確信
「うん、大丈夫!私が絶対、助けるよ!だから、安心して任せて!」
ニッコリ笑って宣言したプリシラに、ルークは小さく瞳を揺らす。
(一番頼りたくないやつに縋るしかないこの状況が、酷く嫌なのに────安心してしまう自分が、居る。プリシラなら、軽くやってのけるだろうって……もう何も心配はいらないって)
間違いなく誰よりもプリシラの才能を把握し、信じ、認めているからこその確信。
ルークは僅かな敗北感を覚えながらも、プリシラにあとのことを託して眠った。
そして、目覚めたときには全部終わっていた。
「治っている」
皺と乾燥で大変なことになっていた手が、子供特有のツルツル・モチモチを取り戻している。
また、体も問題なく動かせるようになっていた。
「ルーク、調子はどう?」
「!」
突然声を掛けられたことに驚き、ルークは私室のベッドの上でビクッと跳ねる。
が、椅子に座って待機しているプリシラを見るなり慌てて口を開いた。
「もう大丈夫────ありがとう」
自然と出た、心からの言葉。
それに対し、プリシラは穏やかに微笑む。
「どういたしまして。じゃあ、私はもう行くね」
「ああ(色々と聞きたいことはあるけど、疲れているだろうし、引き止めるのは悪いか)」
素直に送り出すルークに、プリシラは小さく手を振って退散していく。
すると、入れ替わるようにしてヘイゼル・ライアン・レクスの三人がやってきた。
「おはよう、ルーク。もう平気そうね」
「無事で本当に良かった……!」
「シワシワの姿を見たときは、もうダメなんじゃないかと思ったぞ!」
「心配を掛けて、ごめん」
今回ばかりは全面的にルークが悪いため、きちんと謝罪した。
反省の色を見せる彼の前で、ヘイゼルはそっと目を伏せる。
「謝罪一つじゃ済まないわよ、ルーク」
いつになく厳しい言葉を投げ掛けるヘイゼルに、ライアンとレクスはピクッと反応を示した。
かと思えば、複雑な表情を浮かべる。
(なんだ、その顔は……いや、別に庇ってほしい訳でも母上の言葉が不当だと思っている訳でもないけど、なんか違和感がある)
“らしくない”と感じるライアンとレクスを前に、ルークはヘイゼルの方へ視線を移した。
「何かしら罰を受けないといけないのは、分かっている。でも、それだけじゃなさそうだね」
話の先を促すルークに対し、ヘイゼルは憂いげな表情を見せる。
「ええ、実はね────ルークの治療で、プリシラが魔法を使えない体になったの」
「えっ……?」
足元が崩れるような衝撃を受け、ルークは放心した。
(プリシラが魔法を使えなくなった……?あの魔導師になるべく生まれてきたような天才が……?僕の手で、台無しにしてしまったのか……?)
ショック過ぎて指先が震えるルークは、真っ青になる。
『はっ……はっ……』と呼吸が早くなる彼を前に、ヘイゼルは口元に力を入れた。
「(病み上がりの子供に聞かせるのは酷でしょうけど、隠したところで直ぐにバレる筈。なら、私達の口からハッキリ伝えた方がいいわ)一先ず、治療の過程を説明するわね」
この際だから細部まできちんと話した方がいいだろう、とヘイゼルは言葉を紡ぐ。
「まず、プリシラは生物にも有効な時間逆行魔法を使って貴方の寿命を無理やり引き延ばしたの。ただ、これはあくまで時間稼ぎ。色々制限があって、どんなに魔力を注ぎ込んでも巻き戻せるのは魔法発動から十数秒前までだから。根本的な解決には、ならないわ」
『プリシラの魔力が許す限り、ひたすら十数秒前の状態に戻していた』ということを仄めかし、ヘイゼルは自身の顎を撫でた。
「それで、プリシラは真っ先に魔法を止められないか考えた。けれど、ルークも知っての通り術者以外が発動中の魔法をどうこうするのは難しいわ。無理やり止めれば、術者の方が反動を受けるし。それに、今回プリシラは時間逆行魔法を使用している状態だったから」
使える魔力が少ないという意味でも並行処理が至難の業という意味でも厳しい、と説くヘイゼル。
────と、ここでライアンとレクスが会話に加わる。
嫌な役目をヘイゼル一人に押し付ける訳にはいかない、と思い立ったらしい。
「そのとき、私達も騒ぎを聞きつけて合流した」
「全員で知恵を絞って、ルークの助かる道を模索した結果────不老不死の薬を作ろう、という話になってだな」
心持ちは立派でも脳筋だからか、ライアンとレクスは説明に行き詰まる。
どう言語化するべきか悩む彼らを前に、ルークは目を瞬かせた。
(不老不死の薬だと?そんな物語の中にしか存在しないようなやつ、一体どうやって……)
戸惑いを隠し切れないルークの前で、ヘイゼルはライアンとレクスのことを一瞥する。
「私が諸々の情報収集、ライアンとレクスが材料採取、プリシラが調合を担当することになったわ。一応プロの薬師にも頼んだけど、結局成功したのはプリシラだけだったわね(多分、精霊達に協力してもらったのが良かったんでしょう)」




