6-13 朝のニュースにて
前回の続きになります。
追跡者達の追跡から偶然逃げ延びた翌朝のニュースから始まる回となります。
翌朝、リビングに置いてあるテレビからニュースが放送される。
「昨夜、確保した不審者を護送中にパトカー内で失踪する不可解な事件が発生しました。しかも、パトカー内で黒装束が消滅する様子が車内カメラに……」
そのニュースを聞いた瞬間、居合わせた誰もが初夏を迎えたばかりの中で異様な悪寒を肌で感じ目を丸くして驚愕する。
まさか、黒装束姿のセキュリティーの一体が警察に捕まるなんて想定外。
しかも、黒装束姿のセキュリティーが消滅する様子がバッチリと撮影されていた。
その上、追い打ちを掛けるようにテレビに出ている宗明が証言する様子を目に入った巧実は変な頭痛に襲われる。
「余計な面倒ごとを……。吉良のヤツ……」
と呟く巧実は、苦虫を噛み締めたような顔をして悔しがる。
悔しそうな顔をする巧実を見た瞬間、気持ちを察した香苗は内なる怒りを宥めようと声を掛けてくる。
「悔しい気持ち私も痛いほど分かるわ。それより、ご飯にしましょう」
だが、歯痒い思いをする巧実にとって朝食を取る余裕がなかった。
そんな中、重信が重苦しい表情でリビングに姿を現す。
「新聞で見たぞ……。まさか、ここまで大事に発展するとは……」
と重信が重苦しい表情で言い出した瞬間、爽やかな朝食の風景が重苦しく感じてくる。
重苦しい表情の重信を見た瞬間、場の空気を変えるポジティブな香苗でさえ聞かずとも分かるくらい深刻な状況と察し言葉を失う。
その後、朝食を取る気分を完全に失った巧実は自室に戻った。
自室に戻る巧実、扉を開けたら彩が待ち受けてきた。
「彩っ、いい加減に玄関から上がってこいと何度も……」
と言って巧実が注意するが、彩の表情は深刻だった。
「タク兄っ、ニュース見たよ。ボク……」
「やはり見たのか、彩……」
と言って暗い顔をする巧実に、深刻な表情の彩の口から伝えたいことを言い出す。
「会長達、昨晩の出来事を知りたいからタク兄のところへ来るって」
彩の伝達事項を聞いた瞬間、巧実は慌てふためき部屋を片付ける。
「ちょ、チョット待てっ! 何で俺のところへっ? 他にいいところがっ!」
と巧実が不満を言い出すが、時すでに遅く窓から早希の声が元気よく聞こえてくる。
「ちーすっ! 遊びに来たよ、巧実っちっ!」
巧実は恐る恐る窓から見下ろすと、紬久美と早希と未琴の三人が揃って訪問してきた。
困った表情の巧実は、窓から入ってきた彩を見て何かを確信する。
「彩、呼んだな……。会長達を……」
と巧実が問い質したら、彩は笑顔で頷いて返答する。
「やはり、昨晩で遭った出来事は共有しなきゃ」
こうして、お邪魔する紬久美と早希と未琴の三人は巧実の部屋を見渡す。
「以外と広い部屋ね。なんか、高校生らしくない本があるけど」
と言って紬久美は、巧実の部屋にある本棚を眺める。
「元は、親父の仕事部屋だからね。今は、個人の事務所が近くに出来たから俺が占拠した」
と巧実が淡々と答えると、重信とミネルバが姿を現す。
「勝手にお邪魔する。早速だが、昨晩の出来事を聞かせてくれ」
と重信が言って、巧実の自室の中央にあぐらをかく。
すると、紬久美や女子達も巧実を取り囲むように座り込み静かに耳を傾ける。
巧実は自室の机にある椅子に座ると、耳を傾ける紬久美や女子達に加え重信やミネルバに昨晩起きた出来事を報告する。
ミネルバが裂け目に気か付いてアップデートを実行していたこと、裂け目から黒装束姿のセキュリティーが現実世界に降り立ちミネルバを必要以上に狙って追い掛けたこと。
そして、黒装束姿のセキュリティーがタイムオーバーで消滅した様子を巧実が語る。
そのとき、ミネルバが巧実の報告を補足する形で黒装束姿のセキュリティーが現実世界で実体を維持できるタイムリミットについて報告する。
「彼ら四体が実体を維持できたのは二十八分と四十二秒。ブロックやアイテムの類いとは違い、プログラムコードが複雑だったことが長時間維持できたと分析します」
巧実が昨晩の出来事を話し終えると、静かに耳を傾ける重信に確認のために質問する。
「ジッチャン、あの黒装束が会社のセキュリティーで間違いないっ?」
すると、重信は静かに頷き思い当たる原因を言い述べる。
「恐らく、ミネルバ達ASIを不正プログラムと勘違いしたのじゃろう」
まさか、黒装束の正体が会社のセキュリティーだと改めて聞いて驚きを隠せない巧実。
そんな中、ミネルバが昨晩から気になっていたことを巧実に質問してきた。
「たしか、お兄様がいると聞きましたが……。どのような経緯でっ?」
その質問を聞いて巧実が答えようとすると、なぜか重信が割り込む形で話し出した。
「手っ取り早く話すと、巧実が産まれる五年前に勝也と香苗が駆け落ちして誕生したのが長男の一忠じゃ」
「その三年後、親父と母さんが結婚して間もなく誕生したのが俺」
と巧実が言って、割り込んできた重信から奪う形で話す。
まさか、巧実の父と母が駆け落ちしたなんて居合わせた誰もが驚く。
だが、彩が巧実のところへ勉強を教えに来る理由が何故か分からない。
「脳筋バカだから、カズ兄。だから、勉強は真面なタク兄にいつも教えて貰っているわけ」
と彩が理由を言い述べたら、未琴が思い当たる節を言い出す。
「本多さんって、先日の中間テストはそこそこ良かった方ですよね」
未琴の証言を聞いた瞬間、早希も納得した表情で証言する。
「確かに、進路アンケート白紙でいつも提出する男が成績いいのは不思議。おまけに、面倒くさがりなのに意外と器用で要領がいいのが謎よね」
未琴と早希の証言を聞いた瞬間、巧実は慌てふてめきで証言を止めようと必死になる。
だが、重信の耳に入って時すでに遅く巧実に問い詰める。
「巧実っ、まだ進路を決めかねているのかっ? バカでも兄の一忠は、小学の時から料理人になるとワシや家族に高々と宣言したというのにっ!」
「あっ、兄貴は手先が器用なのが唯一の取り柄だからっ! そっ、それに、『料理人になれば食いっぱぐれる心配はない』って兄貴が俺に理由を教えてくれたからっ!」
と巧実が苦し紛れに言うと、問い詰める重信をよそにクスクスと笑う女子達。
その後は、先日の件に関しての意見交換や彩の家庭教師役をする巧実。
気がつけば、夕方を迎え振り回される巧実はクタクタ。
紬久美達三人も帰宅した後は静寂が戻り、やっと一息する巧実は椅子に座って放心状態。
彩はというと、一階の店舗内で香苗が切り盛りしている店の手伝いをしている。
「勉強終わったばかりだというのに、陸上部で鍛えているのかタフだな。彩のヤツ」
と巧実は呟き、彩のタフさに驚くばかり。
そんな中、一階の店舗から香苗の声が聞こえてくる。
「巧実っ、ミネルバを連れて一階に降りてきてっ!」
「ジッチャンから注意されたからダメだっ! 絶対、店の手伝いさせないからっ!」
と巧実が言い返し拒否するが、香苗は必要異常に要求してくる。
「早く降りてきなさいっ! あなた達に用がある人が来ているからっ!」
仕方なく重い腰を上げた巧実は自室を出ると、ミネルバを呼び出すため彼女のいる部屋へと向かう。
ミネルバの部屋に訪れた巧実は、気遣うように声を掛け入室する。
「入るぞ、ミネルバ。母さんが呼んでいるから」
入室すると、ミネルバは困った表情でノートPCを見ている。
「巧実様、使用しているノートPCが急に電源が落ちました」
どうやら、支給したノートPCが使用中に電源が落ちてしまったようだ。
「これっ、ノートPCを使用している最中によくあるトラブルが起きたか……。参ったな、こうなると……」
と言って巧実が困り顔をするが、一階の店舗にいる香苗の呼ぶ声が激しくなる。
「巧実っ、早くミネルバ連れて降りてきなさいっ! お義父さんも待っているからっ!」
香苗の声を聞いた瞬間、ミネルバの手を取り一階の店舗へ駆け下りる巧実。
ミネルバも一階へ駆け下りるが、起動しなくなったノートPCを携える。
一階に駆け下りると、香苗の言うとおり重信と彩が一階の客席に腰を下ろして巧実とミネルバが来るのを待ち受けてきた。
対面する男を見た瞬間、ミネルバは驚きの余り思わず声が出る。
「まっ、マスターっ? どうして、ここに来たのですかっ?」
ミネルバの声を聞いた巧実は、
「こっ、この人が、ミネルバ達を開発した人っ?」
と言って目を丸くして何度もミネルバと来店してきた男を何度も見返す。
まさか、ミネルバ達を開発した男が来店してきたなんて……。
ご覧いただき有り難うございます。
次回は来週の火曜日の予定にしています。




