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怪しい人間達と魔道具の確保

「────何難しそうな顔しているの?」


 そう言って、プリシラの眉間を軽く小突くのはルークだった。

いつの間にか、戻ってきていたらしい。


「ルーク、おかえり。結界はちゃんと張れた?」


「誰に言っているの?張れたに決まっているでしょ(人の出入りだけ阻害しないように調整するのは、ちょっと面倒だったけど)」


 完全に出入り口を塞いで人の逃げ場もなくしてしまうと、被害が増えるため趣向を凝らしていたルーク。


「で、何をそんなに考え込んでいた訳?」


「あっ、実はね────」


 おもむろに視線を上げ、プリシラは精霊達から聞いたことを全て共有した。

すると、ルークは僅かに眉を顰める。


「なるほど。なら、一先ずその人間達と魔道具の確保だ。実際に接触してみないことには、何も分からないし」


「確かにそうだね────お願い出来る?」


 後半は精霊達に向けて言うプリシラ。

チラリと視線を向けてくる彼女の前で、彼らは


『『『もっちろーん!』』』


 と、大きく頷いた。

かと思えば、ピューンッと飛んで行って直ぐさま戻ってくる。


『『『はい、どーぞ!』』』


 風で包み込んだ人間三人と水晶のようなものを地面に下ろし、精霊達は明るく笑う。

その傍で、ルークは『なんか、既視感のある光景だな』と内心苦笑を漏らした。


「プリシラはアレを調べてくれる?兄上のサポートは僕が引き継ぐから」


 ルークは風魔法で水晶のようなものを浮かせ、プリシラに差し出す。

ただ、完全には渡さなかった。

触れた途端、爆発!なんてことになったら、大変なので。


「いいけど、あの三人の対応は?」


「それも僕がやる」


「大変じゃない?」


「問題ない(一応まだ関係ない第三者の可能性がある以上、脳筋の兄上や過剰なボディガードつきのプリシラに頼む訳にはいかないんだよ)」


 やり過ぎてしまう懸念があり、ルークは『面倒だけど、僕がやるしかない』と思案する。


「じゃあ、頼んだよ」


 さっさと話を切り上げ、ルークは容疑者の三人を再び空中に浮かせた。

そのまま少し離れた場所まで移動する彼を他所に、プリシラも調査に取り掛かる。


(見たところ、爆発などの仕掛けはなさそう。ただ、これ以上のことは中身を確認しないと分からないかな)


 念のため触れずにチェックしていたプリシラは、おもむろに鞄の中へ手を入れる。


「そろそろ、分解しよう」


 鞄から鍛治のときなどで使った手袋やよく切れるナイフを取り出し、装着。

早速、プリシラは水晶に少し穴を開けた。

そこから中を見る彼女の前で、ルークは容疑者の三人を見下ろす。


「単刀直入に聞く。お前達はこの魔物の異常発生について、何か知っているか?」


 緊急事態ということもあり前置きなく問い質すルークに、容疑者の三人は表情を硬くする。

それぞれ顔を見合わせて目配せし合い、緊張した様子を見せた。

ただ、全員へっぴり腰なので少々シュールな絵面だが。

多分、空中浮遊が初めてで上手くバランスを取れないのだろう。


「……な、何も知りません」


 茶髪の男性が三人を代表して、答えた。

が、当然信じられる筈もない。


「(今の()は絶対、何かあるな)本当か?」


 念を押すように問い直し、ルークはふと地上を見やる。

それに合わせて、鋭く大きな雷が落ち、レクスの周りに居た魔物を薙ぎ払った。

これは警告である。真実を隠そうとする彼らへの。


「公爵令息であり、宮廷魔導師団の師団長である僕に虚偽を言えば大きな罪になる。たとえ、貴族や皇族であっても処罰は免れない。それが、平民ともなれば……極刑は確実だろうな」


 淡々とした口調で物騒な言葉を並べつつ、ルークはまた一つ二つと雷を落としていく。

おかげで、容疑者の三人の恐怖や不安は最高潮に達していた。


「それを踏まえた上で、答えろ。これが、最後のチャンスだ」


 自白という名の情状酌量が望めるのは、今だけだと突きつけるルーク。

ゆらゆらと瞳を揺らす容疑者三人の前で、彼は最後のダメ押しとして再び雷を落とした。


「(それにしても、全然魔物が減らないな。むしろ、増えている気が……)」


 討伐自体はちゃんと出来ている。

アイテムがドロップしているから、それは間違いない。


「(魔物の発生が早すぎる(供給過多)、ということか……早いところ、原因を解明・解決しないと体力的に厳しいな)」


 終わりが見えない戦いに、ルークは若干の焦りを覚える。

対するレクスは、最前線で剣を振るっているにも拘わらず凄く活き活きしていた。


「やっと、肩が暖まってきたな!」


「(おい、待て。さっきまでの戦闘は準備運動に過ぎないって、ことか?脳筋の体力はどうなっているんだ……)」


 思わずレクスのことを二度見するルークは、額に手を当てる。

────と、ここでプリシラが大きく手を振ってきた。


「ルーク。この魔道具の効果、分かったよ」


「!」


 勢いよくプリシラの方を振り返り、ルークは『ようやく進展か』と少し期待する。


「詳細は?」


「ダンジョンに異常を与えて、近くの魔物を大量発生させるというもの」


 穴の開いた水晶を眺めてそう述べるプリシラに、ルークは大きく目を見開く。


「はっ?それって、まさか禁制品の────魔物の複製具か!?」

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