拘束
「そっちがその気なら、無理やり引き摺り出すまでだ!」
諦めるという選択肢は元よりないらしく、赤髪の女性は赤のブレスレット────もっと正確に言うと、攻撃型魔道具に手を掛ける。
その瞬間、派手な爆発が巻き起こった。
「チッ!」
咄嗟に魔法で結界を張るルーク。
「おっと」
『『『あぶなーい!』』』
僅かに目を見開くプリシラと、爆発による熱気や強風を相殺する精霊達。
「そこか!」
爆発の影響を一切受けていない場所を見る赤髪の女性。
ちなみに彼女は白い指輪────防御型魔道具の結界で、無傷である。
「プリシラ・ニーナ・レーヴェン、覚悟!!!」
今度は緑のピアス────別の攻撃型魔道具に触れ、赤髪の女性はしっかり狙いを定めた。
すると、ルークが急降下して間に割って入る。
「やめろ!死にたいのか!(このままじゃ、確実に精霊達が暴走する……!まだ事件の詳細も黒幕の正体も聞けていないのに、あの世へ逝かれては困る!)」
「それはこちらのセリフだ!死にたくなければ、全力で避けろ!」
攻撃をやめる気など毛頭ないようで、赤髪の女性は竜巻のような風に包まれた槍を放つ。
が、ルークの結界で弾かれた。
「ならば、これはどうだ!」
赤髪の女性は次々と魔道具を発動していき、手数で押す。
おかげで、辺りは酷い有り様だ。
「(こいつ、どれだけ魔道具を持っているんだ……!?それに、どれも高性能!協力している魔道具師は相当優秀みたいだな……!)」
絶え間なく続く攻撃をひたすら結界で防ぎつつ、ルークは氷の矢をいくつか放つ。
だが、あちらの白い指輪で全て弾かれた。
現状、どちらも有効打を放てず無傷の状態だ。
「(もう少し威力を上げるか。ただ、誤って息の根を止めないように調整して……それから、周囲の被害もなるべく少なく……)」
趣向を凝らし、ルークは再び氷の矢を放った。
見た目は先程と変わらないものの、込められた魔力は段違いで強度も速度も増している。
「っ……!?破られた……!?」
ガラスのように割れた結界と反動で砕けた白い指輪を見やり、動揺する赤髪の女性。
「嘘……!?私の最高傑作が、こんなにあっさり……!」
「「!」」
プリシラとルークは大きく目を瞬かせ、赤髪の女性を見つめた。
「(『私の最高傑作』ということは、この人が今回の一件に絡んでいる魔道具師?)」
「(何故、そんな人物が前線に出ている……!?普通、他のやつに任せるだろう!黒幕は何を考えて……って、まさか────)」
ポカンとしているプリシラに反して、ルークは一早くその可能性に気づく。
「────魔道具師の単独犯……!?」
黒幕の権力者、国が絡む陰謀などと言った前提が崩れ去っていく。
「(有り得ない話では、ない……!唯一の懸念点は上等な魔石の調達だが、これほどの腕前ならお代くらい余裕で稼げるし、上客とのコネで優先購入も可能だろう!)」
やるかやらないかはさておき、腕のいい魔道具師であれば一人でこの騒ぎを起こせる。
それは紛れもない事実だった。
「(一体、何でこんなことを……いや、そういうのは後回しだ!今は捕縛に専念!)」
急いで気持ちを切り替え、ルークはまたしても氷の矢を生成・発射する。
ソレは風を切るように飛んでいき、赤髪の女性の手足に突き刺さった。
かと思えば、その箇所から皮膚を覆うように氷が広がっていく。
「くっ……!(これでは、魔道具を使えない……!)」
凍りついたせいで身動きが取れず、発動に必要なアクションを起こせない赤髪の女性。
『これでやっと、連れ帰れる』と肩の力を抜くルークの前で、彼女は必死に身を捩る。
「拘束を解け!そして、プリシラに会わせろ!」
「却下」
あちらの要求に応える義理もメリットもないので、ルークはキッパリ断った。
取り付く島もないと言うべき態度の彼に、赤髪の女性はより一層表情を険しくする。
「いいから、言う通りにしろ!そしたら、残りの魔道具の設置場所を教えてやってもいい!」
「残りの?まだ他にもあるのか?」
堪らず聞き返すルークに対し、赤髪の女性は首を縦に振る。
「ああ、当然だ!仕掛けた魔道具が、たった一つだけなんて有り得ないだろう!」
「(それもそうか……)」
「いずれも時限式の魔道具だから、私が何かしなくても勝手に発動する!中には殺傷能力の高いやつもあるけど、このまま放置していいのか!?」
「良くはない。お前の言葉が真実なら、の話だけど」
言外に『ハッタリなんじゃないか?』とカマを掛け、ルークはあちらの反応を窺った。
すると、赤髪の女性は不機嫌そうに眉を顰める。
疑われるなんて、心外なのだろう。
「直に一つ作動する!爆発系の魔道具だから、遠目でも分かる筈だ!それで、私の言葉は真実だと理解出来るだろう!」




