6-3 生徒会室での報告会
前回の続きになります。
登校後の昼休み中に起きた出来事の回です。
昼休み、巧実は屋上にて購買部で購入した惣菜パンをかじりながら空を見上げる。
巧実の脳裏に不吉な予感がしたのか、空を見上げながら呪文のように呟く。
その呟く声が何言っているのか、本人ですら分からない状態で呆然としている。
そこへ、早希と未琴が心配そうに巧実の顔を覗いてくる。
「どうしたの、巧実っち? 変な宗教にでも入ったっ?」
と早希が声を掛けた瞬間、腰を抜かして驚く巧実は思わず問い質す。
「たっ、多賀谷っ? 立花っ? いっ、一体いつからっ?」
「キャアっ、本多さん驚かないで下さい。多賀谷さんと一緒に後をつけてきました」
と未琴が言って、巧実の驚く様を見て少し動揺する。
それに対して、巧実の腰を抜かして驚く様を見て「キャハハっ」と笑いながらも、
「巧実っち、何か隠し事するときは一人になる癖があるのよね。水臭いねぇーっ!」
と言って急に左隣に体育座りで座ってくる。
思わず逃げようとする巧実だが、未琴に両肩を押さえつけられて逃げることが出来ない。
「逃げないで下さい、本多さん。eスポーツ部の部員の一人として放置するわけにはいきません。観念して私達に話して下さい」
と未琴が強く言って、逃げようとする巧実を押さえつけ座らせる。
巧実を強引に座らせると、右隣に体育座りで座り込み腕組みして逃がそうとしない未琴。
それでも逃走する巧実だが、目で威圧する早希と未琴の二人に逃げることが出来ない。
「仕方ない、話すよ……。今朝の出来事を……」
と巧実が言って、観念する形で正直に話した。
それは、巧実の自宅で起きた今朝の出来事。
香苗がミネルバを仕向けて叩き起こされたこと、朝食での一騒動が起きたこと。
そして、自宅に残したミネルバのことが心配なことを。
「母さん、俺の知らないところで何をするのか怖くて……」
と巧実が肩を落として正直に話すと、早希と未琴の二人は顔を曇らせて同情する。
「それは、「心配するな」と言われても心配しますよね……」
と未琴が心配して言えば、
「授業中、上の空だと思えば腹の虫鳴って笑われたもんね……。巧実っちが、心配で集中できないのも仕方ないわ……」
と言って巧実の授業中の様子を思い返す早希。
頭を抱える巧実が、自分の母である香苗がとんでもないことをしていないか不安になって思わず口に出す。
「母さん、ミネルバに変なことさせないでくれ……」
深刻に悩む巧実を見た瞬間、同情して掛ける言葉を失う早希と未琴の二人。
そんな中、早希が足音で気配を察知してイヤそうな顔で思わず口に出す。
「この足音、間違いなくクズ明のヤツだ。こんなとき、一番面倒くさいヤツが」
姿を現したのは、早希の言うとおり宗明が三人の前に立つ。
宗明は不満そうな顔で立ち塞がると、
「本多っ、女子二人に囲まれてご気分がいいようですねぇ」
と嫌みを言って挑発してくる。
ところが、巧実は俯いたまま宗明の挑発に全く乗らず無言を貫く。
巧実の代わりに素早く立ち上がった早希が、不機嫌な宗明に突っかかる。
「あんたこそ何様っ? 文句でも言いたいの、巧実っちが気分が悪いというのにっ!」
「あぁ、言いたいこと沢山だよっ! 詰め寄られた挙げ句に、勝手に武器を大盾へ変更されて不満だらけだっ! 多賀谷っ、引っ込んでろっ!」
と言って宗明は我を忘れて暴言を吐く。
例え、相手が体格のいい男だろうがか弱い女だろうが容赦する気が無い宗明。
それでも、早希は嫌悪感で宗明を睨み付け今すぐにでも取っ組み合いをするのではないかと疑うくらい殺気を漲らせる。
このままでは不味いと思った巧実と未琴が立ち上がると、ケンカでも始めようとしている早希と宗明を止めようと動き出す。
そこへ、校内放送が流れてきた。
『本多巧実さん、多賀谷早希さん、立花未琴さん、至急生徒会室へ来て下さい。繰り返します、至急生徒会室へ来て下さい』
校内放送を聞いた瞬間、コロッと笑顔に変わった早希が巧実と未琴の手を繋ぎ、
「あっ、紬久美の呼び出しだっ! じゃあねーっ、クズ明の遊び相手はまた後でっ!」
と言って脱兎の如く立ち去って行く。
宗明は、「まだ終わっていない」と言わんばかりに後を追う。
ところが、屋上の鍵が突然掛けられ校舎に戻ることが出来ない。
どうやら、早希が校舎に戻る際に屋上の鍵を掛けたようだ。
「上手くいった。これで、時間稼ぎが出来る」
と言って笑みを浮かべる早希を見て、言葉には出ないが「抜け目ない」と言いそうな目で別の意味で恐怖を感じる巧実と未琴の二人。
こうして、生徒会室に姿を現した三人を待っていたのは生徒会長の紬久美である。
「時間が無いけど、状況を説明してくれるっ? 本多君」
と紬久美が言って、神妙な面持ちの巧実に状況報告を求める。
当然、巧実は早希と未琴にも話した今朝の騒動や家に残したミネルバの様子が心配なことを正直に話す。
そして、所属しているeスポーツ部の現状を話す巧実は、
「今も、電脳部組の女子三人とゲーム同好会組の男子四人がいがみ合っている。このままでは、部活どころじゃ……」
と言って肩を落として顔を曇らせる。
巧実から聞いた現状を聞いて顔を曇らせる紬久美は、
「せっかく、eスポーツ部を創設したというのにギズギスでは頭を抱えるのも無理はないわね。何か団結する切っ掛けがあれば、部活動らしくなるけど……」
と言って厳しい表情を見せる。
「とにかく、いがみ合っている元凶の吉良と井伊の二人を何とかしないと……」
と言って悩む巧実に、もう一つの問題を未琴が重苦しい表情で話し出す。
「井伊さん、何故か私を目の敵で見ているような……」
「確かに……。先日の中間テスト、立花が学年トップだったから悔しがっていたよな。井伊のヤツ……」
と言って思い返す巧実に、紬久美の口から井伊に関する事実を話す。
「実を言うと、井伊さん優良な成績の理由で高等部を特待生入学しているの。だから、学校の成績に関しては誰よりも人一倍拘っているの」
「だから、転校してきた立花にトップを奪われ奪還しようと躍起になっているのか……。せめて、良きライバル同士になってくれたら俺として好都合だけど……」
と言って納得する巧実は、eスポーツ部に新たな悩みの種が増えたと思う。
そんな中、話題をミネルバの件に戻す紬久美は巧実に命じる。
「中間テスト明け、部活運営の問題で今は疲れていると思うけど。学校が終わったら、急いで帰宅しなさい。本多君」
「そっ、それじゃ、部活はっ? 誰かが目を光らせないと、また部員同士で揉め事にっ?」
と言って不安そうな表情で訴える巧実に、紬久美が説得するように話し掛ける。
「部活が大事でも、体が壊れたら元も子もありません。それに、預けて貰っているミネルバさんの様子が気になります。今日のところは、部活を休止して気分転換しなさい」
それでも反論しようとする巧実だが、早希と未琴の二人が目で威圧してきたため仕方なく従うことにした。
「分かりました……。今日は、家に帰ってミネルバの様子を伺います……」
と巧実が申し訳なさそうな顔をすると、
「お互い様です。私も本多さんと同行します。お母さんの店の味が知りたくて」
と言って笑顔を見せる未琴に加え、
「寄っていこうかな、あーしっ! 昨日、もんじゃ焼き食べそびれたし」
と言って巧実の自宅に寄り道する口実にする早希。
そのとき、誰かの足音をいち早く察知した紬久美は強引に巧実をロッカーへ誘導する。
「本多君、ロッカーの中に隠れてっ! 絶対、喋ったり覗いたりしちゃダメっ!」
と紬久美に言われ、考える余裕もなくロッカーの中に隠れる巧実。
巧実がロッカーの中に隠れると、紬久美と早希と未琴の三人はアイキャッチで頷き慌ただしく何かを始める。
未琴が扉を勢いよく開けると、宗明とゲーム同好会が一斉に床に転がって入室する。
「きゃーっ、先生来て下さいっ! 覗きっ、覗きよーっ!」
と紬久美が叫んで、教師を呼び寄せる。
よく見ると、紬久美と早希と未琴の三人は着替えの振りを演出するために態と制服をはだけさせている。
紬久美の叫び声に反応した教師達が駆けつけると、床に転がり込んでいる宗明達四人を取り押さえる。
「違うっ、覗きじゃないっ! 僕達っ、本多に大事な用があってっ! それに、生徒会室に来たばかりでっ!」
と宗明が言って、取り押さえる教師に無実を訴える。
だがっ、早希が屋上での仕返しと言わんばかりに宗明達に濡れ衣を吹っ掛ける。
「ウソ仰いっ! あーし達の着替えをコッソリ覗いてました、クズ明達っ! この目でちゃんと見てますっ、あーしっ!」
さらに、泣きながら追い打ちを掛ける未琴。
「お父様以外に見られたことなかったのに……。私、お嫁に行けない……」
紬久美と早希と未琴の三人の証言を真に受けた教師達は、
「話は、職員室でじっくり聞かせて貰うっ! コイっ、お前達っ!」
と言って取り押さえた宗明とゲーム同好会を連行する。
それでも無実を訴える宗明達だが、教師達の耳に届くことなく職員室へと強制連行。
その様子を耳にした巧実は、目で口と目を塞ぎ念仏を唱えるように胸の内で言い続ける。
(絶対見ない、絶対声を出さない。絶対見ない、絶対声を出さない……)
紬久美がロッカーを開けても、巧実は恐怖で身を縮こませて目を瞑ったまま。
「大丈夫、目を開けていいわよ。本多君」
と紬久美に言われて恐る恐る目を開ける巧実だが、少し制服がはだけたまま堂々としている紬久美と早希と未琴の三人をまた瞬間に両手で目を覆い隠す。
「おっ、お願いっ! ふっ、服着てっ! 服っ!」
と真っ青な顔で訴える巧実だが、気に素振りを見せず笑う紬久美が言い出す。
「ここ程度、見られた内に入りません。そんなに驚かない、本多君」
早希も紬久美と同様、ケロッとした表情で気にせず笑いながら言う。
「キャハハっ! こう見えて体操部の一員よ。競技で慣れっこだから、この程度はっ!」
「本多さん、以外と可愛いところありますね」
と言って、恥ずかしながらもクスッと笑う未琴。
それでも、顔を背けて見ないように努力する巧実。
同時に、女が団結すれば自分でも想像できない力を発揮することを思い知らされた。。
その後、紬久美達女子三人に濡れ衣を着せられた宗明とゲーム同好会のメンバーは職員室で教師にコッテリ絞られたことは言うまでもなかった……。
ご覧いただき有り難うございます。
次回は来週の火曜日の予定にしています。




