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退場

「プリシラ、そろそろ下がるよ」


 ルークは乾杯の挨拶が終わるなり、退場を促した。


「うん、分かった」


「(今のうちにオシャレしたプリシラを目に焼き付けておかなければ!)」


 素直に応じるプリシラと、シスコンを発揮するレクス。

そんな二人を連れて、ルークは会場から出た。


「僕と兄上は警備の騎士達に合流するよ」


「そっか、頑張ってね。私は最後の演出のために屋根の上に登るから」


「待て!それは危険じゃないか!」


 会場から少し離れた廊下で、レクスの大きな声が響く。

彼の脳内では、屋根からすってんころりんと転げ落ちるプリシラが再生されていた。


「「いや、大丈夫だよ(でしょ)」」


 呆気からんと答えるプリシラと、『何言ってんだ、こいつ』みたいな顔のルーク。


「ちゃんと魔道具を装備してから、行くし」


『いざってときは、僕達も居るからねー!』


「大体、散歩気分でダンジョン行くようなやつだよ?屋根の上に登ったくらいで、怪我する訳ないでしょ」


「それは……そうだな」


 ダンジョンに行くのはいつものことなので気にしてなかったものの、よくよく考えてみれば危険度は屋根の上より格段に高い。

レクスは『魔道具や精霊達も一緒みたいだし、大丈夫か』と思案し、肩の力を抜いた。


「ところで、最後の演出ってどんなものなんだ?」


「えっとね、夜空に────」


 これこれこうと説明するプリシラに、レクスは『やっぱり、ウチの妹は天才だな!』と興奮する。

その傍で、ルークは少し考え込むような素振りを見せた。


「夜空に、か。なら、一つ頼んでもいい?」


「何?」


「もし、パーティー会場の明かりが消えたら最後の演出を予定より早く発動させてほしい」


「どうして?」


 至極当然の疑問をぶつけるプリシラに対し、ルークはこう答える。


「混乱を避けるためのカモフラージュ」


「(混乱?パーティーで、何か起きるのかな?う〜ん……出来ればちゃんと予定通りに発動したいけど、ルークがここまで言うなら)分かった。会場の明かりが消えたら発動、ね?」


「ああ、頼んだ」


 マントの留め具を外しつつ、ルークは足早に立ち去る。

その際、レクスの首根っこを引っ掴んで回収することも忘れない。

放っておくと、プリシラにベッタリ張り付いたままになりそうなので。


「さてと、こっちも動き出そっか」


 んー!と軽く伸びをして、プリシラは精霊達と共に自室へ向かった。

そこで魔道具の装着やら着替えやら済ませると、精霊達にお願いして屋根の上に登る。


「パーティーの会場は……あっちだね」


 屋根の上だからかいつもと景色が違って見えて一瞬困惑するものの、プリシラは直ぐに視点を定めた。

なんせ、こんな夜中で明るい場所なんて限られているため。


「よいしょ、っと」


 会場が見える位置で、プリシラは腰を下ろす。

その手に持っている丸い箱を、膝の上に載せながら。


「それにしても、ルークは一体何を考えているんだろう?」


『さあー?気になるなら、探ってこようかー?』


『吐かせてこようかー?』


『ごーもんしようかー?』


 可愛い見た目に反して、大変物騒な精霊達。

プリシラの身内であろうと、遠慮……というか、容赦がない。


「そこまでは、大丈夫。ただちょっと気になっただけだから────あっ」


 精霊達をやんわり制止していたプリシラは、不意に目を見開いた。

かと思えば、手元の丸い箱に視線を移し、カチッと蓋の真ん中を押す。


「────最後の演出、発動」


 真っ暗になった会場を尻目に、プリシラは丸い箱を頭の上まで持ち上げた。

その刹那、丸い箱の至るところからキラキラした粉みたいなものが出てきて空高く舞い上がる。


「うん、完璧」


 美しく彩られた夜空を見上げ、プリシラは満足そうに笑った。

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