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相手の正体

「直に一つ作動する!爆発系の魔道具だから、遠目でも分かる筈だ!それで、私の言葉は真実だと理解出来るだろう!」


 声高らかに言ってのける赤髪の女性に対し、ルークは内心舌打ちする。

プリシラもまた、不満そうだった。


(それって、つまり────周りに少なからず、被害が出るってことだよね。そんなの許容は出来ないかな)


 設置場所にもよるが、最悪死人が出る。それも、無関係な人々から。


「────設置場所を教えてください」


 立ち上がって花のペンダントを外し、プリシラは赤髪の女性の前に姿を現した。

その瞬間、ルークは『おい……!』と咎めるような声を上げ、赤髪の女性は目を吊り上げる。


「やっと姿を現したな、プリシラ!!!」


「ええ。だから、設置場所を教えてください」


「それは拘束を解いて、お前を殺したあとだ!!!」


 要求の半分しか通っていないことを告げ、赤髪の女性は凍りついた手足に視線を向けた。

その傍で、ルークは焦ったような表情を浮かべる。


「ちょっと黙れ!(精霊達をこれ以上刺激するな!)」


 プリシラへの殺人予告など、自殺行為もいいところだ。

現に────


『そろそろ、我慢のげんかーい』


『あいつ、調子乗りすぎー』


『消したーい』


 ────精霊達は殺気立っている。

可愛らしい見た目に反して好戦的な彼らを前に、プリシラは小さく首を横に振った。


(堪えて、精霊さん達。まだ彼女を処す訳には、いかないの)


 ルークの肩越しに赤髪の女性を見つめるプリシラは、ゆっくりと花のペンダントと霧吹きを仕舞う。

その代わりと言ってはなんだが、オシャレな小瓶を取り出した。


「貴方の全ての要求には応えられそうにないので、少しズルをしますね(この人の言葉が正しければ、時間もあまりないし)」


 爆発云々のことを思い浮かべつつ、プリシラはルークの後ろから僅かに身を乗り出す。


「プリシラ、一体何を……香水?」


 ルークは不意にオシャレな小瓶を見て、小首を傾げた。

さすがに付き合いが長いのでただの香水とは思っていないが、見た目だけではどのような代物なのか分からない。

怪訝そうな表情を浮かべる彼の前で、プリシラは香水のプッシュ部分に指を掛けた。


「うん────自白剤入りの、ね」


「ばっ……!それ、非合法の……!」


 自白剤は麻薬にも使われる薬草や薬品を使っているからか副作用が酷く、記憶の混濁・心神喪失・幻覚症状などを引き起こしやすい。

そのため、グレイテール帝国では使用禁止となっている。


「大丈夫。従来のものと違って、副作用はないから」


 さすがは錬金術師とでも言うべきか、しっかり改良してあるらしい。


「(こんな場面でも、優秀さをアピールするのは忘れないのか……!全くもって、忌々しい女……!)」


 赤髪の女性は自白剤入りの香水に恐れ戦く訳でも、副作用なしと聞いて驚く訳でもなくただひたすら毒づいていた。

嫉妬という感情を剥き出しにする中、プリシラは香水の吹き出し口を前方に向ける。


「それに、すぐ成分が分解されるから証拠も残らないよ」


 そう言うが早いか、プリシラは赤髪の女性の顔に香水を吹き掛けた。


「っ……!?」


 赤髪の女性は素早く顔を背けたものの、精霊達の巻き起こした風により否応なく香水を嗅いでしまう。

その途端、彼女は酒に酔うような感覚を覚え、唇を引き結ぶ。

今なら何を訊かれても答えそうだと本能的に悟っているが故の、必死の抵抗だろう。


「残りの魔道具の設置場所を、発動が早い順に教えてください」


 改めて、質問を投げ掛けるプリシラ。

その問い掛けを、赤髪の女性は拒めない。


「あっちの山の頂上。馬車の通る道から、突き出した崖付近に埋めてある。あと、近くの街にも一つ。ギルドに繋がる抜け道のタイル張りのところ。右だけ欠けたタイルの下に、仕込んだ。それから、西門の詰所付近に────」


「まだあるのかよ」


 思わずといった様子でツッコミを入れるのは、ルークだ。

プリシラも同感のようで、小さく頷いた。

かと思えば、彼の背中に隠れて声を潜める。


「精霊さん達、魔道具の回収お願い出来る?出来れば、今から順次向かってほしいんだけど」


 時限式で、しかも一つはもうすぐ発動することを踏まえ、プリシラは精霊達を頼った。

とにかく、人手がほしかったので。


『『『お任せあれー!!!』』』


 先程までの怒りなんて忘れ、プリシラに頼られたという事実だけに心躍らせる精霊達。

相も変わらず単純で、プリシラにのみ甘い。


『じゃあ、僕は山の頂上ー!』


『『『私も行くー!』』』


『俺は近くの街ー!』


『『『僕もー!』』』


『私は西門の詰所付近ねー!』


『『『俺も、それー!』』』


 流れるように……というか、各々の好きなように役割分担し、精霊達は飛び去っていく。

もちろん、プリシラを守るための……また、新たに追加される設置場所に割くための人員を残して。


「(精霊達が動いているなら、魔道具の回収まで気を回さなくて良さそうだ)」


 先程のプリシラの発言を思い返し、ルークは腕を組む。

────と、ここで赤髪の女性が口を噤んだ。


「(残りの魔道具の設置場所は全て吐いたみたいだな。なら、次の質問に移るか)お前の名前や素性は?」


 せっかくだから、と情報収集に務めるルーク。

自白剤の使用にはあまりいい顔をしないが、もう使ってしまったあとなので『どうせなら、利用しよう』と考えたようだ。


「フレンダ。二十六歳。女。平民。元宮廷魔道具師(・・・・・・・)

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