、おおお……! 我らの願い(?)が通じた! 聖者様が、悪を討つために立ち上がってくださったぞォォォッ!!」

「「「うおおおおおッ!!」」」

 パンツ一丁の聖騎士たちが歓喜の涙を流して抱き合っている。

 こうして、「王都の平和」などという些細な問題は完全に置き去りにされ。

 ただひたすらに『半額の霜降り肉』をゲットするため、最強のオカン清掃員による王都への爆速出張清掃が幕を開けたのであった!

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