↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/16

【断章】憑きもの

サホリは毎朝六時に目覚める。


朝食を食べ、歯を磨き、顔を洗う。

その後は日課である予習を欠かさない。


どこかの誰かとは、大違いである。


いつものルーティンを終え、鏡の前で髪を整えていると、冷たくも妖艶な視線を感じる。


「……」


サホリは、鏡越しに背後を見る。


――そこには。


赤い着物。


艶やかな黒髪。


豪華な簪。


「ひっ……!」


サホリはヘアブラシを落とし、肩がびくりと跳ねたまま、硬直する。


「そんなに驚くとは、不躾でありんすね」


「……あの……おはようございます」


「いつまでも怯えておるのでありんせん。わっちはおぬしをとって喰ったりはせん」


「あの……花魁さん、どうしてわたしに憑いてるんですか?」


「おぬし、わっちが怖いでありんすか?」


「……怖いです」


「正直な娘でありんすな。嫌いでありんせん」


そう言うと、花魁はまた闇に溶けるように、姿を消す。


……びっくりしたぁ。なんだったんだろ。


サホリは制服に着替え、カバンを手に取ると学校へと向かう――。


歩道に伸びた自分の影を見つめながら、信号が変わるのを待つ。


でも、どうして、わたしにも花魁さんが視えるんだろう。保健室で視えた金色の瞳。あれはなんだったんだろう。


交差点の向こう側に見える、吸い込まれそうな赤色をじっと見つめる。


――その時。


サホリは後ろから手を強く引っ張られる。


突然の「プーッ、プーッ」という低い怒号のようなクラクションで、現実に引き戻される。


「早まるなど、無粋なことはお辞めなんし」


猛スピードで巨大な車体が、目の前を掠めていった。


「花魁さんもしかして、助けてくれたの?」


「勘違いするでありんせん。おぬしの身に何かあってはわっちが困りんす」


「……ありがとうございます。あの……なんて呼んだらいいですか?」


「そんな堅苦しい顔をして、何を訊くかと思えば――好きなように呼びなさんせ。ただし、わっちが気に入る名でなくては返事はしんせんよ」


「えっと……じゃあ」


「花魁ちゃん」


「…………」


「……悪くないでありんす」


信号が青に変わる。


交差点を渡るサホリの足取りは、少しだけ弾んでいた――

【作者からのお願い】ここまで読んでいただきありがとうございます!もし「続きが気になる」「面白い」と思ってくださったら、ページ下部にある【ブックマークに追加】【総合評価の☆(1〜5個)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の励みになります!よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。