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最強高校生ゲーマー、現実と異世界を彷徨う  作者: マーサン
第六章 訪問者編(中編)
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6-14 三美神《ASI》の父

前回の続きになります。

次世代AI達を初期段階から開発した人と出会う回となっています。

 まさか、ミネルバ達三人を開発した男が来店してきたなんて想定外の巧実。

 当然、香苗や彩も目を丸くして驚くばかりで言葉を失うばかり。

 唯一、重信だけは冷静な態度で訪れた男を見ている。

「やはり、お主が開発していたのか。見た目は、気弱な男と思っていたが」

 と重信が言うと、向かい合わせの男は少し照れていた。

 そんな中、向かい合わせの男が誰なのか名を知らない巧実は質問してくる。

「失礼ですが、お名前はっ?」

 すると、掛けている眼鏡の位置を整え男が軽く会釈をすると名乗る。

「わたくし、小早川《こばやかわ》金秀《かねひで》と申します。今は、研究員として最先端情報工学研究機構に所属しています」

 なんと、現役の研究員が店に訪れてくるなんて予想すらしていなかった巧実。

 同時に、金秀がミネルバ達ASI三人の開発に深く関わった人達の一人。

 まさかの開発者本人の登場に驚く巧実は、金秀の容姿をじっくり観察する。

 鳥の巣を乗せたようなボサボサの髪、生気が抜け疲れ切った顔、背丈が高いにも拘わらずガリガリに痩せ細った体付き。

 やはり、研究の仕事に従事する者は想像以上に過酷だと察する巧実。

「わたくしの娘の一人、ミネルバがご迷惑おかけ致し申し訳ありません。まさか、行方不明と思っていたら現実世界に迷い込んでいたなんて」

 と金秀が言って深々と頭を下げる。

 深々と頭を下げる金秀を不憫に思ったのか、重信は労うように声を掛ける。

「とにかく、頭を上げて下さい。小早川さん、ここに来たのは何か話があるからじゃないのかね。ここは、お互い顔を見合わせて話したらどうじゃ」

 すると、金秀は恐縮しながらも恐る恐る頭を上げる。

「小早川さん、ミネルバの居場所を知ったのはユーノとクレイアがっ?」

 と巧実は気になって質問すると、金秀はゆっくり頷いて証言する。

「はいっ、ユーノとクレイアから聞いて最初は驚きました」

 やはり、ユーノとクレイアの二人が開発者の一人である金秀に情報を提供していた。

 開発者本人であれば最善な手段があると思った巧実は、

「実は、ユーノとクレイアから『ミネルバをネットの世界に連れ戻して欲しい』と」

 と言い伝えミネルバを本来いる世界へ戻すため協力を求めた。

 ところが、金秀は険しい顔で難色を示す。

 まさか、開発者本人の一人である金秀が難色を示すなんて巧実だけでなく誰もが想定外。

「何故ですかっ? ミネルバを戻せば、バックアップを使用せず復活できるのにっ!」

 と巧実は訴え詰め寄るが、難色を示す金秀にも事情があると察した重信が宥める。

「巧実、落ち着きなさい。どうやら、そちら側にも事情がありそうじゃな」

 と言って重信が巧実を宥めると、難色を示す金秀が重い口を開く。

「確かに、ミネルバを発見したことは嬉しいです。しかし、現段階で現実世界から戻す手段がありません」

 金秀の重い一言を聞いた瞬間、居合わせた誰もが騒然となる。

 まさか、ミネルバを本来いるネット世界に戻すことが出来ないと。

 これには、研究者なりの言い分があった。

「まず、このような不可解な現象の原因を究明する必要があります。それから出ないと、我々が動くことはありません」

 と金秀が言うと、納得がいかない巧実は思わず反論する。

「簡単なことじゃないですかっ! ミネルバを天空に浮かぶ裂け目に運ぶことだけじゃないですかっ! 何で、何で研究者の正論みたいなことを言い出すんですかっ!」

「巧実っ、少し冷静になれっ! もしかしたら、彼なりの言い分があるのじゃろう。研究者でなく、彼個人の言い分が」

 と重信が言って、感情的な巧実を宥めてくる。

 それでも、巧実は必要以上に金秀を責め詰めようとする。

 ところが握り拳を震える金秀の目に溜まる涙を見た瞬間、巧実の怒りが不思議と収まり何か言いたいことがあると察し耳を傾けることにした。

「もし、この事が研究機関の誰もが知られてしまったらミネルバを研究材料として隔離されるでしょう。わたくし個人、誰にも知られることなくミネルバを戻したいです」

 と深刻に言い出す金秀を見た瞬間、非情な研究者でなく人としての感情を垣間見た。

 まるで、我が子を心配に思う親のように。

 金秀の言い分を聞いたミネルバは、

「間違いなく、現実世界にいる私が研究機関に知れ渡ったら研究材料として扱われます。そうなれば、ネットの世界に戻るチャンスを完全に失うでしょう」

 と言って自分の分析した結果を言い出す。

 ミネルバの言い分を聞いた巧実は、ショックの余りに言葉を失う。

 だが、それ以上にミネルバは自分の体験した上で自分が分析した不安を言い出す。

「偶然とは故、私もセキュリティーと同様に現実世界から出てきたプログラム。いくら複雑なコードでも、現実世界で実体を維持できる制限時間が確実にあります。もし、研究材料として長時間隔離されたら確実に私は消滅《ロスト》します」

「そっ、そんな……」

 と巧実が思わず言ってショックを受けると、彩や香苗も同様にショックで言葉を失う。

 下手すれば、自分達の知っているミネルバがこの世から消えるのでは。

 それでも、重信だけは意外と冷静だった。

「ところで、ここに来たのは他にもありそうではないのかなっ? 話の腰を折るかもしれぬが、ここは腹を割ってワシに話してくれぬか。何故、将来を約束された研究機関を去りたい理由を」

 と重信が言い出した瞬間、金秀が慌てふためくように隠そうとする。

 そのとき、ミネルバが割り込むように居合わせた人達に証言した。

「マスター、上司や同僚から不当な扱いを受けているのを見たことがあります」

「ミネルバ、ここで話すところではっ!」

 と言って制止する金秀だが、重信の耳に入ってしまっては収まることはなかった。

「やはり、会社に面接を受けたときから何か恐怖に震える顔をして追ったからな。ミネルバ、ワシ達に分かるよう話なさい。この男が、研究機関でどのような扱いを受けたのかを」

 と重信が言って指示を与えると、ミネルバは包み隠すことなく研究機関での金秀について証言した。

「これまで、マスターは参加を拒否した宴会を強制参加や無謀な資料制作及び私達のメンテナンスなどで残業を強いられていました」

「小早川さん、ミネルバの証言は間違いないかっ?」

 と言って重信が問い掛けると、諦めたような表情で金秀が頷きASI開発プロジェクトが発足した当初から現在に至るまで出来事を正直に話した。

「ユーノ、クレイア、ミネルバのASI開発プロジェクト初期のメンバーは皆協力的で理解のある人達でした……」

 ……横暴な態度を取る人もいなければ嫌なことを強制する人もなく、困っていることがあれば自ら協力をする人達ばかりで仕事しやすい環境でした。

 ところが、完成直後にメンバー変更が悪夢のような地獄の始まり。

 わたくし以外のメンバーは別のプロジェクトに移動となり、後任のリーダーが如何にも体育会系の高圧的で面倒なことは全て他人任せで手柄は全部横取りする人で……。

 他のメンバーも後任のリーダーと同様の体育会系の人達で、困っているときは協力しないサボり魔で後任のリーダーのご機嫌取りばかり。

 結局、彼女達のメンテナンスや企画関係の立案は全てわたくしが……。

 リーダーや同僚は、計画書などの書類に目を通しているのか否か定かでないか興味を示すことなく空返事するのみで名を上げることばかり。

 拒否した宴会を強制参加だけでなく、全く飲めない酒を強要され病院通いの日々。

 唯一、企画が通ったのがASIのモデルを応募のみ。

 書類などの準備関係や細かな作業関係は全てわたくし一人で、他はオーディションの審査とスキャンニング作業に協力するのみ。

 なんとかして同僚に協力を求めても、「他の仕事があるから」とか「やり方が分からないから」とか言って全く協力して貰えず……。

 このときわたくしが悟ったのは、今のリーダーや同僚は自分達の出世や道楽以外は全く関心がないと……。

 このままでは自分をダメにすると思って暇を見ては再就職の面接を受けましたが、先日の宇喜多さん達が引き起こした騒動の影響でどこも採用されず……。

「……結局、今のリーダー達の小間使いを強いられる毎日です……」

 と暗い顔をして事情を話し終えた金秀に、香苗が怒って不満を爆発する。

「それって、パワハラじゃないっ! この人、散々苦労しているというのにっ! もし、あなたの上司名義で私の店に予約が入ったら断固お断りするわよっ!」

 香苗の拒否宣言を聞いた巧実と彩は、何も言わず頷いて同感する。

「だから、わたくしからお願いがあります。どうか、どうか、確実にネット世界へ戻せる手立てが見つかるまでミネルバをかくまって下さいっ!」

 と言って金秀は立ち上がると、死に物狂いで急に土間に座り込み土下座をして懇願する。

 研究などの仕事を終えたばかりで疲れ切っている体に鞭を打って。

 しかも、我が身よりも完成させたミネルバを我が子のように。

 重信は、土下座をして懇願する金秀の手を取って、

「とにかく、頭を上げなさい。ワシやここにいる人達、あなたの気持ちを理解している。ワシも、ミネルバの保護を続けるつもりじゃ」

 と言って巧実と香苗と彩の三人に目を向けながら賛同を求める。

「ジッチャン、乗りかかった船だ。解決するまで付き合うよ」

 と巧実が言って気にする素振りがなければ、彩も続けて賛同する旨を言い伝える。

「ボクだって、第一発見者として最後まで責任取るよ」

 さらに、香苗も胸を張って巧実を自慢する。

「心配は無用よ。だって、ゴールデンウィークで起きた事件の解決に貢献した私の息子よ。大船に乗って安心して」

「かっ、母さん……」

 と思わず言って恥ずかしがる巧実に、重信と彩と香苗が笑う。

「あっ、有り難うございますっ! 私のためにっ、ミネルバのためにっ!」

 と言って、再び深々と土下座する金秀。

「とっ、とにかく、頭を上げなさい。小早川さん」

 と重信が言って、土下座する金秀に頭を上げさせる。

 そんな中、ミネルバの口から新たなトラブルを訴える。

「皆様、私が使用しているパソコン。使用途中、突然ブラックアウトしたのですが……」

 ミネルバの発言が、新たなピンチの招く前触れを告げようとしていた……。

ご覧いただき有り難うございます。

次回は今週の土曜日の予定です。

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