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ルークの罪

「私が諸々の情報収集、ライアンとレクスが材料採取、プリシラが調合を担当することになったわ。一応プロの薬師にも頼んだけど、結局成功したのはプリシラだけだったわね(多分、精霊達に協力してもらったのが良かったんでしょう)」


 プリシラ自身の腕前や手際の良さもそれなりに良かったものの、やはりプロに敵うほどではない。

となると、成功の要因はそれくらいしかなかった。


「とりあえず、貴方に不老不死の薬を飲ませて危機は脱したわ。寿命無限になれば、どれだけ魔力変換されようと問題ないもの」


「ただ、奪われた寿命……若さはどうにもならなくてな」


「簡単に言うと、おじいちゃんの状態でこれから先ずっと生きていかなきゃいけないところだった(・・・)んだ」


「!」


 気絶する前に見た枯れ木のような手を思い返し、ルークは表情を硬くする。


「じゃあ、僕が今こうして元に戻れたのは……」


「ええ、プリシラが手を尽くしたからよ」


 ヘイゼルは迷いのない口調で断言し、ふと扉の方を振り返った。

先程、退室していったプリシラを視線で追い掛けるように。


「あの子ったら、『“時間逆行魔法を使いながら”じゃなければ、大丈夫』と言ってルークの魔法に干渉して……変換された魔力を逆に寿命へ変換して、貴方に戻したのよ。そして、魔法を止めたわ────全ての反動が自分に向くよう、調整した上でね」


「!」


 逆変換と魔法停止の反動を肩代わりしてもらった事実に、ルークは『そんなこと出来るのか!?』と驚くのと同時に悟る。


(多分、これが魔法を使えなくなった原因だろう……それなら、ピンポイントで魔法関係の痛手を負ったのも納得が行く)


「……具体的にどういう症状なんだ」


 掠れた声で問い掛け、ルークはベッドのシーツを握り締めた。


(僕は知らなければ、ならない。向き合わなければ、ならない……プリシラから魔法を奪った現実と己の罪に)


 自然と表情が強ばるルークの前で、ライアンが口を開く。


「魔力が流れている血管みたいなやつ、あっただろ?魔力回路だったか?あれの特に重要なやつ……えっと────」


「────始動回路(・・・・)よ。魔法発動の際に使われるもので、これがないと魔導師生命は絶たれるわ」


 ライアンの知識不足を補い、ヘイゼルはルークの方に向き直った。

敢えてなのか淡々としている彼女を前に、ルークは小さく深呼吸する。


「それを失った、ということか?」


「ああ、修復不可能なほどズタズタになったって聞いている」


 レクスは行き場のない感情を堪えるように、そっと目を伏せた。

『せめて、俺が肩代わり出来たなら……』と自分の無力さを恥じる彼を前に、ルークは小さく瞳を揺らす。


(始動回路に限らず、魔力回路は自然治癒を待つ以外に治療方法がない……ポーションも、治癒魔法も効かない部位だから。これは本当に……とんでもないことをしてしまった)


 詳細を知ったことにより色々と実感し、ルークは口元に手を当てた。

どんな顔をすればいいのか分からない様子の彼に、ライアンは気休めを言う。


「ただ、まあ……全ての魔力回路が、ダメにならなかっただけマシだ。魔道具の発動や魔法薬の調合なんかには、普通の魔力回路からで大丈夫みたいだしな」


(確かにそれは不幸中の幸いかもしれないけど……でも、始動回路の喪失があまりにも致命的すぎる)


 同じ魔導師だからこそ胸が痛み、ルークは口元に添えた手へ力を込める。

この場に暗く重い雰囲気が流れる中、ヘイゼルはパンパンッと手を叩いた。


「最後に、不老不死の薬について軽く触れておくわね」


 当事者なら知っておくべきだろう、とヘイゼルは話を切り出す。


「これはその名の通り、老いることも死ぬこともなくなる薬よ。ただ、成長は不老────所謂、老いに含まれないわ。だから、当分周りにバレることはないと思う」


 不老不死になったことを知られれば、厄介事に巻き込まれるのは必至。

なので、レーヴェン公爵家の中でも真実を把握しているのは極々僅かだった。

大半の者達は、プリシラの魔法技術と専用の特効薬で助かったと認識している。


「不老不死という特性にどうやって付き合っていくかは、おいおい考えましょう」


 今すぐどうこうなる問題でもないため、ヘイゼルはそう結論づけた。


「じゃあ、私達はそろそろ引き上げるわ。安静にしているのよ」


 ルークの件に掛かりきりで仕事が溜まっているため、ヘイゼルはさっさと踵を返す。

その際、この場に居座りそうなライアンとレクスに視線を送って促した。


「(ルークの傍に残りたい気持ちは分かるけど、今はそっとしておいた方がいいわ。一応部屋の前には見張りの騎士を配置してあるし、大丈夫よ)」


 『滅多なことは起きないだろう』と考えつつ、ヘイゼルは退室していく。

ライアンとレクスも、仕方なくそれに続いた。


「……息が、詰まる」


 一人になった空間で、ルークは────やっと泣くことが出来た。

『家族の前で、涙を見せるのは卑怯だから』と我慢していたせいか、次から次へと溢れ出てくる。

おかげで呼吸は苦しいし、視界は歪むし、喉の奥は痛むしで散々だ。

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