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最強高校生ゲーマー、現実と異世界を彷徨う  作者: マーサン
第六章 訪問者編(中編)
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6-12 消滅する追跡者

前回の続きになります。

新たに出現した追跡者達が何らかの原因で消滅する場面と翌朝のニュースで新たなトラブルに巻き込まれる予感がする回となります。

 思わぬ香苗の助け船、命拾いの巧実は後部座席で息を整える。

 同じように後部座席に腰を下ろすミネルバは、疑問に思うことがあり香苗に質問する。

「香苗様、どうやって私や巧実様の居場所をっ? しかも、車で正確にっ?」

 そんな中、巧実は気になって懐に忍ばせたスマホを取り出すと手帳型のスマホケースに自分の知らないカードが入っていたことに気がつく。

「母さんっ、俺の寝ている間にカード型のエアタグ入れんじゃねーっ!」

 と巧実が文句を言って、スマホケースからカード型のエアタグを取り出す。

 なんと、香苗は巧実が寝ている間にエアタグをスマホケースに忍ばせていたのだ。

 運転する香苗は、上機嫌で巧実達の居場所を的確に知ることの出来た種明かしをする。

「だって、巧実が変に偽って逃げ回るからじゃない。だから、首輪代わりに忍ばせたの」

「俺にプライベートはねーのかよっ! 仕返しだな、先日ジッチャンから怒られたことへの仕返しだなっ! 母さんっ!」

 と言って不満をぶつける巧実に、気にする素振りを見せず香苗は上機嫌で運転する。

「さてと、見知らぬストーカーが逃げ回る名目で軽くドライブよーっ!」

 と言って笑顔で運転する香苗を見た瞬間、巧実はトラウマが蘇り頭を抱え思わず喋る。

「母さん、ハンドル握ると豹変すること忘れてた……」

 こうして、香苗の運転する車は恐怖で顔が引き攣る巧実と不思議そうな顔をするミネルバを乗せて街中を走り回るのであった。

 三十分弱後、自宅に戻った巧実と香苗とミネルバの三人。

 気分スッキリの香苗とは対照的に、真っ青な顔で目眩に襲われる巧実。

 ところが、出入口前に立ち止まる二人の人影を見た瞬間、

「母さんっ、パイプ椅子っ! 早くっ!」

 と言って身の危険を感じた巧実は険しい顔に切り替わり香苗に要求する。

 黒い影から姿を現したのは、ミネルバを必要以上に付け狙う二体の謎多き黒装束。

 どうやら、宗明に足止めされた黒装束の二体がビルの上空から見下ろして巧実達の乗る軽自動車を追跡して特定したようだ。

 最初は何が何だか分からない香苗だが、険しい表情を見せる巧実を見たら駆け足で自宅に戻り店内にあったパイプ椅子を探す。

 その間、巧実はターゲットにされているミネルバを庇うように立ちはだかり険しい顔で黒装束の二体を牽制する。

 出来るだけミネルバを安全に自宅に戻すために、出来るだけ香苗が持ってきてくれるパイプ椅子を待つための時間稼ぎするために。

 数分後、香苗がパイプ椅子を二脚持ってくると巧実に一脚手渡す。

 受け取ったパイプ椅子を手にした巧実は、畳んだまま地面にバンっと勢いよく叩き付けて「いつでも殴るぞ」と言わせんばかりに二体の黒装束を牽制する。

 だが、相手は恐れという感情を全く持っていない謎の黒装束。

 一体の黒装束が怯えることなく歩み寄った瞬間、巧実は畳んだパイプ椅子で近寄る黒装束の頭をバシーンと思いっきり叩いた。

 地面に倒れ込む黒装束を見た巧実は、相手が人でなくても強い衝撃を受けたら立ち上がることはないと確信してミネルバを自宅へ誘導する。

 だが、強烈な衝撃を受けたはずの黒装束がゆっくり立ち上がり再び歩み寄ってくる。

「えっ、ウソだろ……。固いパイプ椅子でぶっ叩いたというのに……」

 と言って驚く巧実は、再び手にしたパイプ椅子で歩み寄る黒装束に振り下ろす。

 しかし、黒装束は振り下ろしてきたパイプ椅子を右手一本で受け止め回避されてしまう。

 不味いと思った巧実は振り解こうと必死に藻掻くが、黒装束はパイプ椅子ごと巧実を投げ飛ばしてしまう。

 自宅の壁に叩き付けられた巧実は、強い衝撃で糸の切れた人形のように体を自由に立ち上がることが出来ない。

「にっ、逃げろっ! ミネルバっ!」

 と巧実は痛みで苦しみながらも訴えるが、ミネルバは恐怖で腰を抜かし逃げることが立ち上がることすら出来ない。

 最早ダメかと思ったその時、二体の黒装束がピタリと突然立ち止まり動かなくなる。

 一体、何が起きているのか全く想像できない巧実。

「不正プログラム、確保ス……」

 とミネルバに歩み寄る黒装束の一体が言い残すと、波風に吹かれて崩れ去る砂の城のように体が崩壊。

「なっ、何がどうなってっ?」

 と言って驚く巧実は、残る一体の黒装束に目を向ける。

 残る黒装束も同様、風に吹かれて崩れ去る砂の城のように体が崩壊。

「もしかして、現実世界では体を維持できるタイムリミットがあるのかっ?」

 と巧実が言い出し、苦痛で顔を歪ませながらも目の前で起きた現象を推測する。

 そこへ、香苗がパイプ椅子を投げ捨て倒れる巧実のところへ駆け寄り声を掛ける。

「たっ、巧実っ! ケガはっ?」

「大丈夫……。それより、立ち上がるの手伝ってくれ……」

 と言って巧実は起き上がろうとするが、強い衝撃を受けたせいで体に力が入らない。

 香苗は、起き上がろうとする巧実をサポートして立ち上がらせる。

 香苗のサポートで立ち上がった巧実は、足を引きずりながらも恐怖に震えるミネルバのところへ歩み寄る。

「ゴメン、守りきれなくて……」

 と言って謝る巧実は、恐怖で腰が抜けたミネルバに手を差し伸べる。

 恐怖から解放されたミネルバは何度も首を横に振ると、

「二十八分と四十二秒……。恐らく、黒装束が現実世界で実体を維持できるタイムリミットのようです……」

 と言って差し伸べた巧実の手を取りゆっくりと立ち上がる。

「一体、何なの……? 彩ちゃんから話を聞いたけど、こんなに厄介な相手だなんて……」

 と香苗が言って、崩れ去るように消えようとする二体の黒装束を見ている。

 そこへ、会社帰りの重信がやって来て消えゆく黒装束を見た瞬間、

「こっ、これは、どういう事じゃ? 何故、会社のセキュリティーがここにっ?」

 と言って困惑した表情を隠せず動揺している。

 重信の言った『セキュリティー』を聞いた瞬間、

『かっ、会社のセキュリティーっ?』

 と巧実と香苗とミネルバの三人が声を揃えて驚きを隠せず困惑する。

 まさか、ミネルバを襲撃した謎の黒装束集団の正体が会社のセキュリティーだなんて。

「お義父さん、会社のセキュリティーが何故ミネルバを襲ったのっ?」

 と言って困惑する香苗が問い質したら、

「先日、宇喜多のバカ共が悪さした対策として導入したセキュリティーじゃ。恐らく、ミネルバを不正プログラムと勘違いしたのじゃろう」

 と重信が返答して崩れ去る黒装束達を見つめる。

「もしかして、過剰反応で正常な細胞ですら攻撃してしまうT細胞ってヤツっ?」

 と巧実が専門的なことを言うと、香苗がツッコミを入る。

「巧実っ、誰でも分からない専門的なこと言わないのっ! 出来れば、誰でも分かることを言いなさいっ!」

 そんな中、巧実の言いたいことが理解できる重信は香苗を宥める。

「巧実の言いたいことは何となく分かる伝わる。理論的には、それで間違いない」

 巧実は、消えゆく黒装束姿のセキュリティーを見ながら思わず口に出る。

「出来れば、こんなバケモノが再び裂け目から出現しないことを祈りたい」

「それは、私も同感だわ」

 と香苗が言って、巧実の気持ちに同情する。

 その後、黒装束姿のセキュリティーは何もなかったように消滅した。

 翌朝、鬼ごっこや強い衝撃などで苦痛に顔を歪ませてリビングに姿を現す巧実。

「巧実、今日は大人しくしなさい。いくら朝ご飯でも、今日は日曜日だから」

 と言って注意する香苗だが、ミネルバのことが気になって朝食に顔を出す巧実。

 ミネルバは、相変わらずノートPCを使って自分をアップデートしている最中。

「あんなに走り回ったのに、全く疲れていない。やはり、彼女がASIなのかな」

 と巧実が言って、別の意味でミネルバを羨望の眼差しを向ける。

 そんな中、テレビのニュースで驚くべき事件を目の当たりにする。

「昨夜、確保した不審者を護送中にパトカー内で失踪する不可解な事件が発生しました。しかも、パトカー内で黒装束が消滅する様子が車内カメラに……」

 そのニュースを聞いた瞬間、居合わせた誰もが初夏を迎えたばかりの中で異様な悪寒を肌で感じ目を丸くして驚愕する。

 まさか、ミネルバを捕まえようとしていた黒装束のセキュリティーが警察に捕まるなんて誰もが想定外。

 しかも、宗明が証人としてテレビに出ているのを見た巧実は変な頭痛に襲われる。

 黒装束姿のセキュリティーが現実世界に登場したことで、今回の事件で巧実は新たな展開が待ち受けているなんて……。

ご覧いただき有り難うございます。

次回は今週の土曜日の予定です。

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