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ヘイゼルの心配

 『何故、よりによって父上の意見を参考にした?』と呆れ返るルークを前に、ヘイゼルが目頭を押さえた。


「ライアン、レクスに妙なことを吹き込まないでくれる?ただでさえ、この子は貴方に似て脳筋なんだから」


「(脳筋……最近はちゃんと考えて、動いている筈なんだが……)すまない」


 しっかりヘイゼルの尻に敷かれているライアンは、素直に謝った。

ここで下手に反発すれば、夜まで説教されるのは間違いないからだ。

さすが、経験者は違う。


「とりあえず、プリシラのパートナーはルークで行きましょうか」


「ああ……(これもプリシラのためだ。恨むなら、力不足の自分を恨むべきだな)」


 ズボンを強く握り締めて、レクスはそっと目を伏せた。

苦渋の決断というのがヒシヒシと伝わってくる彼を他所に、ヘイゼルはティーカップを再度持つ。


「プリシラも、それでいいかしら?」


 一応当事者の意思を確認するヘイゼルに、プリシラは少し悩むような動作を見せた。


(全然いいけど、こんなに落ち込んでいるお兄様を見ているとなんだか可哀想になってくるなぁ。とはいえ、ルークも良かれと思ってパートナーを申し込んでくれたんだし、それを台無しにするのは……あっ、そうだ)


 あることを閃き、プリシラは口を開く。


「パートナーって────お兄様とルークの二人にお願いしちゃ、ダメなの?」


「「「!」」」


 パートナーの常識を覆すような提案に、ヘイゼルのみならずライアンやルークも驚いた。

ただ一人、レクスだけは目を輝かせていたが。


「前例がないから、確かなことは言えないけど……まあ、いいんじゃないかしら?他所様のパーティーでやるならともかく主催側だし、文句は言われない筈よ(それに万が一のために、プリシラの警護は厚くしておきたい。この子って、本当狙われやすいから)」


 青騎士団の団長と宮廷魔導師団の師団長である息子達を見つめ、ヘイゼルはスッと目を細める。

その横で、プリシラは少しばかり表情を和らげた。


「なら、それで」


「分かったわ」


 小さく頷き、ヘイゼルは視線を前に戻す。

その際、破顔するレクスを目にしたものの、気にせず紅茶を飲み干した。


「では、各自行動を開始してちょうだい」


 ────その言葉を合図に、準備へ取り掛かってから約二週間。

プリシラはある問題に直面していた。

それは────


「う〜ん……この商会でも品薄なの?」


 ────制作に必要な材料を、上手く集められないこと。


(そこまで希少なものじゃないから大抵どの商会にも多めに置いてある筈なんだけど、おかしいな)


 セバスから上がってきた報告書を一瞥し、プリシラは自室のソファに深く腰掛ける。


「これは結構数が要るのに、困ったなぁ……」


 ソファの背もたれに寄り掛かり、天井を見上げるプリシラ。


「もう自力で採取した方が、早いかも」


『『『じゃあ、久々にお出掛けー?』』』


 少し声を弾ませ、精霊達はプリシラの顔を覗き込んできた。

期待するような眼差しを前に、プリシラはクスリと笑みを漏らす。


「(最近ずっと家に籠りきりだったから、つまらなかったんだろうな)うん、ダンジョン行こっか」


『『『やったー!』』』


 両手を上げて喜び、精霊達はプリシラの周りをクルクルと飛び回る。

直ぐにでも出発しそうな彼らを前に、プリシラは背もたれから身を起こした。


「けど、その前にお母様に声を掛けないと(また叱られるのは、嫌だし)」


 おもむろに席を立ち、プリシラはこの場を後にする。

そして、ヘイゼルの私室に行くと外出したい旨を伝えた。


「なるほど(プリシラのところも、物資の手配が上手くいっていないのね……私やライアンも、思うように行かなくて躓いている)」


 ヘイゼルは執務机に並べられた書類を一瞥し、椅子の肘掛けに寄り掛かる。


「(ここまで来ると、偶然の線は薄い。恐らく────何者かに妨害されている)」


 スルリと自身の顎を撫で、ヘイゼルは内心溜め息を零した。


「(出来ればこんな状況で外に行かせたくはないけど、準備が滞るのも困る……)レクスとルークを同行させるなら、行っても構わないわ」


「お兄様とルークも?どうして?」


 コテリと首を傾げるプリシラに対し、ヘイゼルは肩を竦める。


「万が一のためよ(精霊達が居るから命の心配はないでしょうけど、何かあったときの後始末は彼らじゃ無理だから)」


「ふ〜ん?(久々のダンジョンだから、心配してくれているのかな?)」


 緑の瞳を見つめ返し、プリシラは横髪を耳に掛けた。


「分かった。じゃあ、二人についてきてもらえるようお願いして、行ってくるね」


「ええ、気をつけて」


 少しばかり身を乗り出し、ヘイゼルはプリシラの頬を撫でる。

プリシラはその手に擦り寄り、『うん』と頷くと、ヘイゼルの私室を出た。

そのまま真っ直ぐレクスとルークの元に向かい、彼女は事情を説明。


「全然いいぞ!俺達は避難経路の確認や騎士達の指導くらいしか、やることないからな!」


「いや、凄く暇みたいに言わないでもらえる?僕は兄上と違って、トラップ系の魔法を仕込んだりして忙しいんだけど」


 一も二もなく快諾するレクスと、制止を掛けるルーク。

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