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最強高校生ゲーマー、現実と異世界を彷徨う  作者: マーサン
第六章 訪問者編(中編)
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6-1 緊急事態

前章の続きになります。

消滅しようとする次世代AIを看病する主人公達の回から始まります。

「後二日の猶予か……。それまでに、ミネルバが本来いる世界に戻さなければ……」

 と呟く巧実は、自分の自宅の一室で安静に眠るミネルバを看取っている。

 巧実の背後には、今回の一件に関わった紬久美を始め彩や早希に加え未琴が心配そうな表情で看取っている。

「とりあえず、一時的に峠は越えたと思われます。しかし、ミネルバを本来いる世界に戻さなければ確実に消滅します……」

 と別の男性の声が、看取っている巧実達の背後で聞こえてくる。

 隣には三人の大人達、その二人は香苗と重信が深刻な表情で説明を受けている。

 どうやら、説明している男性はミネルバや他の二体のASIを開発した一人である小早川金秀本人。

「ミネルバが、これまで実態を保ち続けたのは膨大な情報量の賜でしょう」

 と深刻な表情をしている金秀の説明を聞いて、疑問に思った重信が質問を投げかける。

「もしかして、現実世界に落とされたブロックなどが数十秒程度で消滅したのは単なるプログラムと言いたいとでもっ?」

「間違いないでしょう。三十分程度の時間とは故、あの黒装束の忍者が実態を保てたのも、プログラムの情報量が一定量あったと思われます」

 と金秀が自分の見解を言い述べる表情は、額から冷や汗を流し焦っている。

「あの黒装束の忍者が実態を保てるのは、長くても三十分程度が限度……。なぜ、セキュリティープログラムの何体か失踪したのも理由が何となく……」

 とミネルバを看取る未琴が、深刻そうな表情を見せながら自分の見解を言い述べる。

 巧実も、未琴の見解に賛同する形で静かに頷く。

「幸いなことに、宗明とバカ連中が消えた黒装束の忍者探しに夢中になっている。この隙に、ミネルバを本来いるべき世界に戻さなければ……」

 と巧実が言って、深刻な表情を崩すことはなかった。

 ミネルバが本来いる場所はネット空間が広がる無限の世界、その入り口となるは巧実達がプレイしているゲームの世界にある事件の元凶となった地割れ。

 地割れが繋がっている場所は、彩がミネルバを発見した商業ビルの狭間にある上空に不自然と浮かぶ裂け目。

 だが、ミネルバを戻すためには幾つか問題が浮上する。

「でも、どうやってミネルバを本来いる世界へっ? あの商業ビルの狭間にある裂け目からミネルバを戻さなければいけないのよっ? そんなの、絶対無理じゃんっ!」

 と早希が言って、諦めたのか頭がパニックになっている。

 一つは、商業ビルの狭間にある裂け目の現状はどのようになっているのか。

「ビルの上空から見下ろしたけど、裂け目は全く見えなかった。どうやら、下から彼女を吊し上げる以外に手はなさそうね」

 と紬久美が言って、重苦しい表情を見せる。

 巧実も紬久美の言い分を尊重する形で、

「あの裂け目が、どれくらいの高さがあるかだ。俺の見立ては、商業ビルの高さからして三階から四階と見ているけど……。実際、どのくらいか測った方が良さそうだ」

 と言ってミネルバを看取りながら思った意見を仲間に伝える。

 すると、未琴が心配そうな顔で居合わせた仲間達に提案を持ち掛ける。

「私っ、お父様に話してみましょう。お父様の会社なら測量機が使えると思います」

「なるほど、立花さんの父親なら納得だわ。私のパパから通じて借りやすくなりそうね」

 と紬久美が言って、サポートを約束する。

 それでも、もう一つの問題が浮上する。

「でも、どれくらいの高さか判っても運ぶ手段が……。上からでは、裂け目が見えないでしょ。下からミネルバを運び出すとしても、どのような方法でっ?」

 と言って不安な表情の彩に、言いたいのが何か誰もが理解していた。

「分かります。一般的な脚立やハシゴでは、強風で倒れる危険性があります。それに、そのような脚立やハシゴは現実的に存在しません」

 と言って未琴が分析すれば、

「仮に、ゲームの世界でブロックを落として階段みたいにしても数十秒で消滅するでしょ。しかも、ランダムで消える。それって、無理ゲーじゃんっ!」

 と言って絶望を感じる早希。

 それ以前に立ちはだかる最大の問題が巧実の口から出る。

「それ以前に、今でも警察がバリケードなどを展開して封鎖されているけど……」

 その一言で誰もが肩を落とす。

 特に、早希のショックは大きく言葉すら出てこない。

 そんな、絶望感で肩を落とす早希を勇気づけるように紬久美が鼓舞する。

「まずは、最適な手段をみんなで考えましょう。ぼやいても、何も始まらないわ」

「会長に言い分、俺にも分かるぜ。ぼやいても始まらない、凹んでも解決しない。ここは、今回に一件に関わった俺達が一肌脱ぐしかなさそうだ」

 と巧実が言って、鼓舞する紬久美の肩を持つ。

 だが、もう一つ重大な問題を抱えていた。

「あの、黒装束の忍者軍団が妨害する恐れが……」

 と未琴が言って、不安そうな表情を見せる。

 それは、巧実を始め居合わせた仲間達が深刻な表情を見せる。

 もしかしたら、ミネルバを本来いるべき世界に戻す作業中に妨害される恐れがあった。

 そのとき、重信が不安そうな巧実達に、

「今回の一件は、ワシが良かれと思ってやったことが招いた不手際。ここは、ワシに任せてくれぬか」

 と言って元気づけるように提案を持ち掛けてきた。

「お義父さん、今言った事ってどういう事っ?」

 と言って驚く香苗に、顔を曇らせて重信はその理由を居合わせた仲間達に言う。

「宇喜多と愚か者二人が、スパイウェアを使って悪事を働いていたことが発覚したからのう。その対策として組み込んだヤツが、今回の騒動の元凶となっていることは間違いない」

「ジッチャン、具体的にどのような対策をっ?」

「一時的に、ゲーム内のセキュリティーを停止する。その間、お前達はミネルバの救出に当たってくれ」

「おじ様、その日取りが決まったら連絡します」

「お嬢様、それは助かる。だが、残された時間は少ないが今一番の踏ん張り時じゃ」

 と重信が言って勇気づけると、巧実や居合わせた仲間達が静かに頷く。

 そんな中、安静に眠るミネルバが目を覚ましゆっくりと体を起こす。

「ミネルバっ、今は無理をするなっ! 無理すれば、大切な情報量や電力を消費するっ!」

 と言って金秀が枕元に詰め寄ると、不安そうな表情を見せるミネルバが問い掛ける。

「やはり、戻らなければならないでしょうか? この世界で知り合った人達と別れなければいけないでしょうか?」

 ミネルバの問い掛けを聞いて、居合わせた仲間達の心が苦しみ出す。

 偶然とは故、ミネルバと出会って生活が変わった。

 楽しいこと、大変だったこと、関わった仲間達は走馬灯のように思い返し心が痛む。

 特に、同じ屋根で共に行動した巧実が誰よりも辛い思いをする。

 それでも、巧実は心を鬼にしてミネルバに打ち明ける。

「やはり、君は現実世界には存在してはいけない。もし、君が戻らなければユーノやクレイアが悲しむ。それ以上に、君が消滅したら悲しむ人がもっと増える」

 そのとき、巧実の背中が泣いていることに誰もが気づき悲しむミネルバを励ます。

「別れじゃないわ。例え戻っても、違う形で会えるでしょう。ゲームとか、ネットとか」

 と言って笑顔を見せる紬久美。

「ボク、タク兄の言う専門的な用語を全く分からないから戻っても教えて。ミネルバ」

 と言ってミネルバに教えを請う彩。

「大丈夫、あーし達が元いる世界に送ってあげるって。そんなに凹まない、凹まない」

 と言って自分の持ち味を生かして笑って励ます早希。

「私、あなたのような存在を知って勉強になりました。そして、楽しい未来が見えた気がします。また、何処かで会いたいです」

 と言って悲しむことなく笑顔を見せる未琴。

 誰もが勇気づける中、突然ミネルバが苦悶の表情で苦しみ出す。

「安静よ、とにかく安静っ! 絶対、スマホを話しちゃダメよっ!」

 と言って慌てふためく香苗に、苦しみながらもスマホを両手で強く握りしめるミネルバ。

 両手で胸に当てると、目映い光がミネルバを守るように包み込み髪が青白く発光する。

 しばらくして、ミネルバを包み込んだ目映い光が消え青白く光った髪が他の人と変わらぬ髪の色へと戻って行く。

 苦しみ出すミネルバに迫る消滅の危機に、

「やはり、ミネルバを本来の世界に戻すしか手がありません」

 と金秀が切羽詰まった表情で断言する。

 何故、このような展開が起きたのか?

 そして、巧実達のいる現実の世界に何が起きているのか?

 それは、ミネルバと出会ってから丁度一週間前にさかのぼる……。


ご覧いただき有り難うございます。

次回は来週の火曜日の予定にしています。

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