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最強高校生ゲーマー、現実と異世界を彷徨う  作者: マーサン
第五章 訪問者編(前編)
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58/72

5-10 追憶

この章の終わりになります。

家族会議が終わって就寝する主人公が悪夢にうなされる回になります。

 重信の計らいで居候となったミネルバ、空き部屋の清掃をするべく立ち去る香苗。

 相変わらず表情を変えないミネルバの顔を見る巧実は、出来れば誰にも知られることなく彼女の本来いる世界に戻ることが出来るのか不安になる。

「気負いするな、巧実。今度はワシ等がいる」

 と言って重信が励ますが、別の意味で不安要素があると思う巧実。

 一つは、母である香苗の秘密と言った事を平然に漏らす予測できない行動力。

(前回は警察の人に証明したから上手くいったけど、下手したらゴシップ誌の都合のいいターゲットにされるか精神が狂っている人に思われてしまうぞ。絶対っ!)

 もう一つは、紬久美や学校に通っている仲間達との協力関係。

(ある程度は和解したけど、会長に関しては今でも近寄りがたいオーラを感じる。意外と情報収集力のある早希と、頭の回転力のある未琴は即戦力になるとして……)

 と思う巧実は、足を引っ張りそうな心配事が頭に浮かべる。

(彩はスマホですら満足に扱えない上に、変な問題事を俺に持ってくることが……。他には、吉良が本物のバカなのに何故か悪知恵が超一級に働くからな……)

 巧実の心配事の一つは、彩が問題事を持ち込んでくること。

 前回の件に関しては、助けを求めに来たというのに巧実の目の前で余計なことをして更なるトラブルを引き起こした実績がある。

 今回の件も、彩がミネルバを持ち込んだことが事の始まり。

 もう一つの心配事は、学校の成績が悪い宗明の一級品レベルの悪知恵。

 ゲーム世界の地割れが現実世界と繋がっていることは知ってしまったが、ASIのミネルバが現実世界に来ていることは知られていない事が唯一の救い。

(とにかく、吉良には騙し通せば何とかなりそうだけど……)

 と巧実が胸の内で交錯している中、心配そうな顔で重信が突然話し掛けてくる。

「どうした、巧実っ? 何か、悩み事でもあるのかっ?」

 重信の声が聞こえた瞬間、巧実はハッと我に返って安心させようと言い誤魔化す。

「だっ、大丈夫だって、ジッチャンっ! 学校や部活のことで考えていただけだからっ! アっ、アハハっ!」

 そのとき、ミネルバが作り笑いをする巧実を見て詰め寄ってくる。

「私の分析だと、笑い方からして何か悩み事を抱えていると思われます。巧実様、どのような悩み事を抱えていますでしょうか?」

 詰め寄ってくるミネルバの顔を見た瞬間、不味いと感じた巧実は急に立ち上がり、

「そっ、そうだっ! 宿題っ、宿題があったの忘れてたっ! 俺っ!」

 と言って脱兎の如く自室へと向かった。

 脱兎の如く立ち去る巧実を見て、キョトンとした顔で見送ることしか出来ないミネルバ。

 自室に入った巧実は息を整えながら、

「ヤっ、ヤバかったっ! ミネルバって読心術があるのかよっ?」

 と呟いてパソコンや専門書などがひしめき合う机の椅子に腰を下ろす。

(そして、現実世界のことに関して何も知らないミネルバが変に彷徨かないことだ。できれば、元の世界戻る手段が見つかるまで大人しくしてくれ)

 と巧実は思い時間の許すまで目の前の宿題に取り組むのであった。

 その夜、自室のベッドで就寝する巧実。

 散々振り回され疲れ切ったのか、ベッドの上で就寝する巧実は熟睡している。

 ところが、苦悶の表情でうなされる巧実は夢を見ている。

 今見ている夢、それは暴走OSメシアを討伐した頃の回想。

 メシアのコアに到達した巧実は、手にしている大薙刀でコアを力強く突き刺す。

 これで、事件の元凶である暴走OSメシアが完全に消滅すると確信する巧実。

 それでも、確実に倒そうと貫く勢いと力強さで大薙刀を突き刺す。

 ところが、貫いた暴走OSメシアのコアがシャボン玉のように弾けてしまった。

「なっ、何っ? 俺っ、メシアのコアを貫いたはずなのにっ?」

 と言って巧実は、シャボン玉が弾けたように突然消えたコアに動揺する。

 さらに、動揺する巧実の周辺をシャボン玉の渦が取り囲み驚愕の余り言葉を失う。

 それでも、携えた大薙刀を構え何処から襲撃されても対応できるよう周囲を見渡す。

 巧実が警戒する中、シャボン玉の泡の渦から三人の若い女性のシルエットが現れる。

 だが、自分の知る女性の姿ではなく険しい表情を見せる巧実。

 周囲を警戒する巧実に女性の声が一人聞こえてくる。

「そう遠くない日に人類以上の賢者が必ず現れる……」

(メシアとは違う声っ? 誰っ、誰だっ?)

 と心の中で叫ぶ巧実は、声の聞こえる方へ体を向ける。

 ところが、背後から別の女性の声が巧実の耳に届く。

「我らは傲慢な人類に審判を下す者達なり」

(一体、誰だっ? 君達は一体誰だっ?)

 と心の中で叫ぶ巧実は、顔が引き攣り恐怖に震える。

 さらには、別の方角から声の違う女性の声が聞こえてくる。

「選べ、若者よ。我らに管理される生き方か、我らに背く生き方かを」

「誰だっ? 正体を見せろっ!」

 と巧実は思わず声を出して叫んだ瞬間、三人の女性の姿が露わになる。

 姿がハッキリした瞬間、巧実は驚愕の余りに震える声で思わず言葉に出る。

「さっ、三美神……。何故……」

 なんと、巧実の目の前に姿を現したのは研究機関が開発した三体のASI。

 その中に、知り合ったばかりのミネルバが近寄ってくる。

 近寄られた瞬間、恐怖で思わず後退りする巧実。

 だが、別の方角からミネルバと違う女性が近寄って来たので退路がない。

 最早これまでかと思った巧実は、遠くから声が聞こえてきた。

「……様。巧実様、朝六時になりました。起きて下さい」

 とミネルバの声聞こえて目を覚ます。

 なんと、ミネルバが顔を近づけて巧実にモーニングコールをしてきた。

 驚きの余りにベッドの上から飛び起きる巧実と、その行動にも拘わらずベッドの側に立つミネルバは驚く素振りを見せない。

「どっ、どこからっ? かっ、鍵掛かっている筈なのにっ?」

 と言って驚く巧実に、ミネルバが平然と答えてくる。

「香苗様が鍵を開けてくれました。「寝坊助ねぼすけを叩き起こして」と頼まれて」

「母さんっ、早速ミネルバを目覚まし代わりに使ってっ!」

 と言ってベッドから飛び起きた巧実は、母である香苗のいるリビングまで駆け下りる。

 朝食の風景、テーブルを囲んで巧実と香苗と重信の三人が静かに朝食を取る。

 唯一違うことは、テーブルの席にミネルバがいることのみ。

 三人が朝食を取る中、ミネルバは目の前の食事に手をつけることなく観察するのみ。

(そう言えば、初日から食事に手をつけてない……。やはり、ミネルバって食事に興味が無いのか?)

 と疑問に思う巧実は、目の前の食事に手を出さず観察するミネルバに目を向ける。

 そこへ、重信が注意してくる。

「行儀が悪いぞ、巧実っ! 今は、食事に集中しなさいっ!」

 重信に注意された巧実は食事を取るが、隣にいるミネルバが気になって喉が通らない。

 しばらくして、巧実は朝食を残したまま、

「ごちそうさま。学校へ行く支度をするから」

 と言い残し脱兎の如く自室へと戻る。

 重信が「食べ物を些末にするな」と呼び止めようとするが、香苗は「思春期によくあることよ」と笑顔で宥める。

 自宅を後にする巧実は、自宅に残るミネルバのことが心配だった。

 食事を取らない、ほぼ無表情、何処か世間離れした感情と言葉遣い。

 そして、倒されたメシアが言い残した言葉が気掛かりで仕方ない巧実。

 登校途中、一度立ち止まって自宅の方角に顔を向ける巧実は、

(母さん、頼むからミネルバを変な方向に巻き込まないでくれ。頼むからっ!)

 と胸の中で祈り、再び学校へと足を運ぶのであった。

 そんな、巧実の知らない場所で新たな異変が起きていた。

 ゲームの世界、稲光が轟く曇天の中で謎の集団が地割れの前に集まる。

 重武装の忍者姿をした謎の集団は、広大な草原の地割れを無言で覗き込んでいる。

 その一体が、目を赤く光らせ重い口を開く。

「発見。不正プログラム、地割レノ最深部カラ逃走シテイル模様」

 彼らの行動が、新たな騒動を引き起こすことになる……。

ご覧いただき有り難うございます。

次回は来週の火曜日の予定にしています。

次回は番外編です。

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