5-8 託した武器は
前回の続きになります。
現場検証中にトラブルを引き起こしたクラスメイトに尋問から始まる回となります。
「……ったく、おめーが犯人かっ! 何で、地割れをゴミ箱にっ! 白状しろ、吉良っ!」
と言って怒る巧実は、肩を落とす宗明に容赦なく説明を求める。
鬼の形相である巧実を見た瞬間、恐怖で額から冷や汗がにじみ出て唇を震わせる宗明。
そこへ、巧実を追跡した紬久美達四人が駆けつけてきた。
「たっ、巧実君っ? どうしたのっ? そんな怖い顔してっ?」
と紬久美が困惑した表情を見せると、鬼の形相の巧実に説明を求めてくる。
「巧実っち、何が何だか分からないから教えてよっ!」
と言う早希は、困惑した表情で巧実に説明を求める。
「本多さんっ、部員の一人として進言しますっ! ここは、冷静になって吉良さんの言い分を聞くべきですよっ!」
と不安そうな表情の未琴は、怒りで我を忘れたと思ったのか巧実を必死に宥める。
「タク兄っ、怖い顔したら誰だって絶対に喋らないよっ!」
と彩の必死な説得が耳に届いたのか、怒りを静めた巧実は後から来た紬久美達四人に分かりやすく説明した。
宗明が地割れをゴミ箱として利用して不要なブロックやアイテムの類いを処分したこと、何らかの理由で宗明が主武装を地割れの中に落としてしまったこと。
そして、現実世界と繋がっている地割れについて宗明が何か知っていると思った巧実は問い詰めている。
「そこへ、紬久美さんやみんなが後からやって来た」
と巧実が説明した瞬間、宗明のいる方へ振り向いた紬久美と早希と彩の三人は笑顔の中に怒りが込み上げてくる。
「なるほど、巧実君がご立腹なのも納得だわ。もしかしたら、元凶は宗明君の可能性が」
「クズ明、怒ってないから説明して。あーし、変なことに巻き込まれたから」
「先輩、ボク大変な目に遭ったよ。地割れに何でもかんでも捨てちゃうから」
と紬久美と早希と彩の三人がそれぞれ言いながら詰め寄り、宗明はタジタジで後ずさりしながら恐怖に逃れるチャンスを伺おうとする。
だが、宗明の周囲を巧実達が取り囲み逃げる隙が全くない。
そんな中、未琴だけは終始冷静で提案を持ち掛ける。
「それより、吉良さんの言い分を聞くのが最優先ではないでしょうか? もしかしたら、吉良さんが変なことをしなかった可能性だってあります」
未琴の進言を聞いた瞬間、我を取り戻したのか宗明を事情聴取すべく巧実や紬久美達四人が取り囲む。
詰め寄られる宗明は、取り囲む巧実や紬久美達四人に正直に話すことにした。
「確かに、不要なブロックの類いを捨てたのも大ハンマーを地割れに落としたのも間違いなく僕だっ! でも、地割れの底が現実世界と繋がっているなんて全然知らないっ!」
と主張する宗明だが、疑い目でみる巧実や紬久美達四人の視線が肌を刺す。
「吉良に聞くが、岩盤を破壊する裏技を知っているか?」
と巧実が問い掛けたとき、宗明は壊れるくらい首を何度も横を振り必死に主張する。
「ウワサで聞いたことがあるけど、その方法なんて全然知らないっ! それに、ゲームセンス皆無の僕に裏技を知っても出来るはずないってっ!」
その一言を聞いて瞬間、何故か巧実の脳裏に疑問が浮上する。
「確かに、このバカに裏技が出来るなんて天と地が逆さまになっても絶対あり得ないな」
と言って首を傾げる巧実に、紬久美達四人が裏技について気になり説明を求める。
「裏技っ? 巧実君、それって何っ?」
「うん、このゲームの設定では真っ黒な岩盤から下を掘り起こすのは不可能になっている。ウワサで、『岩盤を破壊することが出来る裏技がある』とよく聞いたことがあって」
「たっ、巧実っち、その裏技って試した事ってあるのっ?」
「実際、聞いたウワサを片っ端から試したけど……。どれもこれも全部ガセで、真っ黒な岩盤はビクともしなかった……。だから、吉良のバカに出来るはずがない」
「なるほど、本多さんの言い分も何となく理解が出来ます。でも、本題は吉良さんが地割れをゴミ箱に利用したのか。そして、武器を地割れに落としたのは何故かですよ」
と言って本題を戻そうとする未琴に、チャンスと思った宗明は忍び足で逃げようとする。
ところが、彩が逃げようとする宗明の腕を強く握って捕らえる。
「吉良先輩っ、尋問最中に逃げようとしないで下さいよっ! ボク達っ、先輩から聞きたいことがイッパイあるのにっ!」
捕らえる彩を見た瞬間、巧実が加勢するように宗明を取り押さえる。
「ナイスっ、彩が取り押さえてなかったら現実に戻って尋問するところだったぜ」
と言って巧実が褒めるが、宗明を取り押さえるのに必死な彩。
「吉良さん、諦めて下さい。ログアウトしても、部の仲間に連絡しました」
と未琴の一言で、捕物帖で観念した悪党のようにガックリと膝を落とす拘束された宗明。
そこへ、宗明の膝元にスマホが突如出現。
画面には、「主武装が消失しました。武器屋で新たな主武装を選択して下さい」と表示される。
表示された画面が目に入った瞬間、相当ショックを受け宗明は真っ白となり抵抗する気力を完全に失う。
「吉良先輩、愛用の武器失ったのが相当ショックみたい」
と言って、灰と化した宗明に同情する彩。
ショックが強かったのか、巧実達の尋問に素直に答える宗明。
「何とかして、本多や立花みたいに強くなりたくて採掘に夢中になっていたとき……」
……不要なブロックやアイテムの類いが原因で所持できる数に限度が迫った時、目の前に地割れを発見して「ゴミ箱に使える」と思って不要なアイテムの類いをポイ捨てに。
そのとき、黒装束の連中が突然出現して襲い掛かってきたから武器を取り出したら、手を滑らせて大ハンマーを地割れに落としてしまった。
これまでかと思ったら、黒装束の一人が近づいてきて「不正プログラムニ非ズ《アラズ》」と片言の言葉で喋ってきた途端、黒装束の連中が何処かへと消えていった……。
「……僕が呆然と立っているところに、本多や仲間と合流して今に至り……」
と証言する宗明を見た瞬間、不思議と冷静さを取り戻す巧実と同情する紬久美達四人。
「クズ明、その黒装束の連中ってどんな姿っ? もしかして、この前みたいなヤツっ?」
と早希が気になって問い掛けたら、宗明は首を横に振って素直に答える。
「まるで、重武装の忍者みたいだった……」
重武装の忍者、片言で喋る、新たに出現した謎の集団が何か関わっている。
そんな中、武器を失った宗明を心配したのか、
「取り敢えず、港町へ戻って武器屋を訪れるか」
と巧実が提案したので、誰もが賛成し前回の事件でお世話になった町に戻ることになった。
町に戻ったのは、ゲームの世界で日が沈み始め夕方を告げようとしていた頃。
現実世界では、まだ明るく夕方の五時か六時である。
武器屋を訪れた巧実達一行、宗明の新たな主武装を選ぶのが目的である。
武器屋のカウンターに立つ宗明は、目の前に映し出される様々の主武装に心躍らせる。
そして、宗明が自分の新たな主武装を選択しようと手を伸ばす。
ところが、何を考えたのか巧実が宗明の肩を掴んで強引に引き離す。
「わりぃ、俺が選ぶから。みんな、吉良を取り押さえてくれ」
と巧実が言った瞬間、紬久美達四人が宗明を取り囲む。
なんとかして宗明は包囲網から脱しようと隙を探そうとするが、紬久美達四人の鉄壁な包囲網に身動きが取れない状態。
「何考えているっ、本多っ! 武器、勝手に決めるなーっ!」
と宗明が訴えるが、巧実の耳には届かず淡々と武器を選択する。
そのとき、彩と未琴の隙間から脱出した宗明は巧実のいるカウンターまで急ぐ。
「終わったぞ、武器セレクト」
と巧実の発言を聞いた瞬間、宗明はガックリと肩を落とす。
更に、気になってアイコンから主武装を出現させるとショックの余り大声を出す宗明。
「なっ、何じゃこりゃーっ! これって、大盾じゃねーかっ! 武器じゃない、防具じゃねーかっ!」
「吉良の選んだキャラに合わせて決めた。機械人って、本来は護衛役向きだから大盾と相性がいいはずと思って」
と言って巧実は、ドライな表情でショックを受ける宗明を見る。
なんと、巧実が宗明の選んだ新たな主武装は足下から体全体が隠れるくらいの大盾。
「本来、盾は防具扱い。だが、このゲームでは大盾は防御以外に近接武器として使える。その上、状況に合わせて副武装を変更して盾として戦えるメリットがあるからメイスをオマケにつけた」
と説明する巧実を聞いた未琴は、狙いに気づいて説明を付け加える。
「なるほど、護衛役がいればアーチャーなどの遠距離担当の無防備をカバー出来るだけじゃなく、突破口を切り開く切り込み隊長的な役割も出来る訳ですね」
「その通りだ。吉良達ゲーム同好会の連中を見ていたら、重攻撃の特攻ばかりで肝心の防御が疎かだった。吉良には悪いが、パーティーの現状を見て武器を選ばせた貰った」
と説明する巧実は、ガックリと肩を落とす宗明の肩をポンッと軽く叩く。
巧実と未琴の説明を聞いてキャッキャと喜ぶ女子達に対して、納得していないのかガックリと肩を落とし呆然と立ち尽くす宗明。
さらに、巧実が追い打ちを掛けるように宗明の肩をポンッと叩き励ましの言葉を贈る。
「迷惑掛けた罰だ。護衛役、光栄だと思って頑張って貰うぞ」
巧実達に問い詰められた挙げ句に勝手に決められた新たな武器を手に取った宗明は、ショックの呆然と立ち尽くし訴える気力を失い真っ白となっていた。
それでも、巧実は何処か浮かない表情を見せる。
(一体、誰が何の目的で破壊不能な黒い岩盤を破壊したのか? それに、ミネルバや吉良が見た黒装束の連中は何者っ?)
と巧実は、紬久美や仲間達の様子に見ながら疑問に思う。
果たして、今回の事件の黒幕は誰なのか。
そして、前回の事件とは違う黒装束の連中は何者なのか……。
ご覧いただき有り難うございます。
次回は来週の火曜日の予定です。




