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誠意次第

「見ての通り、この事態を切り抜ける目処は立った。これが何を意味するか、分かるか?」


 僅かに身を乗り出し、ルークは容疑者の三人を指さす。


「焦って情報を引き出す必要はなくなった、ということだ。ゆとりが出来た分、お前達のことをじっくり調べられる。ハッキリ言って、ここから先は罪を確定させるだけの作業(・・)に過ぎないよ」


 非常に大きく出るルークは、おもむろに両腕を組んだ。


「物が物だけに、レーヴェン公爵家も皇室も総力を上げて調べることになるからな。運良く証拠が見つからず無罪放免なんて、有り得ないと思った方がいい」


「「「っ……」」」


 声にならない声を上げ、容疑者の三人は竦み上がった。

震える体を抱き締める彼らの前で、ルークはスッと目を細める。


「とはいえ、情報収集は早い方がいい。本件の裏に居る黒幕(・・)が、証拠隠滅を図ったり全ての罪をお前達に被せたりする可能性があるからな」


「「「!」」」


 ハッとしたように息を呑み、容疑者の三人は瞳を揺らした。

自分達がどれだけ危うい立場なのか認識する彼らを前に、ルークはトントンと指先で二の腕を叩く。


「(この反応……やはり、こいつらはただの実行犯で首謀者ではないな。黒幕は他に居る)」


 そう思った根拠はいくつかあるが、一番の決め手は間違いなく魔物の複製具。

あれは通常のルートではまず手に入らないので、かなりの金とコネが要る。

ただの平民である彼らが、手を出せるような代物ではなかった。


「ぃ、命だけはどうか……!!!」


 茶髪の男性が声を張り上げ、へっぴり腰のまま頭を下げる。

他の二人もそれに続き、必死に泣きついた。


「それはお前達の誠意次第(・・・・)だ」


 言外に『情報の質と量で減刑されるか決まる』と述べるルークに、容疑者の三人はゴクリと喉を鳴らす。


「包み隠さず、全てお話します!」


 覚悟を決めたように少し表情を引き締め、茶髪の男性はそう宣言した。

かと思えば、真相を話し始める。


「実は俺達、ある人から『もし、このダンジョンにプリシラ様が来たら、出来るだけダンジョンの深い階層で魔物の複製具を発動させろ』って頼まれていたんです(本当はもう少し浅い階層で発動するつもりだったんだけど、プリシラ様達が魔物を掃討しながら移動したおかげで安全にここまで来れちゃったんだよな)」


「その後、自分達は支給された魔物除けで安全に脱出し、適当に行方をくらませる筈でした(万が一に備えて色々な逃走経路を用意していたけど、その努力も水の泡。なんせ、公爵領どころかダンジョンからも出られなかったんだから)」


「ただ、魔物除けが全然機能しなくて……思えば、偽物を渡されていたんでしょう。僕達もスタンビートに巻き込まれて消えてくれれば、あちらとしては都合がいいだろうし(こんなことなら、自力で魔物除けを入手するべきだったな。疑いの目を向けられるのが怖くて、尻込みしたのが運の尽きか)」


 魔物狩りを生業とする冒険者が魔物除けを購入することなんて滅多にないため、不審に思われるのは必須。

それでも、命に比べればどうということはない。

容疑者の三人は魔物除けとして支給されたブレスレットを眺め、苦い顔をする。

怒りと後悔の念を強める彼らの前で、ルークは首裏に手を回した。


「(まあ、大体予想通りだね)一応聞くけど、その『ある人』の正体は知っている?」


「いいえ、残念ながら……」


「ただ、物凄い金持ちであることは間違いないです」


「前金だけでも、金貨三百枚でしたから」


 都会に一軒家を建てられそうな金額である。

だからこそ、容疑者の三人はつい目が眩んでしまったのだろう。


「そうか」


 特に落胆した様子もなく、相槌を打つルーク。


「(どうせ『ある人』というのも黒幕の使い走りだろうし、そこまで重要では……)」


「「────ルーク、終わったよ(ぞ)!」」


 ちょっと声を張り上げて、円柱や剣を横に振るのはプリシラとレクスだった。

宣言通り魔物の殲滅は完了したようで、周囲にはドロップアイテムしかない。

あと、少し誇らしげな精霊達。


「じゃあ、そろそろ引き上げよう」


「ああ!母上も心配している頃だろうからな!」


「思ったより、時間が掛かっちゃったもんね」


 ルーク・レクス・プリシラの三人は逸る気持ちを抑えながら、帰宅の準備をする。

さすがに結界やドロップアイテムを放置する訳には、いかなかったので。

あと、念のため容疑者の三人を拘束してからレーヴェン公爵家に戻った。

そして、待ち構えていたヘイゼルに諸々の説明や容疑者の三人と魔物の複製具の引き渡しを行う。


「ここから先は私の方で対応するから、貴方達は自分の仕事に専念しなさい」


 黒いオーラを身に纏うヘイゼルよりそう言われ、プリシラ達は大人しく従った。

別に『自分達の手で絶対に解決したい!』という訳ではないし、こういうのはあまり得意じゃないため。

何より、こういうときのヘイゼルは逆らうと恐ろしいのだ。


(とりあえず欲しい材料は手に入ったし、制作に取り掛かろう)


 自室に戻ったプリシラは、鞄の中からドロップアイテム(戦利品)を取り出して前を向いた。

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