屋敷の裏手
「じゃあ、動作確認に行こう」
せっかくなら発動しているところが見たいので、プリシラは出来上がった布を持って外に出る。
もちろん、精霊達も一緒だ。
「よいしょ、っと」
屋敷の裏手にて、プリシラは布を大きく振り被る。
そのまま勢いよく振り下ろすと、下にあった雪が吸い込まれていった。
「うん、第一段階異常なし」
『『『なーし!』』』
「すぐ次の段階に行きたいけど、さすがにこの量じゃ足りないよね」
『『『じゃあ、僕達が雪を集めてきてあげるー!』』』
そう言うが早いか、精霊達は散開してそこら辺の雪を運んでくる。
なので、プリシラは布の裏面を前方に向ける形で広げた。
風に乗ってどんどんやってくる雪が、そこに吸収されていく。
「ありがとう、精霊さん達。もういいよ」
『はーい!』
『足りなくなったら、言ってねー!』
『まだまだたくさんあるし、いざとなったら雪降らせるしー!』
「うん、助かる」
プリシラはニッコリ笑って布の表面を下に向けると、そのまま地面に置いた。
「さて、上手くいくかな?────造像」
発動条件となる文言を唱え、プリシラはサッと布を持ち上げる。
出来るだけ、真っ直ぐ上に行くように。
「────ちゃんと出来ているね」
動作に合わせて布の表面から現れるヘイゼルの像を見やり、プリシラは頬を緩めた。
────実はこの布、雪を吸収してそれを材料に使用者のイメージした像を立てるという魔道具。
最近、雪遊びにハマっているプリシラが『手作業で雪像作りは大変だから』と作成したものだ。
「う〜ん……サイズ失敗したかも。もっと小さい像を想像すれば、良かった」
つま先立ちになりながら、精一杯布を高く持ち上げるプリシラ。
その視線の先には、首元までしかないヘイゼルの像があった。
あともう少し……あともう少し布を高く持ち上げることが出来れば、ちゃんと顔まで造像出来る筈なのだが。
『大丈夫、僕達が手伝ってあげるからー!』
『こんなときのための私達でしょー!』
『遠慮なく、頼ってよー!』
ニコニコと機嫌良く笑い、精霊達はプリシラのことを持ち上げる。
やり方はそれぞれで、足元の地面を盛り上げて踏み台にしたり風を吹かせて浮かせたり。
おかげで、ちゃんとヘイゼルの顔まで造像出来た。
「精霊さん達、ありがとう。次の像のときも、お願い出来る?」
『『『もっちろーん!』』』
軽く胸を叩いて、頷く精霊達。
プリシラはそんな彼らの手を借りて────結局、家族全員とレーヴェン公爵家に仕える者達の像を作り上げた。
(動作確認だけのつもりだったんだけど、楽しくなってついたくさん作っちゃった)
屋敷の裏手にビッシリ置かれた像を眺め、プリシラは目を細める。
妙な達成感を覚える彼女の前で、精霊達が小首を傾げた。
『ねぇーねぇー、プリシラの像は作らないのー?』
『のー?』
『ぉー?』
「私の像?」
お目目をぱちくりして、プリシラは少し考えるような素振りを見せる。
「作った方が、いいかな?」
『『『絶対、作った方がいい!!!』』』
「けど、作れるかな?自分自身をイメージするのって、結構難しいし」
『『『じゃあ、僕達が作るよー!!!』』』
やる気満々の精霊達は、プリシラから布を受け取り地面に置いた。
全員で端っこを掴みながら、彼らは一斉にこう言う。
『『『せーのっ、造像!!!』』』
一応使用者は一人の想定で作ったのだが、全員で魔道具を発動させた。
一体どうなるんだろう?と興味津々のプリシラを前に、精霊達はゆっくり布を持ち上げていく。
『あっ、靴は僕のイメージだー!』
『足の開き方は私だねー!』
『服装は俺ー!』
『手の位置はアタシー!』
『顔は僕だよー!』
『髪型は私かなー!』
等身大のプリシラ像を見下ろし、精霊達はキャキャッと楽しげに笑う。
(なるほど。複数人でやると、それぞれのイメージが部分的に反映されるのか。面白い)
僅かに目を輝かせ、プリシラは自身の像を色んな角度から観察した。
「ありがとう、精霊さん達」
像を作ってくれたことはもちろん、ユニークな実験データをくれたことに感謝する。
「お返しと言ってはなんだけど、私も精霊さん達の像を作るね」
布を返却してもらい、プリシラは改めて地面に敷いた。
────そこからどんどん造像していき、何とか精霊全員の像を作り上げる。
さすがに数が多いので何回か雪を補充したものの、人型より小型のため思ったより少なく済んだ。
『わあ!プリシラ、ありがとー!』
『すっごく嬉しー!』
『大切にするねー!』
精霊達は各々自分の姿を模した雪像に抱きついたり、顔を覗き込んだりしてはしゃぐ。
その傍で、プリシラは嬉しそうに微笑んだ。
「どういたしまして。喜んでもらえて、良かった」
穏やかな目で精霊達を見つめ、プリシラは布を折り畳む。
────その瞬間、上から声が。
「おーい、プリシラー!そろそろ、中に戻ってこーい!────って、雪の像!?凄いな!」
声のした方に視線を向ければ、レクスの姿が目に入った。




