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◇◆◇◆


 ────豊穣祭から、数ヶ月。

レーヴェン公爵家の尽力のおかげか、領民はすっかり落ち着きを取り戻していた。

なので、プリシラ達は安心して仕事に復帰したり趣味に勤しんだりしている。


「おっと」


 自室にてまた新しい魔道具を制作中のプリシラは、ビリッと破れた布を見下ろした。

言うまでもなく、失敗である。


「効果の負荷に耐えられないのかな?」


『なら、もっと丈夫な布持ってくるー?』


『確か、あっちのダンジョンの最下層でいい布ドロップしたよねー?』


『僕達なら、ちょちょいのちょいで採ってこれるよー!』


 はいはーい!と手を挙げて立候補する精霊達に、プリシラは小さく首を横に振る。


「気持ちは嬉しいけど、調達は大丈夫」


 本日、年末最終日ということでヘイゼルより『勝手に外出しないでちょうだい』と言い渡されている。

しかも、二週間前から口を酸っぱくするように。

ここまで徹底されて、言いつけを破ったとなればヘイゼルの怒髪天をつくのは間違いない。


「(最悪、しばらく制作禁止令を出されるかも。それだけは、絶対に避けないと)手持ちのもので、もう少し頑張ってみる」


 いつもの鞄から新しい布を取り出し、プリシラはハサミを手に取った。

ちなみにこれは普通の裁断用ハサミである。


「このくらいかな」


 目測で布を切り分け、プリシラは余ったものを一旦鞄に収納しようとする。

が、不意に手を止めた。


「あっ、二重構造にすればいいのかな」


 布一枚だと負荷に耐えられないのなら、枚数を増やして分散すればいい。

最終的に縫い合わせて一つにまとめれば、嵩張ることもない。

多少手間は増えるものの、プリシラなら問題ないだろう。


「うん、そうしよう」


『『『しよー、しよー!』』』


 拳を振り上げて、同意する精霊達。

キャハキャハと楽しげに笑う彼らを前に、プリシラは仕舞いかけた布をもう一度テーブルに置いた。

かと思えば、再びハサミで切り分け、使用する分の布を増やす。


「これでよし」


 余った布を今度こそ鞄に仕舞い、プリシラは緑の棒を持った。

これは赤い棒と同じ効果のもの。

ただし、レーザーの威力はかなり抑えてある。

布などの薄いものが対象だと、貫通したり焼け焦げたりするので。


「じゃあ、作業開始!」


『『『かいしー!』』』


 プリシラの周りに集まり、精霊達はじっと手元を見つめる。

そんな中、プリシラは一枚目の布に回路を描いていく。


(負荷の大きい部分は七割、二枚目に回すとして……コントロールに必要な細かい部分を中心に、描き込もう)


 普通は作業開始前に考える分担や量を今決め、プリシラはあっという間に一枚目を描き上げた。

そこからすぐ二枚目に取り掛かり、こちらもあっさり出来上がる。


「さて、次はインク」


 緑の棒をテーブルの上に置き、プリシラは小瓶とハケを持った。

まず小瓶の蓋を空けて、一枚目の布に中身────水のように透明で、蜂蜜みたいにドロッとした液体を垂らしていく。

それを、ハケでしっかり伸ばした。


「魔力を忘れないように、っと」


 インクにゆっくりと魔力を流し、プリシラは布に染み込むのを待つ。

この工程を挟むことによって、布の強度が増す。


「精霊さん達、さっきみたいに余分なインクを取り除いてもらえる?」


『『『はーい!』』』


 待っていましたと言わんばかりに、精霊達は風を巻き起こした。

すると、布に染み込まなかった分のインクが飛ばされて小瓶に戻る。

後ほど、ろ過作業を行って再利用予定だ。


「うん、バッチリ。ありがとう、精霊さん達」


『『『どういたしましてー!』』』


 ニコニコと笑って、お礼の言葉を受け取る精霊達。

次のお手伝いチャンスを窺うように身を乗り出す彼らの前で、プリシラは二枚目の作業に移る。

工程自体は一枚目と変わらないので、スイスイと進み、問題なく終了。


「あとは、魔石を縫い付けて」


 窓ガラスのように平べったいソレを、プリシラは丈夫な糸で固定した。


「二枚の布を縫い合わせれば」


 魔石を内側にする形で縫合し、プリシラは数秒様子を見る。


(良かった、破れてない)


 二枚それぞれの回路と魔石が繋がっても、負荷過多で壊れなかったことを確認し、プリシラはホッとする。


「────完成」


『『『やったねー!』』』


 先程の失敗を知っているからか、精霊達は大喜びする。

その傍で、プリシラも頬を緩めた。


「じゃあ、動作確認に行こう」

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