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フレンダの逆恨み

「フレンダ。二十六歳。女。平民。元宮廷魔道具師(・・・・・・・)


 赤髪の女性────改め、フレンダは怒りで顔を真っ赤にしながらも、自白剤の効果に逆らえず身元を明かした。

屈辱だと言うように歯を食いしばる彼女の前で、ルークとプリシラは目を見開く。


「(こいつ、皇城務めだったのか!道理で、腕がいい訳だ!)」


「(フレンダって、もしかして最年少の十二歳で宮廷魔道具師になったという人?兵器系の魔道具を多く開発したって、何かの資料に書いてあった気がする)」


 改めてまじまじとフレンダを見つめ、二人は頭を捻る。


「どうして、そんな凄い経歴を持つやつが公爵領に攻撃を?言動を見る限り、プリシラ関係みたいだが……」


「特に心当たりは、ないよ。多分、直接会ったこともない筈」


「────確かに会ったことは、ない……!」


 我慢し切れずといった様子で、フレンダは吠えた。

先程までと違い、荒々しい口調と声色なのは自白剤の効果に関係なく、己の本音をプリシラにぶつけたい思いが少なからずあるからだろう。


「だが、お前は私の晴れ舞台をめちゃくちゃにした!居場所を奪った!プライドをズタズタにした!だから……だから!復讐すると心に決めたんだ!」


 頭が沸騰するような怒りを爆発させ、フレンダは目尻に涙を浮かべる。

依然と変わらず獣みたいな雰囲気の彼女だが、今は少しだけ人間の……幼い子供のような部分が、透けて見えた。


「プリシラ」


「う〜ん……やっぱり、心当たりはないかな」


 問い掛けるようなニュアンスでルークに名前を呼ばれたプリシラは、困ったような表情を見せる。

その瞬間、フレンダは更に表情を険しくして彼女を睨みつけた。


「メラハ王国の悪夢!」


「!」


「あの戦争では、当初私の作った魔道具を兵器として導入する筈だった!でも、お前があんなものを作ったために日の目を浴びることはなかった!」


 ────だから、フレンダは晴れ舞台をめちゃくちゃにされたと憤っている。


「それで一時期、人を死に追いやるような魔道具は野蛮とされた!皆、私のことを陰で嘲笑った!風潮はわりとすぐ元に戻ったが、それでも以前と全く同じ待遇とは言い難く、どこか壁があった!」


 ────なので、フレンダは居場所を奪ったと恨んでいる。


「中でも一番許せないのは、我が師シュタイン・リーフ・フィオーレ子爵を誑かしたことだ!」


 フレンダにとって、シュタインは色んな意味で特別な存在だ。

なんせ、彼女の才能を見抜き、魔道具師への道を示したのは彼なのだから。

もし、シュタインに見出されなければフレンダの人生はただの平民として終わっていただろう。

いくら天才と言えど、それを活かすための知識や経験を積めなければ無価値同然のため。


 また、シュタインはとても面倒見のいい人物でフレンダのことを心から可愛がっていた。

それが、早くに親を亡くした彼女にはかけがえのない温もりだった。

別に引き取ってくれた親戚家族に冷遇されていた訳じゃないが……むしろかなり良くしてくれたが、義務として育てている空気があっていつも微妙な疎外感を覚えていたので。

『フレンダにだけ』『フレンダだからこそ』『フレンダならば』そういう愛情は、なかったように思える。


 なので、シュタインに傾倒していくのはもはや必然だった。


「お前の魔道具を見て、師匠は『素晴らしい』と称賛した!本心から、手放しで、全面的に!その上で────『プリシラ嬢の弟子になりたい』と言ったんだ!」


 ────よって、フレンダはプライドをズタズタにされたと憎んでいる。


 プリシラを弟子に取るならまだしも、師として仰ぐなど論外だった。

だって、自分ですらそこまで至らなかったのだから。

いや、決してシュタインの師になりたい訳ではないのだが。

ただ、彼にとって自分はプリシラより下というのが気に食わないだけ。

何より、シュタインが他の誰か……ましてや、年下に教えを仰ぐ姿なんて見たくなかった。


「私には、師匠しか居ないのに……!あの人はそれ以降、プリシラのことばかり……!死ぬ寸前ですら、口にするのはお前の名前だった!」


 シュタインは数年前に亡くなっており、それを機にフレンダは宮廷魔道具師を辞めている。

もうここに居る理由はない、とでも言うように。

それに、プリシラへの復讐を考えると皇城務めのままでは時間が足りなかった。


「お前さえ……お前さえ、居なければ!全て上手くいっていたんだ!私はっ……」


 大きく身を乗り出し、フレンダは勢い余って膝をつく。


「幸せ、だったんだ!」


 感情が昂り過ぎたのか、フレンダはハラリと涙を零した。

どこか苦しそうな表情を浮かべる彼女に、ルークは────既視感を覚える。

まるで、過去の自分(・・・・・)を見ている気がして。


「(……出来れば、あまり思い出したくない記憶なんだけど。でも、だからと言って────忘れていいものでもない)」


 一生背負って行かなければならない現実を見据え、ルークはそっと目を伏せた。

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