真相
◇◆◇◆
────豊穣祭から、数日。
例の騎士達トリスタン、フレディ、クリストファーは地下牢に幽閉・尋問。
その主人であるオリヴァー・ハリー・ロックハート公爵と自作自演の男女モリス男爵夫妻は、それぞれ別々の客室にて聞き取りだ。
例の騎士達みたいに厳しく対応しないのは、双方貴族だから。
色々と段階を踏まなければ、ならない。
特にオリヴァーの方はグレイテール帝国を支える大貴族なので。
(焦れったいけど、ここは我慢よ。焦ってことを進めて、後々難癖をつけられても面倒だもの)
ヘイゼルは悶々としながらも、自室で“そのとき”を待つ。
────と、ここでルークが転移魔法を使って姿を現した。
「母上、皇室から正式に許可が降りたよ」
開口一番にそう言い、彼は手に持っていた書類を見せる。
実は豊穣祭のあと、直ぐに転移魔法で皇城へ向かい、カルムに事情説明と助力をお願いしていたルーク。
無事に役目を果たしたようだ。
「ありがとう、ルーク。これでやっと、ロックハート公爵とモリス男爵夫妻を尋問出来るわ」
調査を許可する旨の書類を受け取り、ヘイゼルはゆるりと口角を上げる。
『早速ウチの者達に指示を出さなくては』と思案する彼女を前に、ルークがカチャリと眼鏡を押し上げた。
「屋敷の捜索はさすがに皇室でやった方がいいってなったから任せたけど、良かった?」
「ええ(私達が直接調査して証拠を見つけても、捏造しただのなんだの言われるでしょうから)」
『むしろ、助かった』と思いつつ、ヘイゼルは椅子から立ち上がる。
「さあ、徹底的に調べ上げて相手に鉄槌を下すわよ」
────その宣言通りヘイゼルは厳しく追求し、皇室の助力もあって真相と証拠を掴んだ。
「相手の狙いはレーヴェン公爵家の弱体化、ね」
オリヴァーに関する調書を眺め、ヘイゼルは目を細める。
椅子の肘掛けに寄り掛かる彼女の前で、レーヴェン公爵家の騎士ワイアットが口を開いた。
「グレイテール帝国唯一の錬金術師であるプリシラお嬢様に加え、レクスお坊ちゃまとルークお坊ちゃまも青騎士団団長・宮廷魔導師団師団長などの要職に就かれていますから『レーヴェン公爵家の力があまりにも強すぎる』と警戒していたようです」
「はぁ……」
これでもかというほど深い溜め息を零し、ヘイゼルは目頭を押さえる。
ルークも、同じように呆れた素振りを見せた。
ちなみにプリシラ・ライアン・レクスもこの場に同席しているが、『へぇー』くらいの温度感だ。
「プリシラは仕方ないにしても、レクスとルークの役職は奪おうと思えば奪えるんだから優秀な若手を育てるなり何なり方法はいくらでもあったでしょう」
「そこで『相手を蹴落とそう』という考えになるあたり、浅ましいね」
皇室関連の要職は出自も多少加味するものの、ほぼほぼ実力で決まる。
身分だけの使えない人材が就くと、万が一のとき困るから。
実際、カルムはレクスとルークの登用で一切忖度・贔屓していない。
なんなら、権力のバランスを考えて『昇格は見送っては?』という意見すら出たくらいだが、それこそ差別になるため慣例通り進めた。
「よく分からんが、正々堂々と挑まないのは汚いな!」
「団長の座を賭けた決闘でも申し込んでくれれば、良かったのに!」
とりあえず話し合いに参加している感を出すためか、ライアンとレクスは脳筋全開の発言をした。
すると、ヘイゼルとルークが何とも言えない表情を浮かべる。
「正々堂々は分かるけれど」
「団長の座を勝手に賭けたら、ダメでしょ」
負けるとは思っていないものの、念のため釘を刺した。
と同時に、プリシラが言葉を紡ぐ。
「そういえば、今回の件で怪我人は出なかったの?」
演出の準備や発動に集中していて、騒動のことをあまり知らなかったプリシラ。
ソファに座ったまま大人達を見上げる彼女の前で、ヘイゼルは小さく首を縦に振る。
「ええ、相手側を除けば怪我人0よ」
「かなり厳重に警備していたからな!」
レクスは得意げになって顎を逸らし、隣に座るプリシラを見つめた。
どこか期待するような眼差しを前に、精霊達が身を乗り出す。
『褒められ待ちー?』
『褒められ待ちだー』
『なんか、犬みたーい』
「(犬?確かにお兄様はちょっと番犬っぽいかもね)凄い、お兄様。それに、ルークやワイアット卿も」
同じく警備に協力していた二人のことも褒め、プリシラはニッコリと笑う。
その途端、レクスは勢いよくワイアットの方を振り向いた。
「(何でワイアットまで!)」




