5-7 現場検証へ
前回の続きになります。
現場検証のために迷子となった次世代AIを発見した場所へやって来た主人公達の回になります・
「やはり、現場に行って確認した方が良さそうだな」
と巧実が言い出すと、紬久美達三人が頷いて同意する。
そんな中、専門的用語で頭がパニックになった彩が困惑した表情で話し掛けてくる。
「タク兄っ、現場って何処へっ?」
「決まっているだろう。彩がミネルバを拾った場所だよ」
と言って巧実は、困惑して質問する彩に即答で返す。
ようやく理解できたのか、機嫌を直した彩は元気を取り戻す。
そこへ、巧実の腹の虫が店内に響き渡り居合わせた誰もがクスクスと笑い声が包み込み重苦しい雰囲気が一変する。
「しょ……、しょうがねーだろう……。晩飯まだだから、こっちは……」
と言って顔を赤くする巧実に、女子達の笑い声が店内に響き渡る。
ところが、彩だけでなく紬久美や早希や未琴も腹の虫が店内に響き渡り急に顔が赤くなり黙り込んでしまう。
「あらあらっ、そこの女子四人も腹ペコさんね」
と言って香苗は、大人の余裕がある笑顔を見せる。
チャンスと思った千尋は、速攻で店の出入口に向かい別れの言葉を言い残す。
「店長っ、私これでっ! また後日ねっ!」
千尋が立ち去った後、残されたのは腹ペコの巧実と女子高生四人、表情を変えないASIのミネルバ。
そして、カウンター越しには香苗がスマホで電話を掛ける。
「今日は、出前取るわね。巧実、何が食べたいっ?」
と香苗が話し掛けてくると、空腹に耐えかねた巧実は注文してくる。
「カツ丼……。今日は、カツ丼の気分……」
すると、彩だけでなく紬久美と早希と未琴も巧実と同じ物を香苗に注文してくる。
「おいおいっ、彩は隣近所の仲があるけど……。なんで、会長達までっ?」
と言って不満げな顔をする巧実だが、気にする素振りを見せないどころか生意気な態度でカウンター越しにいる香苗に頼み込む紬久美。
「決まっているでしょ、腹ごしらえっ! お母さん、ご相伴に上がりますっ!」
「しょうがないわね。でも、お代は払って貰いますよ」
と言って大人な笑顔の香苗に、一本取られた気分の女子高生達。
その後、巧実の家である一階の店舗で晩ご飯。
女子達のキャッキャした騒々しい食事風景、唯一の男子である巧実だけは自宅なのに世界観が違うと感じたのか気まずい気分で大人しく食事をする。
だが、気まずいと感じたのか食事も喉に通らない巧実。
そんな中、ミネルバだけは目の前のカツ丼に観察するのみで全く手を出さない。
香苗が笑顔で何度も勧めてくるが、結局は手を出すことなく食事を終えるミネルバ。
その後、彩が確保したミネルバは預かる形で巧実の住む家に居候することが決まった。
当然、香苗は義父である重信にも報告することは後の話。
翌日、学校帰りの巧実は彩がミネルバを確保した現場へ足を運ぶ。
当然、ミネルバを確保した張本人である彩だけでなく、偶然関わってしまった紬久美と早希と未琴の三人も巧実と同様に足を運ぶ。
案内役の彩が連れてきた場所は隣り合わせの雑居ビルの狭間、段ボールやゴミ箱などが置かれてある薄暗く人気の無い怪しい雰囲気がある。
もしかしたら、不良のたまり場か浮浪者の潜伏先かもしれない。
まさか、自分の近道に怪しい雰囲気のあるスポットがあるなんて気にもしなかった巧実。
「ここだよっ、ここでミネルバを発見したっ! ボクっ!」
と言って彩が指差す場所に目を向けたら、現実世界ではかけ離れた物体が山のように無造作に積まれているのを発見する。
「こっ、これって、土ブロックや石材ブロックなどが沢山……。まさか、ゲームの世界しかないブロックやアイテムが何でこんな場所にっ?」
と言って驚く巧実は、発見した物体を見てゲーム内のブロックとアイテムだと分かる。
目の前の異変を目の当たりにした紬久美は、
「こっ、これって何っ? 何で、ゲームの世界でしかないアイテムなどがっ?」
と言って驚愕の余り目を丸くして体が動かない。
そのとき、頭上を見上げて何かを発見した早希が思わず指差して主張する。
「あれっ、あれ見てっ! 何っ、あの空の裂け目っ?」
気になって空を見上げたら、青空の中に現実では考えられない裂け目を発見する。
そこから、土や石材などのブロックが落下してくる。
「まさか、あの裂け目がゲームの世界と繋がっているのっ?」
と言って驚愕する未琴は、何が起きているのか想像できない。
もちろん、巧実や居合わせた紬久美達も困惑な表情で見ることしか出来ない。
そんな、目の前の不思議な光景を垣間見る中で更なる現象を目の当たりにする。
「えっ、どういう事っ? 積み上がったブロックが砂嵐のように消えてっ?」
と言って彩は、目を擦って自分の目を疑う。
なんと、積み上がったブロックの類いがテレビの砂嵐のようにザラつき数分もしない内に消滅してしまったのだ。
しかも、一斉ではなくランダムに次々と消滅している。
見上げる空に突如出現した謎の裂け目、その裂け目から落下してくるアイテムやブロックなどの類い。
そして、積み上がったブロックの類いが次々と消滅する謎の現象。
一体、何がどうなっているのか全く分からない巧実と紬久美達四人。
唯一、ハッキリと分かることが一つだけある。
「恐らくだが、あの高いところからミネルバが無事なのか想像が出来る」
と驚愕の表情の巧実が言い出すと、勘のいい未琴は何が言いたいのか想像が出来た。
「確かに、あの高いところから落下すれば無事では済まないわっ! 下手すれば、落下によって命を失う可能性だっておかしくないわよっ!」
と未琴が言った瞬間、紬久美や早希や彩もハッと気づき納得する。
「ミネルバが落下した際、ブロックの類いの中に衝撃を吸収する何かがあったから無事で済んだ。けど、強い衝撃を受けたミネルバは意識を失った」
と紬久美が言えば、続けて早希も想像できる範囲内で言い出す。
「ブロックが次々と消滅したおかげで、意識を失ったミネルバが安全に地上に降りた」
「そして、部活終わりのボクが急いで帰宅途中でミネルバを発見した」
と彩が言えば、その後を振り返って巧実が締める。
「その後、彩が意識を取り戻したばかりのミネルバを連れて俺の家にやって来た」
だが、巧実だけでなく居合わせた誰もが解決していない謎が残っている。
それは、上空に出現した裂け目がゲームの世界と繋がっているのは何故か。
そして、誰が裂け目を作ったのかなどの多くの謎が残っている。
巧実達が悩む中、また上空から何かが猛スピードで落下してきた。
落下の衝撃音が凄まじく、衝突事故でも起きたのではと疑うレベルで土煙が立ち上がる。
勢いがある土煙の風圧に、危険を感じた巧実達は建物を背中合わせに身を隠す。
数十秒後で土煙が収まると、巧実が先陣を切って様子を伺うように現場を覗く。
「こっ、これって、吉良の大ハンマーっ? なんで、現実世界にこんなのがっ?」
と言って驚く巧実の声を聞いて瞬間、紬久美と早希と未琴と彩の四人が落下現場へ恐る恐る姿を現す。
立ち込める土煙の中から現れたのは、宗明が主武装にしている巨大なハンマー。
あり得ない落下物に驚く中、異変を察知した巧実はカバンからゲーム機を取り出した。
ゲーム機を起動すると、プレイ中の宗明を探すために愛機のゴーレムであるタダカツを召喚した。
「あのヤローっ、見つけたら説教だーっ!」
と怒りを露わにする巧実は、タダカツに乗り込み猛スピードで前進する。
先日の先頭でボロボロのゴーレムが傷一つ無くなっている様子からして、巧実が合間を縫って完全に修復したようだ。
「こーなったら、あーし達もアクセスするよっ!」
と言ってカバンからゲーム機を取り出す早希を見て、他の三人もゲーム機を取り出しアクセス開始。
アクセス後、各々の召喚獣と巨大ゴーレムに搭乗して巧実の操るタダカツを追跡。
しばらくして、機械人の宗明が棒立ちしている姿を発見した巧実はタダカツから降りる。
「ほっ、本多……。たっ、助けてくれーっ!」
と泣き言の宗明だが、怒りを露わにした巧実は険しい目付きで周囲を見渡す。
何一つ無い広大な草原、宗明の背後にある巨大な地割れ。
のぞき込むと、微かに見えるアスファルトの路面。
点と線と繋がった瞬間、巧実はゆっくり顔を宗明の顔に目を合わせた。
ただ事ではないと察した宗明が、恐怖で顔が引き攣り目の焦点が合わなくなる。
「……ったく、おめーが犯人かっ! 何で、地割れをゴミ箱にっ! 白状しろ、吉良っ!」
と言って怒る巧実は、肩を落とす宗明に容赦なく説明を求めるのであった。
ご覧いただき有り難うございます。
次回は今週の土曜日の予定です




